第14話 サンタクロースファンタジー

 12月25日クリスマス本日の朝。


 寝ている私をこっそりとの隙間から眺めている視線に偶然にも気づき、目を開けると、四番ちゃんが小さな声で、


 「お母さん、サンタさんのプレゼントきた。」


 と言った。あれ? なんかおかしい。いつもならもっと大喜びで大音量のプレゼントきたー! があるはずなのに、なぜ?


 「あのね、お母さん、四番ちゃんと、五番ちゃんと、朝ね、5時に起きてプレゼント見つけたの。」


 「へぇ、よかったじゃん! いいもの入ってた?」


 「うん。入ってたよ。四番ちゃんはペンのセットでね、でも、ね、あのね・・・」


 どうしたというのであろう? 何かやらかしてしまったのだろうか? などと思い、そのまま黙って話を聞いていると、小さな声でまるで内緒話をするように、


 「あのね、4個しかないの。プレゼント。」


 あぁ、そうかと理解。2番ちゃんは二階の屋根裏部屋にあるもんね。でかいやつが。確かにツリーの下にはない。それを二番ちゃんが知ったら悲しむだろうと、何かの間違いが起きているんじゃないかと心配して、小声でこっそり確認してきたのだ。


 可愛くて抱きしめたいが、サンタクロースの委託業務は昨日終了し、私はもはやただの母親。プレゼントの詳しい情報は私の中ではもう消去済みである。


 「え? そんなわけないよ。探し見てたら?」


 「探したんやけど、3人で。でもどこにもないの。どうしよう。二番ちゃんかわいそう。」


 すごくすごく愛しくて抱きしめたいのを堪え、


 「うんと、じゃぁまずは二番ちゃんを起こしてみたら? 今何時?」


 「7時。」


 そうするかと言いながら、二番ちゃんを起こしに行く。そして、


 「まじでまじで? なんでおれのないの? 本当?」


 などと、寝ぼけた声で言いながら二人がプレゼントを探している。本当やないわ、ないよね、探してみるかなどと二人の掛け合いを戸の向こうでニヤニヤしながら聴く。でもヒントは言わない。だって私はもうただの母親でしかないから。委託業務のことは記憶にございませんですから。


 「お母さん、おれのプレゼント届いてないんやけど。」


 「そんなわけないやろ、プレゼントもらえないくらい悪い子やったと自分で思うの?」


 「え? ・・・・・ん、わからん。」


 そう言って二人はまた探す。はよ二階行けばいいのに! と思いながら。二番ちゃんの部屋にあるんじゃないかななどと言いながら二番ちゃんの部屋に行くが、もちろんそこにはない。


 「お母さん、ないよ、プレゼント。」


 二番ちゃんの声が悲しそうである。でも私はただの母親でしかない。すまぬ息子よ。寝ているフリをしながら、やり過ごす。そのうちまた睡魔が襲ってきてうとうとしていたら、



 「ウヒョーーーーーー! ウヒョーーーーー! ウヒョーーーーー!!!」


 と雄叫びが聞こえてきた。ドドドドと階段を駆け下る音が響き、ガラッと戸が開く。


 「お母さんまじすごいよサンタ! 卓球台くれた! まじすごい! どうやってサンタさんは二階の屋根裏にあんなでっかいもの運んだんやろう? すごいよね、あんな大きなものどうやって部屋に入れたんやろう? 暖炉は無理やし。 ねぇ、お母さん、不思議だよね? まじすごいよね?」


 と大真面目に聞く中一男子。私は、


 「サンタクロースはファンタジーやからなんでもありなんやて。異世界ものとかそうじゃんね?」


 というと、異世界ものアニメが大好物の息子ちゃんは、そうかそうか本当そうかも知れんとすごく納得していた。異世界設定マジパネェ。なんて純粋我が息子。


 サンタクロースは確実に存在する。私は直接お会いしたことがないだけで、毎年脳内に、今年もそろそろですので、私の代わりに何か用意しておいてくださいと、依頼が来るのだから、これはもう、サンタクロースはいるとしか考えられない。いやいるから脳内に依頼が聞こえてくるのだ。


【サンタクロースはファンタジーだからなんでもありで、確実に存在する】


 さてさてこの後、部活に行った二番ちゃん。二個前のエッセイで書いた会話があっただろうと、ウキウキしながら私は聞いた。


 「クリスマス何もらった? とかみんなで会話になったりした? 聞かれた?」


 「聞かれた聞かれた! ガチの卓球台って言ったらみんなびっくりしていいないいなって言われたわ。まじ嬉しいで、卓球台。ガチ最高やで卓球台。」


 いいないいななんだ。超うけるじゃなくて。

 二個前のエッセイの私の妄想と、ちょっとズレはあるが、私の得意とする脳内再生大成功だったなと大満足であった。



追記

部活が終わりまして、お昼に帰宅した二番ちゃんは、その後他の子どもたちを巻き込み2時間ほどさらに卓球を楽しみまして、そして、今は夜でございますが、また1時間ほど前からずっと卓球をして楽しんでおります。なかなかお高い買い物かと思いましたが、こんなにみんなで楽しんでいただけるのであれば、サンタクロース委託業務遂行しました甲斐があったということでございます。ちなみに彼のお誕生日プレゼントはバッティングセンターのように卓球のボールをぽいぽい投げてくれる一番お値打ちな卓上マシーン。彼はこのプレゼントを受け取った時に申しました。


「あれ、これで明日サンタが卓球台とかくれたらまじやばくね?」


私の脳内には、【今年のサンタクロース勝負、二番の勝ち】とはっきり浮かんでおりまして、文字を縁取るのネオンライトがピカピカ光っていましたとさ。やるな。息子。思いもよらないだろうなんて書いちまったぜ。



※彼の言う暖炉とは、薪ストーブの事であるが、煙突がついているため、我が家ではクリスマスは薪ストーブが暖炉となる。便利。


 

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