第45話 異世界転生物語  

 


 ここはカクヨーム王国。今、カクヨーム王国は内乱の危機にあった。これはそこでみずからの意思を貫き、生きた勇者の物語、の、はずである。


 「ワオリーヌ団長!そろそろご準備を!」

 

 「おお、フーリンよ、もうそんな時間であったか!」


 「はいワオリーヌ団長、我が団の兵士達も、すでに準備は整っております。あとはワオリーヌ団長だけですよ!お早く!お召し物を見に纏わられて!そ、そのような格好では、は、恥ずかしいでございます!!早くお風呂から出てください!」


 防衛軍の第一団長ワオリーヌは、この国始まって以来、初めての女団長である。母親譲りの美しい顔と黄金に輝く長い髪、この国の誰もが彼女を手に入れたいと思うほどワオリーヌは美しい。もちろんその肉体においても、鍛え上げられた美しい腹筋とくびれるウエスト、ふくよかで張りのある乳房、引き締まって弾力のあるお尻の左側には、小さなハートマークの黒子ほくろがひとつ。だが、いまだ異性でこの黒子を見たものはいない。


 「はやくはやく!ワオリーヌ団長!そのような格好ではハートの黒子が丸見えではないですか!もう!おはやいご準備を!わたくしは、副団長にお伝えせねばならぬことがありますので、もう行きますが、急いでくださいよ!」


 「わかったわかった〜、もうすぐ出るから」


 「頼みましたよ!」


 ワオリーヌはフーリンに言われた通り、すぐにバスルームから出ようとした。その時である。不幸にも、濡れたバスルームの床の上で、先ほどまで使っていた石鹸の泡が彼女の足にまとわりつき、不覚にもワオリーヌは足を滑らせてしまったのだ。


 「あっ!!!あぶなーーーー………ぃ……」


 かわいそうなワオリーヌ。彼女の人生は、あっけなく、そこで幕を下ろしたのだった……。



 かに、みえたのだが。



 *******************



「「「「おかあさーん、おかあさーーんってば!おきてよおきてよ!もう朝ごはんがないよぅ!」」」」


「ん………?私はこんなとこ……ろ…で……ぐぅ……」


 「もういいや、きっと起きないわ!ほら二番以降みんなパン食べて!はやく学校行くよ!」


 「「「「はぁーーい」」」」


*********************


「ん……?……んん???……ん???んん????」


 ―― ど!どこだここは!!!な、なんだ!このチープな部屋は!いったい?いったい私に何があったのだ? た、確か、フーリンに急げと言われて、バスルームから出ようとして、えっと、確か、そうだ!思い出したぞ!思いっきり転んだんだった!


 「え?それではここはどこなのだ?!」


 ―― あれ?この声は私の声ではないぞ!


 「あ、ああああ、あああああ、あ〜」


 ―― なんだこの変な声は!私の美しい声ではない!まぁ、いいか、とりあえずは、危険がないか、まずこの汚い布切れから出て、調査せねば!


 「は?」


 ―― なんだこれは!!!この鏡にうつってるのは誰だ?!


 「誰だお前は!」


 ―― やはり私だ。手も一緒に動くぞ。それにしても、なんという醜い姿!!

顎は二重に垂れ下がり、瞼も重たい。ぶよぶよとしているではないか!!


 「ひど過ぎ…る……。そしておばさんではないか!って、え?」


 ―― おいおいおいおい! それはないだろう!腹の肉がぼちゃんぼちゃんではないか!!何なんだこの身体は!


 「私はいったいどうしてしまったんだーーーーーーーぁぁぁ!!!」


 かわいそうなワオリーヌは、地球という星の令和三年二月七日に生きている、和響という名の42歳専業主婦として転生してしまったのだ。彼女がこれから体験していく日常は、とんでもなく非日常となることだろう。


 ワオリーヌは異性の経験が全くないのにもかかわらず、和響宅は夫婦仲がいい設定だからだ。



 さあ、生き抜くのだ!ワオリーヌ!令和の日本で!専業主婦としてーー……ぇぇぇぇ……――


 


 続く……




そんなわけがない、本日。

カクヨムコン 読者投票最終日をめちゃくちゃ満喫した。


では本日はこの辺で。



今日もお読みいただき、ありがとうございました。


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