第91話 四つの創造神レシピ~その1~
『創造神えんぴつだ』
「あっ、なんか想像してたのを99割引きしたくらいしょぼい」
『アヒィーッ、恐ろしい誹謗中傷! 創造神は滅んでしまう……』
『オーノー、ダディーッ!』
本当に寒天質な体がスーッと薄くなっていったので、フランクリンが駆けつけてきた。
『気合をインサートしまーす』
そう言いながら、創造神に水をだばだば掛けるのである。
『ウグワーッ! 存在が薄まるーっ! 息子よ、余を本当に消滅させる気か!』
『オー、ダディがうすーい感じだったので、ウォーターをプラスしてかさ増ししようと思いました! 逆効果でしたか! HAHAHAHAHA』
「この親子、あまり仲が良くないのでは?」
ともかくだ。
創造神鉛筆のレシピをゲットした。
▶DIYレシピ
※創造神えんぴつ
素材:星の欠片+創造神のレシピ
『はいこれ、レシピ』
「レシピそのものを消費するから、一本しか作れないんだな。スペシャルなレシピじゃないか。じゃあ早速作るか」
『リアリィ!? 一度チャレンジしたらネバーチャレンジなレシピですよ!?』
「はあーっ!」
トンカントンカン!
「もう作った」
『オー……! シンク、イコールアクション! タマルさんおみそれしました』
『余も思い切り良すぎてびっくりした』
「悩んだって最終的に作るんだぞ? だったらさっさと作ってしまうのがいい。どーれ、試してみよう」
創造神えんぴつは、絵の具を一気にぶちまけたみたいな色をしており、最初から削られて書けるようになっている。
紙に書くのかな?
いや、いきなり地面に書く可能性も……。
鉛筆を握りしめた俺。
すると、目の前に真っ白なキャンバスが出現したではないか。
ここに鉛筆で書けるらしい。
しかも、意識すると色が変わる。
さらに……。
「あっ、これはイメージマテリアルやね。ぼくら神々が、何かを作り出す時にデザインのためのスペースにするものやで」
洋品店のサンがいつの間にか近くまで来ていて、解説してくれる。
つまりこれ、何らかの創造物のデザインを行える、ということらしい。
「見た感じ、このマテリアルは二次元限定やね。絵をデザインする感じだと思うよ」
「なーるほど。では俺はこれで、タマル村の正式な村旗を作るぞ。見よ! タマル画伯の力をーっ!!」
真っ白な空間に描く、俺の似顔絵!!
この世界に来てから目にした美術品は、退廃帝の肖像画以外には俺の顔が刻印された門や、俺の彫像ばかり。
お陰で俺は、自分の似顔絵を書くのが得意になったのだ。
完成だ。
うーむ、素晴らしい仕上がり。
この顔、殴りつけたい。
「何ができたの? うわー、タマルじゃん! えっ、このタマルがドヤ顔して周りがキラキラ光ってるのが村の旗になるの? いいんじゃない? すっごく分かりやすい!」
『ひと目でタマル様が主であり、なにか権能を持ってることが分かりますな。単純明快でいい旗ですぞ』
『うっわ、この顔殴りたい』
キャロルが俺が思ってるのと同じようなことを言った。
さっそく旗として出力してみよう。
真っ白なマテリアルから、にゅるにゅると旗が出てきた。
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYレシピ
※タマル村の村旗
素材:村旗の布+棒
トンカントンカンやると、あっという間に村旗になったのだ。
これをヌキチータ事務所の屋根に登り、『あっ! タマルさん何をしてるんだなもし!?』てっぺんに突き刺す!『あーっ! 僕の事務所がーっ!!』
風にはためくタマル村村旗。
なんと素晴らしい光景だろう。
「名実ともに、ここは村になったな」
『まだ建物が四つしかありませんがな』
「ほんとだ。俺たちがずっと馬車ぐらしだからなあ。なんか建物作るか。創造神が増えたから神殿?」
『ヒイーッ! 神殿なんていう分かりやすいものを建てられたら、そこに攻め込まれて滅びる!』
「創造神がトラウマを抱えているぞ。じゃあこいつには青天井で暮らしてもらおう。おばけだから大丈夫だろ」
建物は増えないことになったぞ。
『ところで、赤き湿原の迷宮にはいつ行くのだ? 行くぞ行くぞという素振りをしながら何もしていないように見えるが』
「スローライフだからな。行きたくなったら行く」
『ゆっくりしていると、二人の魔人侯が迷宮を踏破して力を手に入れてしまうぞ』
創造神がやきもきしているようである。
「待つのだ創造神。よく考えて欲しい。俺は既に四つの迷宮を踏破している。つまり、魔人侯が一つずつ迷宮を踏破して力を得たとしても俺の25%に過ぎないということだ……」
『自信満々に! 言われてみればそんな気がしてきた……』
『オー、ダディが説得されてまーす』
「タマルって基本的に自信満々だもんねー」
第一、そろそろ逢魔卿が遊びに来そうなのだ。
迷宮なんぞに行っている場合ではあるまい!
イチには既に、スイムスーツの件は伝えてある。
魔人侯のスイムスーツを作れるということで、彼は大いに張り切っていた。
逢魔卿とスキューバーダイビング的なのを楽しんだ後で、赤き湿原の迷宮とやらに行けばよろしかろう。
俺は大いに油断しつつ、逢魔卿の到着を待つことにしたのだった。
『ゆ、油断していると足元をすくわれるぞ!』
「俺は必勝を期して油断しているのだ……!」
『タマル様は行き当たりばったりなので、油断してても備えてても結果はあまり変わらないんですぞ』
そうとも言う。
▶DIYレシピ
創造神のえんぴつ
タマル村の村旗
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