第138話 宇宙ステーションを建設せよ!!・3

 次々に打ち上げられていく軌道エレベーターのカゴ。

 人が複数人入るくらいのカゴを、エレベーターの突起に引っ掛けると、そのまま凄い勢いで上空までぶっ飛んでいくのだ。


 逆側の戻り回転はゆっくりだから、帰還の方が楽であろう。

 俺は創造神プリンターとともに乗り込んだ。

 俺とプリンターでカゴはいっぱい。


 眷属の一人がカゴを突起に引っ掛けると、バビューンっと打ち出された。


「うおーっ! す、凄いGだ!」


 とても立っていられん。

 ぺちゃっと押しつぶされていたら、周囲の風景が真っ青な空から、暗い宇宙に変わった。


 そう、宇宙に出たのである。

 先に飛び立っていたバイト邪神や人間たちが、ぷかぷか浮かんでいる。


「凄い体験だった。そして初宇宙……。まさか宇宙服を着込んで宇宙に出ることになるとは思わなかった」


 感慨にふけっていたら、「ぎゃああああああ」『ぎええええええ』『わははははは』という女子三人の声が聞こえてきた。

 俺の後ろに、ポタルとキャロルと逢魔卿がポーンと放り出される。


「し、死ぬかと思ったー。空をとぶのと全然違うよこれ!」


『植物は乱暴に扱ったらいけないのよ……! 枯れちゃうかと思ったわ!』


『楽しいものだな! いつもとは違った感覚で、とても刺激的だった』


 三者三様の反応である。

 そしてすぐ後に、『うおーっ』『アーウチ! 投げ出されそうでーす!』『アチョーッ! お鍋に掴まるよーっ!!』『ピポポー!』とにぎやかなのが来た。


 おお、フランクリンがふっ飛ばされかけている。

 常に想定されるアクシデントに遭遇する彼は、期待を裏切らない。

 今回はシェフとフライパンを通じて繋がり、難を逃れたようである。


 ……今、鍋って言った?

 やはり中華鍋なのでは。


『ワターシがフライパンを持ってて助かったねー』


 俺の疑いを察したのか、シェフが言い繕ったぞ。


『オー、スペーストリップはテリブルでーす! バット、エーテルスペースはスノーマンがメルトしないと聞いてまーす。実はミーにはスペーススーツはノーニードなのでーす! でもかっこいいから着てまーす』


 うむ。

 しかも女子たちが乗り込むと作業機械に変形するしな。


 そういうことで、みんなを集めて作業に取り掛かる。

 軌道エレベーター周辺に、まずは居住区画を作るのだ。

 そこを拠点にしながら、だんだん宇宙ステーションを広げていく。


「ほわあああ、世界を外から見下ろすなんて思わなかったよ。空を飛んでてもこんな高さにならないもんね。丸いなあ。それで、緑と青色してる!」


『あの緑色が植物なの? なんだ、植物が世界を征服してんじゃない』


『世界の半分は青だな。つまり水であり海であるということだ。海の向こうには私たちが行ったことのない世界もあるだろうな』


 女子チームはロマンのある会話をしているな。

 俺はこれを聞きながら、プリンターからポコンポコン資材を取り出していく。


 接着剤不要のプラモデルみたいな構造で、隙間をぐるっとゴムパッキンみたいなので止めるのだ。

 これでエーテルと空気が混じってしまうのを防ぐわけだな。


 バイト邪神たちが、人間たちに宇宙での作業の仕方を教えている。

 バイトの先輩と後輩だな。

 人間相手に、めちゃくちゃフレンドリーだなあ。


 さて、こちらでは女子三人がフランクリンに乗り込み、この雪だるまは宇宙服をそれに合った形へと変形させる。

 小型のスペースクルーザーみたいになったな。

 上にポルポルが合体したら、マニピュレーターが出てきた。


 これで資材をキャッチして、ガチャガチャ組み立てていく。

 バイト邪神と人間が、ここにゴムパッキンを被せるのだ。くるっと巻いたら、圧着させる。


 うむ、手際はたどたどしいし、ゆっくりとしたものだが、着実に作業は進んでいる。

 初日はこんなもんだろう。


『おや? タマル様、何か飛んでますぞ』


「なんだって」


 プリンターをシェフに任せ、休憩していた俺。

 ラムザーが指差す方向を見てみたのである。


 何かひらひらしたものの群れが、成層圏近くを飛んでいる。

 あれは……スカイフィッシュではないか。


「あそこを飛んでる連中は、俺の生まれたところではUMAという存在しないかもしれない動物だったんだが、こっちは普通にいるんだな。あまりに高いところを飛んでいるから、誰も気付かなかったんだ」


 エレベーターの降りる機能を使って近づいていく。

 そしてスカイフィッシュが寄ってきたところで……。


「せやっ」


 ピョインッ!

 スカイフィッシュをゲットした。

 他のスカイフィッシュが、慌てて離れていく。


 細長い棒状の魚で、滑空用なのか、広がったヒレが波打つようについている。


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYお料理レシピ

 ※スカイフィッシュの塩焼き

 素材:スカイフィッシュ

 ※スカイフィッシュのムニエル

 素材:スカイフィッシュ


 こりゃあいい。

 早速シェフに伝授して、みんなの分を増殖してもらうとしよう。


 降りていくエレベーター突起を手放し、裏側にある上っていく突起を掴む。

 加速した。

 バビューンと撃ち出される俺。


 だが、出来上がっていた宇宙ステーションに激突して停止した。

 いてて!

 でも、しっかり形になってきているじゃないか。


 軌道エレベーターから乗り込める形で、ドーナツ型の居住区が五割ほど完成していた。


「おつかれおつかれ! 打ち上げだ! 今日はこれで作業終わり!」


 あちこちから、ウオーっと声が上がった。

 エーテル宇宙なので普通に声が届くのだぞ。

 もちろん、宇宙で戦闘が起こったらビームの音とか爆発音も響くに違いない。


 スカイフィッシュを食いつつ、居住区でみんな雑魚寝である。


 環境保護艦隊がいつ来るかは分からないが、恐らくそう遠くはあるまい。

 サクサクと宇宙でもスローライフできる設備を整えて行かねばな。



▶DIYお料理レシピ

 スカイフィッシュの塩焼き

 スカイフィッシュのムニエル

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