ガンマンジョニー

@watasigi

ガンマンジョニー

 ガンマンジョニー         渡木らい

 登場人物

・ジョニー 犯罪者

・ボブ   警察官(上司)

・トム   警察官(部下)


・舞台はどこかのバー。ジョニーがカウンターで煙草を吸っている。

・トムとボブ、駆け込んでくる

 ボブ   観念しろ!

 ジョニー クソっ!サツか!(逃げようとする)

 トム   逃げても無駄だ!この店は包囲されている!

 ジョニー クソっ!嘘だ!

 トム   さあ、大人しくお縄につけ!

 ジョニー そんな……

 ボブ   これで世間を騒がせた「耳くそのジョニー」もお終いだな

 トム   警部、「耳かきのジョニー」ですよ

 ボブ   似たようなもんだろ

 トム   全然違いますよ……

 ボブ   いいや、同じだね

 トム   ですからーー

 ジョニー (突然)おいお前ら!俺が本当に終わったとでも思ってるのか?

 ボブ   何?!

 トム   嘘を言うな!強がっても無駄だぞ!

 ジョニー 本当にそうかな!(手を叩く。暗転)

 トム   うわっ!?電気が?

 ボブ   おいトム!大丈夫か!

 トム   ええ!今のところは!

 ボブ   気をつけろ!どこかに潜んでいるかもーー

     ・明転。ジョニーが何故かガンマンの格好をしている。両手には拳銃。かがんでおり、膝のあたりで銃を構えている。

 二人   へ?

 ジョニー おいおいどうしたんだよそんな顔して。まさかこの「膝撃ちのジョニー」を知らないとは言わせないぜ

 ボブ   膝撃ちの…ジョニー?

 ジョニー へっ、まさか俺様を知らないやつがいるとは……カリフォルニアも落ちぶれたもんだな

 ボブ   何をふざけたことを言ってるんだ。お前は「耳くそのジョニー」だろ

 トム  「耳かきのジョニー」ですよ警部

 ボブ   似たようなもんだろ

 トム   だから違いますって……

 ジョニー おいおい言わせておけば勝手にぺちゃぺちゃ喋りやがって。それ以上続けるならこの二丁拳銃が火を吹くーーっておい!

 トム   はいはいとりあえずそれ下ろしてください(言いながら銃をジョニー自身に向けさせる)

 ジョニー 何をするんだーーはっ!

 二人   (身構える)

 ジョニー そうだ……ああ、そうだ……俺は!

 二人   ……

 ジョニー 思い出した!俺は!「膝狙いのジョニー」だ!

 ボブ   なあ……トム

 トム   何ですか?

 ボブ   ちょっとその拳銃上げてみろ

 トム   こう…ですか?(腰辺りまで拳銃を上げる。銃口の方向はそのままに)

 ボブ   そうそう、そんな感じだ 

 ジョニー おいお前ら!また何をーーってはっ!

 二人   ……

 ジョニー 俺は!「腰狙いのジョニー」だ!(高笑い)

 ボブ   ……なあトム

 トム   何ですか

 ボブ   あいつ、バカだろ

 トム   奇遇ですね。俺もそう思ってました

 ジョニー おいお前ら!何をごちゃごちゃ言ってるんだ!

 ボブ   なあ膝……いや、「腰抜けのジョニー」

 ジョニー 腰狙いのジョニー、だ

 ボブ   ……なあジョニー。何でお前は未だに腰狙いとか膝撃ちとか、時代遅れの型でやってるんだ?

 ジョニー ああ?!

 二人  ・身構える

 ジョニー それしか知らないからに決まってるだろうが!(大声)

 トム   ……

 ボブ   ……なあジョニー。今のカリフォルニアの流行りの型、興味あったりするか?

 ジョニー まあ、な

 ボブ   じゃあ教えてやるよ

 ジョニー ああ、頼む

 ボブ   まずは向きからだ。こういう感じで自分の方に回してみるんだ。二つともな

 ジョニー こうか?

 ボブ   そうそう。その調子だ

 トム   ちょっと警部……

 ボブ   素人は引っ込んでな

 トム   ……はい

 ジョニー それで?

 ボブ   それをまっすぐ上に上げる。ここらへんまでな(胸を指差す)

 ジョニー オーケー。出来たぜ

 ボブ   それで終わりだ

 ジョニー なるほどな……型の名前は?

 ボブ   そうだな……「胸狙い」、だ

 ジョニー ほう、胸狙い、か……胸狙いのジョニー、胸狙いのジョニー……。うん!悪くない

 ボブ   なあジョニー。いきなりで悪いんだが、実際に撃ってみてくれないか?

 ジョニー オーケー。お安い御用だ。カウントダウンはそっちでいいかい?

 ボブ   わかった。じゃあ行くぞ

 ジョニー(頷く)

 ボブ   三……二……一……

 ジョニー (発砲し、倒れる)ぐあっ!

 ボブ   よし、決まった!確保だ!

 トム  (駆け寄る)午後三時四五分、「耳かきのジョニー」確保!

 ボブ   もう本当に、「胸狙いのジョニー」に改名しちまった方がいいんじゃないか?

 トム   ハハハ。そうかもしれませんね

 ボブ   やれやれ。これで一件落着、だな

 トム   ですね

 ジョニー(ピクリと動く)

 二人  (注目)

 ジョニー ぐっ……慣れない型を使ったのが、間違いだったな。このザマだ

 トム   …… 

 ジョニー やっぱり、俺には……あの時代遅れの型が……お似合いだったってことか(咳き込む)  

 トム   …… 

 ジョニー  なあ、そこの若いの。俺の最後の願いだ。あの型、引き継いでくれないか……

 トム   ……

 ジョニー 数十年前の代物だけどな。慣れれば、なかなか、いい、もんだぜ(また咳き込む)

 トム   ……

 ジョニー 頼んだぜ。若、い、の……(息絶える)

 ボブ   (少し間のあと)やれやれ。最後までクレイジーな野郎だったな。さ、トム帰るぞ

 トム  (不動)

 ボブ   おい、トム?

 トム   ……

 ボブ  トム?(トムの肩に手を置く)

 トム  (振り返り発砲)

 ボブ  うぐっ?!(倒れる)

 トム  ……(明転した時のジョニーと同じ格好で銃を構えている)

 ボブ  トム、何、で……(息絶える)

 トム (ボブの死体を見下ろしながら)俺は……

 ボブ  ……

 トム  俺は、「膝撃ちのトム」だああ!(高笑いしながら銃を乱射する)

    (幕の外から)撃てえーっ!!

    (トム、銃弾を大量に受け、倒れる)

    (暗転)

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