ダンジョンのある現代

戸川 八雲

プロローグ

オークと呼ばれる豚面の魔物達が目をハートマークにして興奮していた。


俺はトンボのような羽を持つ妖精に問いかける


「なぁポン子、なんでこいつら目をハートにして興奮してるんだ?」


「あー、今回のイベントは日本のゲームを模倣しようとかなんとか~」


「それぜったいエロゲーだよね!?」


傍らにいる日本人形のような少女が呟く。


「つまりあいつらは、お兄ちゃんの嫁である私に欲情してると? にぎり、いえ蹴り潰しますね」


股間がヒュンっと縮まった気がしつつ語り掛ける。


「落ち着け姫! 連携を取りながら攻めないと十八禁な目に合うかもだぞ! 後俺はお前の夫ではない」


すぐそうなりますよと呟いている、こわぃ。


落ち着いてパーティメンバーに指示を出す。


コウモリ型の羽を持つ妖精に。


「リルル、まず相手の態勢を崩す状態異常魔法を頼む」


「おうちで研究してたかったなぁ……」


やる気なさげに言うので仕方なく。


「判ったよ、帰ったら俺のスキルをいじらせてやるから、今は仕事しろ!」


「ほんとに? 言質とったからねご主人様! よーし夢魔の力を食らえ~」


しかし相手は特に何も変わらな……いや興奮度を増してブホブホ言っている。


なんだろうか、女性だけでなく俺の尻までやばい気がする。


「リルルお前何の魔法を使った?」


「え? サキュバスの快楽や欲望を増幅して思考を鈍らせる魔法ですけど?」


「ばかかぁぁぁぁ! 睡眠とか鎮静とかねーのかよ!」


「眠っている相手なら夢を操れるし、サキュバスに鎮静系の魔法なんて……あ、チン性系ならあるよ、なんちゃって」


可愛く笑っている、ひっぱたきたい、が、具体的な魔法を指示しなかった俺にも責はある。


そこへドリルとメイドが話かけてくる。


「落ち着いてください一郎君、まずあれを倒してしまいましょうよ」

「お嬢様の言う通りです一郎様、リルル様へのお仕置きは後にしましょう」


え、私お仕置きされちゃうの? とリルルは呟いている。


「確かにそうだな、すまなかった、ポン子は上から攻撃魔法、リルルはそのフォロー!」


「りょうか~い」

「判った」


ポン子とリルルがフヨフヨと高度を上げていく。


「俺が真ん中で突っ込む、姫は右手から、メイドは左手から、突っ込みすぎて囲まれるなよ!」


「頑張って潰すね、お兄ちゃん」

「承知しました一郎様、ですが私の事は純とお呼び下さいと言いましたよね、一郎様には後でメイド流柔術の稽古に付き合って貰います」


メイドの言を聞き流し。


「ドリルはみんなに支援魔法、いくぞ!」


「ドリルとか私の事そんな風に呼んだ事なんて今まで一度も無かったよねぇ!? なんで急に」


叫びつつ桜子は支援魔法をみんなにきっちりとかけていく、見た目は悪役令嬢なのに真面目だよなこいつ。



みんなでちょっとした探索のつもりがどうしてこうなる。



そしてスライムばっかり倒していたボッチの俺が、なんでこんな事になっているのやら……



悩むのはオークを倒してからにするか。



「戦闘開始だ」


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