第128話 小邪神群のお仕事

 隕石のように大気圏を突破して落ちてくる小邪神群。

 だがよく見れば何のことはない。

 大気圏突入用のカプセルみたいなのに入っているのだ。


 みんな、ある程度の高度で一斉にパラシュートを開いた。

 落下速度がのんびりになる。

 そんなのが、ふわふわと砂漠とタマル村に降りてきた。


 ワイワイとカプセルを出てくる邪神たち。

 なんか直立した動物に見える。


『みんな単独でエーテル宇宙を航行する能力を持たないくらいの邪神なんだなもし。こうやって小さい仕事を請け負って、コツコツ力を付けて、いつか立派なオーバーロードになることを目指してるんだなもし』


「ほうほう。邪神も大変なんだなあ」


 タマル村に降りた邪神たちが集まってきて、ヌキチータと今後の話をし始めた。

 同時にヌキチータの横に画面が幾つも展開し、そこにも邪神たちが写っているな。


 みんなに仕事の割り振りをしているのだなあ。


 そうこうしていると、邪神たちが俺に気付いたようである。

 王子様ルックのまま、横でぼーっと見ている男がいたから誰だろうと思ってたらしい。


「もしかして、この星を開拓した大型新人のタマルさんやないですか、しかしー?」


「なんだよその語尾は」


 頭が3つある、直立したケルベロスがジャージを着たような男である。


「あー、申し遅れました! 僕ら、テンジ、センリ、コマガの三兄弟なんですしかしー。一応今回のバイトリーダーなんですしかしー。いやー、光栄やなー。転生体から大躍進して、星を掌握した若手の星タマルさん! ヌキチータさんも型なしやないですかしかしー」


 なんか握手を求めてきたので、握り返した。

 あっ、肉球。


 ちなみにケルベロスの3つの頭だが、それぞれ意思を持っていても三つ子で、大体考えることが一緒らしい。

 ということで、発する言葉は一つなのだ。


「今回は頑張ってお仕事させてもらいますよってしかしー」


「ああ、がんばってくれ!」


 なかなか気持ちのいい邪神なので、俺も笑顔になった。

 彼はタマル村周辺の環境調整を担当しているのだと言う。


『ははあ、この方が邪神の一柱なのですな? なんだか気さくそうで偉ぶったところがありませんなあ』


 ラムザーがケルベロス兄弟を見て感心している。


「そりゃあもう! 僕ら、邪神言うてもせいぜい魔王の魔将程度の力しかないんですわしかし。たまたま生まれた星がそんなに強くなくて、そこで上り詰めただけですからしかしー。だけど宇宙に出てみたらびっくり仰天ですわしかし!」


「宇宙は広いもんな。色々凄いやつがいたんだろ」


「はいー。僕らを載せた船が、まず星渡りのドラゴンにぶつかって半数が滅びましたしかしー」


「ハードだなあ」


「宇宙こわい!」


 ポタルが震え上がった。


「ま、それはそれとして! 仕事をね、やっていきますわしかし!」


 周りでも、邪神たちが仕事を開始している。

 どういう事をするのかなと思ったら、計画書を見ながら周囲の邪魔な木を切っているのだ。


 あるいはドリンクみたいなのを飲んだ後、ムキムキにパンプアップしてから木を引っこ抜く。

 そして計画書にある場所に植え直す。


 一度木を引っこ抜くと、パンプアップは解けるらしい。


「あれ面白そうだな。俺もやってみたい」


「ムキムキドリンクですわしかし! どうぞどうぞー」


 ケルベロス兄弟長男のテンジが、にこやかにドリンク剤を差し出してきた。

 どれどれ……。


『こういうのはあたしが飲むわよ! あら美味しい! あっ、なんかパワーが溢れてくるわね!!』


 うわーっ!

 キャロルが一回りでかい、ムキムキガールに!!

 そして近くの木をスポーンと引っこ抜き、その辺に置いた。


 すると、またキャロルは元通りに縮んだ。

 なんだなんだ。

 あまりに面白そうなので、俺もドリンクを受け取ってみた。


『新しいレシピが生まれた!』


 なんだなんだ!?


▶DIYレシピ

 ※素材:ムキムキドリンクグレート

 ムキムキドリンク+ハチミツ


 ハチミツ!?

 そんなものがこの世界に……。


「うわーっハチに刺された!」


「おしっこかけろおしっこ」


 小邪神たちが騒いでいる。

 ハチがいたのかあ。

 そしてハチ刺されで大騒ぎする邪神。


「どれどれ……」


 近寄ったら、ブーンとハチが飛んできた。

 臨戦態勢である。


「だが、こいつは頼むぞポルポル!」


『ピピー!』


 ポルポルがぶいーんと浮上してきた。

 驚くハチ。

 凄い軌道を描きながらポルポルに襲いかかる。


 これをやっぱり曲芸飛行で迎え撃つポルポル。

 熱いドッグファイトだ!


 その隙に、俺は蜂の巣の上で網を振った。

 ピョインッと音がして、アイテムボックスにハチミツが加わる。

 蜂の巣はそのままだが、どうやら一つの巣から一度しか採取できないようだな。


 これをトンカンやって完成したのが……。


 ムキムキドリンクグレート!

 具体的には、ムキムキドリンク十回分の効果がある。


 これを俺が飲んだら、逆三角形ボディのムキムキタマルにチェンジしたぞ。


「むはーっ! なんでもやれる気がしてきたぞーっ! こうだ! こうだーっ!」


 スコップを使い、ガンガン木を掘り返す。

 どんどんアイテムボックスに収まる。


 これを計画書の位置に、ガンガン植えていく。


「す、凄いお人やしかしー!! さすがタマルさんやでしかしー!!」


 ケルベロス兄弟が叫んだ。

 こいつ……素直にヨイショしてくるから、なかなか気持ちいいな!


『オー! ブラザーケルベロス! タマルさんをプレイスしすぎるとよくないことがハプンする気がしまーす!』


「よくないこと? なんやそれしかし……?」


「あ、あ、木をたくさん引き抜いたから、なんだかあの辺りの地面がグラグラしてるんだけど」


『これは……地崩れが起きますなあ。みんな、避難ですぞー。タマル様はまあ大丈夫でしょうな』


 なんだと!?

 とんでもないことが聞こえたぞ!

 そして同時に、地すべりが起きる俺の足元。


 いかーん!

 大地をつなぎとめている木々を全部引っこ抜いてしまった!

 あーれー!


 流されていく俺なのだった。

 なお、その後駆けつけたキャタピラ付き馬車によって、俺は無事救出されたのである。



▶DIYレシピ

 ムキムキドリンクグレート

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