第137話 宇宙ステーションを建設せよ!・2

 次に、軌道エレベーターを上がっていくためのカゴと宇宙服を用意せねばならない。

 これも全部、朽ちた都市で解決した。


 建物の中に保管庫があり、そこで古びた宇宙服を発見したからだ。

 これを手にした俺はレシピもゲット。

 増産することにする。


『オー、タマルさん! エレベーターでミーたちをブリングするボックスはどうするんですかー?』


「そんなもん、適当な箱とかでかいカゴでいいだろ」


『オー、アバウト!!』


 だがこの指示は大変分かりやすかったと見えて、バイト邪神と眷属と人間たちが、わいわいとエレベーター用のカゴを作り始めた。

 しなる木の枝を編み込み、五、六人くらいが乗り込める大きなカゴができる。

 あるいは十人くらい一度に運べる木製の箱ができる。


 軌道エレベーターにはたくさんの突起がでており、そこにカゴを引っ掛けるのだ。


「みんな、突起に触るなよ。多分、それが触れたやつを宇宙まで一気に持っていっちゃうのだ」


 だが、言うことを聞かない者はいるもので、バイト邪神の一人がちょいっと触った。

 すると、彼はビューンッ!と宇宙まで連れて行かれてしまった。


 しばらくしてから、戻ってくる。


『あわわわわ、宇宙に投げ出されて戻ってこれないかと思った……』


 バイト邪神はそんな事を言って、反省していたのである。

 これが邪神だから良かったが、眷属だったら砂漠から離れたことで死んでしまうし、人間だったらエーテルを呼吸できなくて死んでしまうかもしれない。


 俺は一日、宇宙服を作るDIY作業に掛かり切りになった。


『ウグワーッ! 同じ道具を200個作りました! 3000ptゲット!』


『新しい機能が創造神プリンターに追加された! 創造神プリンターが道具をコピーできるようになった!』


「なんだって!!」


 夕方ころにそんな表示が出現して、驚く俺。

 素材をプリンターに流し込む。

 明らかに容量を超えている素材が、どんどん入る。


 そして宇宙服をプリンターの上に載せた。

 すると、プリンターが宇宙服のスキャンを始める。


 ボタンをポチッ。

 生産が始まった。


 ポコンポコンと宇宙服が飛び出してくる。

 これは凄い!


 夕飯を食って寝る前には、バイト邪神と手伝いに来た人間たち全員ぶんの宇宙服が完成していた。

 合計500個。

 俺たちの分も含む。


 そこから、朝までは宇宙ステーションの資材を吐き出させる。

 プリンターフル稼働だ。


 ちなみに資材は、創造神ねんどを使って形を決めてある。

 造形はポタルとキャロル。

 彩色は創造神ペンキでラムザーとフランクリン。


 そこに、ポルポルと骨たちが創造神えんぴつで色々イラストを書き込んでいる。


『クオー』


『ピピピ!』


『カタカタ!』


 赤ちゃんドラゴンとポルポルと骨ボウズが並んで、イラストの仕上がりに感想を述べている。

 三人とも言語が違うだろうに、なんとなく意思疎通できているようで面白い。


「三人とも早く寝るのだ。明日は早いぞー」


『ピピー!』


 ポルポルからいいお返事があった。

 俺は子どもの自主性を重んじるので、それ以上は言わずに爆睡である。

 肉体労働をしまくったので、それはもう泥のように眠った。


 朝はシェフの中華……いやフレンチの香りで目覚める。


『アチョーッ! 朝は胃に優しいフレンチ粥ねー!!』


「中華粥なのでは……!?」


『オートミールとコンソメ出汁と、付け合せはキャベツの酢の物ねー』


「素材がヨーロピアンだ……!」


 巧みにギリギリなところを攻めてくるなシェフ!

 わざとなのか……!?


 作業員一同、フレンチ粥をガツガツ食い、食後のフルーツジュースなどを飲んでからちょっと食休みした。

 そして、俺の訓示である。


「諸君! 今日から宇宙に上がって宇宙ステーションを組み立てます! ここに凹凸があるから、適当に組み合わせるとそれっぽい形になるようになっている。設計図は気にしないでよろしい! 諸君のイマジネーションに任せて、好き勝手な形の宇宙ステーションにしてもらいたい!」


 うおーっと返答があった。

 みんなやる気満々。


「連日のハードな仕事だが、この星を守るための戦いなのだ」


「いけすかん環境保護艦隊から星を守れるんですよねしかし? やってみる価値ありますよしかし!」


 ケルベロス三兄弟の言葉で、さらにみんな盛り上がる。


『では我々眷属は、ここで軌道エレベーターをさらに強化しておきます。余った素材もあるようですし、デッドランドマウンテンに直接登ってこれるようにしますよ』


「おお、頼もしい! よろしく!」


 完全に俺のシンパとなった、砂漠の眷属たち。

 忠誠心がとても篤いのだ。


『私も宇宙に行くのだな。これは楽しみだ。ワクワクしてくるぞ』


 逢魔卿のテンションも高い。

 早速宇宙服を身に着けていた。


 ちなみにこの宇宙服は、通常だと手足の生えたドラム缶に半球状のガラス窓がついた作りをしている。

 だが、入り込んだ者のイマジネーションによって形を変えるのだ。


『オーイエー! ミーのスペーススーツはマッシヴでーす!!』


「フランクリンが機動兵器みたいな見た目になっている! なんと余計なディテールか」


 全身からスラスターみたいなのが出て、あちこちに隠し腕が仕込まれたデザインになったフランクリン。

 対してラムザーは、シンプルな宇宙服。ただし四本腕だ。


『我はごく一般的な多腕の魔人ですからな。動きやすいのが一番ですぞ』


「俺も同じだな。普通のガッツリした宇宙服だ。ところで女性陣は……ほほう」


「見て見てタマル! 羽も宇宙服がくっつくんだねえ!」


『体にピッタリしてるのね。悪くないんじゃない?』


『スイムスーツとやらと変わらないな、これは。つまり宇宙は水の中なのではないか?』


 彼女たちは動きやすいようにか、体にフィットした作りに変化していた。

 うーむ、かっこいい。そして眼福……。


 後に分かったことだが、彼女たちの宇宙服はフランクリンの機動宇宙服と合体できるようになっており、フランクリンに搭乗してコントロールできるようなのだった。

 パイロットスーツだったんだな!


『ちなみにタマル様の宇宙服は普通ではありませんぞ』


「ほんと?」


『大きな背負いものと、足が大きく膨らんでおりますな』


「背中と足にでかいブースターがついてるのか! これは、環境保護艦隊を捕獲できるようになっている仕様だな……!」


 こうして準備が整った俺たち。

 いよいよ宇宙へと上がるのである。

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