脳筋聖女の暴走記録!

@SAKUSYA

第1話 脳筋聖女と不思議な箱


 わたくしはミーアと申します。聖女様のメイドを務めさせていただいております。早くも務めさせていただいてから一年が経ちました。


 わたくしは聖女様のお側にいることができて大変嬉しゅうございます。



 聖女様とはこの国の守護神のようなものであり、邪悪なものを浄化するお力をお持ちで、王と等しくとても高貴な身分の御方でございます。




 そんな聖女様なのですが--………

常人とは少し、違う脳をお持ちなのです。






 そう、あれは15歳の誕生日の時におこった出来事でした……

 





————————————————————



 その日、わたくしは聖女様のお父様、公爵様から贈り物を預かっておりました。


 一見普通の四角い箱のように見えるのですが、これは『ぱずる』という仕組みを用いていておりカラクリを解かなくては中のものを取り出すことが出来ないのだそうです。

 その不思議な箱が聖女様への贈り物なのです。

一流の職人を集め、最高級の木材を用いて特殊加工をした国宝級のものでございます。繊細で壊れやすい物だとお聞きしました。


 そして芸術品としても高い評価を受けており、値段などとうていつけられるものなどではないのでしょう。


 そんな高級品をいただけるなど、聖女様が羨ましい限りです。



 事件はすぐに起こりました、



 聖女様の誕生日には舞踏会が開かれておりました。わたくしは贈り物を聖女様に捧げるため、お座りになっている聖女様のもとへ参りました。


「聖女様、公爵様からの贈り物が届きました」


「あっ!お父様から⁉︎どれ見せてちょうだい!」


「はい、こちらでございます」


 わたくしは慎重に箱を入れ物から取り出しました。


「お納めくださいませ」


「えっ、なにこれ、、箱?中に何か入っているのかな?」


「それは仕掛けを解くと中のものが取り出せるという不思議な箱「そうだ!!」


 わたくしが話を終える前に聖女様は箱を両手でお持ちになりました、

 さすが聖女様、わたくしの説明などいらず、すぐに仕組みを理解してしまったのでしょう!


「えーい!!!!!!!!」


 聖女様はその箱を床に叩きつけました。


「あっ、あの、、」


「もう一回よ!!!!」


 聖女様は何度も床に箱を叩きつけました。

やがて箱は壊れ、ただの木片へと成り下がりました--………


「なによ!!何にも入ってないじゃない!!これのどこが贈り物なのよ!!」





 聖女様……その箱自体が贈り物なのです……その箱自体がとても高価な公爵様からの贈り物なのです--……



 今更そんなことも言えずわたくしは立ち尽くしておりました。



 聖女様は『あかない?ならぶっ壊すまでよ!!』という思考をお持ちのようです。



 普通の人でしたらどういう物なのかを訊いてみたり、いじってみたりするのではないのでしょうか?箱自体も美しく装飾されていたので壊す、という発想にはならないのでは?

 わたくしの脳内ではずっと議論が起こっておりました。


 聖女様を理解するなど、わたくしのような平民には到底無理なようです。もっと精進せねば---






 さすが聖女様、やはり我々のような常人とは違う脳をお持ちなのです……






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る