ゴスロリ娘とは、最強である。
わらび餅
プロローグ
「見てあの人、あんな服で街を歩いて恥ずかしくないのかしら」
「あの女見ろよ。不気味すぎだろ」
私が街を歩くと必ずこんな言葉が聞こえてくる。最初は、心が痛む事が多かったけれど、今ではなんとも思っていない。慣れってのは怖いね。
なんで私がこんな言葉をかけられているかは、すぐにわかる。だって私、ゴスロリの服を着ているからね。そりゃ目立つよ。でも着たいんだからしょうがないじゃない。自分には、正直に生きる!コレが私のモットーだからね。
黒いフリルが風でなびくのを感じながら、小さな歩幅で歩く。今から向かうのは、いつものお店の『ふわふわ』という所。超可愛いお店だ。なんのお店かって?みんなわかっていると思うけど、ぬいぐるみのお店だよ!ゴスロリの服を着た少女が好きなのは、ぬいぐるみって決まっているからね。
なぜ行くかって言うと、私のミーシャの縫い目がほどけてきたから直してもらっているの。ミーシャって言うのは、私のお友達のくまのぬいぐるみ。小さな頃からずっといっしょにいる可愛いくまのぬいぐるみ。
歩いて10分がたった今、私はふわふわの前にいる。しかし、すぐに入る訳には行けない。そう、ここに入るには覚悟がいる。何故かって?可愛いぬいぐるみがいっぱいでお財布の紐緩んでしまうからだよ!今着ているゴスロリの服を買ったから金欠気味なんだよ……。買えないこともないけど、今後の生活がもやし生活になってしまう。それだけは避けなければ。
「よし、財布の紐は締めた。ミーシャを迎えに行くぞ」
私は、古くなってる扉を強く押す。カランカランと爽快な音がなって、扉が開いていく。中からは独特なぬいぐるみの匂いが漂ってくる。その匂いは、私を興奮させる。薬物じゃないから安心してね。
「いらっしゃい。お嬢ちゃん待ってたよ」
「あっ、店主さん!数日ぶりです!」
店内の先には、丸椅子に座ってぬいぐるみを眺めているおじちゃんがいる。この方は、店主の中川さんだ。私の小さい頃から知ってる人で、私とぬいぐるみ仲間なのだ!
「ミーシャの手当ては終わった?」
「あぁ。終わったとも」
中川さんは、いつもの自室に入って行った。私は、ミーシャに会える喜びで胸がいっぱいでぴょんぴょんと飛び跳ねている。中川さんがミーシャを連れて出てきた時に、喜びが抑えきれず走った。
ミーシャを受け取り、我が子を抱き上げるように優しく抱いた。やはり、私にはミーシャが必要だな。心がじんわり暖かくなる。
「寂しかったよミーシャ。おかえり」
語りかけると、優しく微笑んだ気がした。それがすごく嬉しかった。
「さぁ、ミーシャを連れておかえりなさい。家に帰りたがっていると思うからね」
「わかった!ありがとうね、店主さん!」
中川さんは、軽く微笑んで手を降っている。私も微笑み返して、ミーシャと一緒に手を振る。そして、古くなっている扉に手をかける。帰ったらミーシャがいなかった時のお話を聞かせてあげよう。なんて考えながら、力強く扉を開けた。
カランカランという爽快な音の後に、陽の光が鋭く差し込んできた。眩しくて一瞬だけ目を閉じて開ける。
そこには、見慣れている景色ではなく見慣れない森が広がっていた。私の頭は真っ白になり思考が停止する。
「え。ここはどこなの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます