多重人格者の異世界冒険譚〜異世界転生したが、神のミスで魂が2つある件〜

松茸

第一章 転生

第1話 プロローグ

 


 ゴォォォォォォォォォン!!!!


 突然、ピカッと辺りが光った。



「なんだ、急に雷が降ったぞ!」


「キャァァァァァァ!!」


「救急車、誰か救急車を!」


 雷ってなんだよ、今日の天気予報晴れだぞ。


 あれ?


 俺はいつの間にか倒れていた。


 不思議に思いながら、起き上がろうとするが、起き上がれない。

 どうしてかと思って体を見る。


 俺の体は、服は焼け、皮膚は黒く変色していた。

 自分の状態を理解するとともに、麻痺していた痛覚が戻る。


「……!!!!!! ッ……!!!!!!」


 ギャァァァァァァァァァ!!!!!


 悲鳴になってない悲鳴が心の底から溢れてくる。

 だけど口から出てくるのは、声にすらなってない乾いた音だけだ。

 そしてそれも、周りの雑音に掻き消される。


 カシャ、カシャ、カシャ。


 そして、やがてそれは写真撮影の音に変わった。

 恐らく雷? で体が炭化しているから、

 血や内臓が見えず、リアルに感じないのだろう。


「ヵ……ァ……」


 ふざけるなよ、そう言おうとしたが、声は出てこない。 

 文句を言うことすら、出来なかった。

 

 カシャ、カシャ。



 カメラの音は、止まらない。


 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!

 どうして俺がこんな目に、どうして、どうして、俺が何をやったんだ!!


 思考が堂々巡りする。

 そうしている内に、怒る気力さえなくなり、


「ーーー、ーーーーーー」


「ーーーーー。ーーーーーーー」


 ふざ、けるな。ふざけ、るな。ふざけ―――


 俺は、最後まで苦しみながら、

 未練の中で死んでいった。


   


        ◇



「いやあ、すまんかった、すまんかった」


 俺は、謎の白い空間で老人に謝られていた。


「で、つまり俺はあなた、神様のミスでうっかり雷を落とし間違えて、それで俺が死んだってことですか」


「そうゆうことじゃ」


 そう言って、また軽い態度で謝ってくる。

 俺はさっきまで、苦しみながら死んでいったはずだが、憎しみや怒りが全くわかない。

 不思議だ。


「ああ、それはここで暴れまわったりされると面倒だから、感情の起伏を少なくさせてもらった」


「なるほど、っていうか本来は誰に雷当てるつもりだったのですか?」


「おお、それはのまだ中学生じゃがな、将来に宗教団体を作り出し、

 最終的には、信者は日本の総人口を超え、核や兵器を作りまくって地球を壊すのじゃよ。

 流石にいけないと思い排除しようとしたのじゃがな、

 まあ最近は科学やらで、力が余り使えなくての、腕が鈍った結果が」


「俺というわけですね」


「そうじゃそうじゃ」 


 フォッフォッフォ、と笑いながら、どこから取り出したのか、湯呑みでお茶を飲んでいる。

 そうして、しばらくゆったりとした時間が流れると、神様が口を開いた。


「突然じゃが、お主には異世界に転生してもらう」


「へ?」

 異世界、異世界ってあのステータスとかスキルがある、あの異世界?


「そうじゃ、その異世界じゃ。

 不思議に思うのもしょうがないじゃろう。気付いておらぬじゃろが、お主の魂は欠けて、歪んでおる。

 このまま輪廻転生に戻せば、支障をきたすじゃろうし、お主にも何があるか分から ん」


「神様の力でどうにかならないのですか?」


 神様は、首を横に振る。


「無理じゃ。最近の若者は、宗教にあまり関心がないため力が弱まっておるし、仮に全盛期の力があったとしても、お主を復元するのは、困難を極める。

 まあその異世界では、魂が入らなかった可哀想な体に入ることになっているから『体を乗っ取ってしまった……』とかの悩む必要もないからの。」


 その話を聞いて、転生するしかないと理解する。ならばと、色々要求してみることにする。


「じゃあなにかチート能力くださいよ」


「チート能力? 例えば?」


「そりゃあアイテムボックスとか、鑑定とかいろいろあるでしょ」


「うーん、ならお主の空いたスペースを使って神の権限の一部[ステータス閲覧]と時空魔法の才能を授けよう。

 他にはなにかあるかの?」


 他には、か……特に思いつかない。流石にとんでもないチートとかは、申し訳ないし。


「……あ! 一番大事なの忘れてた。異世界言語! 異世界の言葉を理解できるようにして下さい」


「異世界言語か、分かった。転生したら知識を脳に直接入れるとしよう。……そろそろかの、人間の魂ではこれ以上、神界にいる事はできない」


 そう言うと、神様はなにか呪文を唱え始めた。

 そして唱え終わると、最後にこちらを向いていった。

「転生すると感情とかも元に戻ると思うが、どうか、恨まんでほしいのじゃ」


 そして、俺は転生して行った。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ、行ったか……」


 儂は、少年がいた場所を見つめる。

 特に暴れたりしなくて良かっのう。

 まあ、別に暴れても記憶を消すなり、問答無用で転生させるなり、手段は無数にあるのじゃがな。


「ふぉ、ふぉ、ふぉ」


「主神さまー!」


笑いながらお茶を飲んでいると、部下である天使が来た。

はて、また何かやらかしたのじゃろうか?


「どうしたのじゃ?」


「ええと、それがー、そのお……魂の座標が……」


「なんじゃ、はっきりと言わんか」


「……座標ミスって一つの体に魂が2つある歪な状態になりました」


「……まじで?」


「はい……すいません」


そう言って、天使は腰を90度曲げて謝罪をしてきた。



「それで世界の方は?」


「それは、転生された人間が、魂が欠けていたりしていた為、異常はあまりありません」


「なるほど、まあ損害があまりないなら、まだ天使になって100年じゃし、ちょっとずつ学びなされ」


「……はい! ありがとうございます!」


そう言うと、天使は何処かへ消えていった。

ふむ、魂が2つか、まああまり世界に影響はないじゃろ。


儂はそう判断し、次の仕事を歯はじめた。



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