第90話 ヘルズテーブルの真実(その2)!

 トンカントンカンDIYをして、変身ブレスレットが完成したぞ!

 これをポタルの手首に巻いてやる。


「ハーピーはここにブレスレットがあっても飛べるの?」


「羽はね、見て。手首からちょっと下から翼が生えてるの。ここの骨が伸びて羽の支えになるんだけど、折り畳めるようになってるんだよねー」


『オー! ダディにティーを飲ませている間に、二人でニューアイテムをテストしてまーす!』


「本題はこっちだからな。神様はついでだ」


『アヒーッ! なんという扱い!』


 ということで。


「変身だ、ポタル!」


「はーい! くるりんっ!」


 ポタルがブレスレットを掲げて、くるっと回転する。

 すると、彼女の姿が光に包まれ……フリフリのアイドルっぽい衣装に変化したのだ!


 さらにくるっと回転すると、スイムスーツになる。

 またくるっと回転したら、今度は活動的なパンツルックになった。


「私が今まで作ってもらった服に早着替えできるみたい!」


「ブレスレットを装着した人が持っている衣装が多いほど、選択肢が増える感じだな。凄く魔法っぽい効果じゃないか。星の欠片レシピ、なかなかおもしろいぞ……!」


 実用性もあると言っていいだろう。

 様々なシチュエーションに合わせた装備を用意しておいて、必要となれば変身すればいいのだ。


 これは迷宮攻略の時などに大変役立つことだろう。

 人数分作っておこうかな。


「……ということで、俺の用事は終わった。創造神よ、話を聞かせてくれ。何か新しい情報とかある?」


『うーん、お前たちが手に入れた情報は、余の本体が残したものだ。空の迷宮まで至ってそれを手に入れたということは、多分もう目新しい情報はない。そもそも、空から侵略者が来ることまでは余は全然予想してなかった……。兄弟神とやり合うだけで必死だった』


『オー、ダディの苦労、ミーにもアンダスタンデイブルでーす』


「なんて?」


『???』


『理解できるって意味でーす』


 今、フランクリンの言葉を創造神も分かってなかったぞ!

 神の仔それぞれで、思考とか使ってる言語とか独自なのでは?


 そう考えると、創造神が持ってる情報ってあまり期待できない気がしてきたぞ。


『今どれくらい攻略できてるの』


「大蟻地獄の迷宮と、空の迷宮と、次が海底神殿、最近がカルデラ湖の迷宮だな」


『アヒーッ! 最後の迷宮のはずの空に二番目に行ったのか!? じょ、情報の順番がーっ!』


「すまんな。俺たちは行き当たりばったりで生きてるのだ」


『まあ仕方ない……。世界はどうやら、神の仔の多くは敗れ、兄弟神と魔人侯のものになっていたようだな。今こうして、フランクリンが救われているだけで余は満足だ……』


『オー、ダディ! ミーもダディにリュニオンできてベリーファンでーす!』


 また、ひしっと抱き合うおばけと雪だるま。


『残るは赤き湿地の迷宮と、始まりの迷宮だけか……』


「始まりの迷宮!? 露骨に最初に入るところじゃん。それってまさか……」


『恐らく、羅刹侯爵の領内にある迷宮ですな。もしかすると、あの方は始まりの迷宮の攻略を既に行っているかもしれませんぞ』


「始まりの迷宮だもんな、攻略難易度も低そうだし……」


『もしも魔人侯や兄弟神に抗おうとする心ある者がいれば、力を付けることができる迷宮として作ったのだ。だから踏破すると様々な武器が手に入る……』


「やばいじゃん」


 今までの迷宮、迷宮核と罠と怪物くらいしかいなかったのに。

 至れり尽くせりな迷宮が、羅刹侯爵の手に落ちてる可能性があるんだな。


 羅刹侯爵……。

 最初にその名を聞いた魔人侯で、ラムザーの主で、だがまだ一度も会ったことがない奴だ。


「ラムザー、羅刹侯爵ってどんなやつよ」


『我ら多腕の魔人と同じ姿をしてますぞ。今までの魔人侯の中では、逢魔卿についで普通っぽい外見ですな。一番恐ろしいのは、頭の中身ですぞ』


「最後のが普通っぽいというのはなんか強そうに感じてしまうよな。……あれ? あと一人魔人侯がいるんだっけ?」


 俺の疑問に、創造神がすぐに答えてくれた。


『うむ。赤き湿地の迷宮は、残影伯という魔人侯がいたはずだ。恐るべき魔法の使い手だぞ』


「つまり、魔人侯はあと二人というわけか。ふむふむ……!」


 色々準備してから挑みたいな。

 対等に戦うつもりなんて毛頭なくて、いきなり襲ってゲットして勝負を終わらせる気満々なのだ。

 スローライフは戦わないからね。


『ピピー!』


 ポルポルが走ってきて、馬車がタマル村に戻ってきたのを告げた。

 えっ、もう!?

 異常に早くない?


『余がちょっと時空を捻じ曲げてつなげた。これでしばらくぶんの力を使い切った……魔人侯に見つかったら終わる……ヒイー』


「そんな力が……。ああ、創造神だったもんな。ほら、外でヌキチータが待っているぞ」


 タマル村にて邂逅する。創造神と侵略してきた外なる神。


『やあやあやあ、あなたが創造神様なんだなもし? 僕はこの星を地上げに来た、ヌキチータと言うんだなもし。見たところ殆どの力を失ってしまっているんだなもし? だけど命があっての物種なんだなもし』


 ヌキチータとおばけが握手している。

 ひとまず、協力体制になるんだろうか?


『余は全ての力を迷宮核として蓄えた。あと二つの迷宮核が集まれば元の力を取り戻せる……ということは全然なくてな……』


『そうなんだなもし?』


『うむ。余は迷宮核となった時、その全てを兄弟神と直接リンクさせた。だから、もうあれは余であって余ではない。余はこのみじめなおばけの姿でさまようしかないのだ……』


 なんと哀愁漂うおばけであろうか。


「よし、創造神、うちの村にいるといい。外なる神々ばっかりいるが、とりあえず安心だし、俺が帰ってきたら美味しいものも食えるぞ」


『そうでーす! ダディはタマル村にステイしましょう!』


『おお……そうさせてもらえるとありがたい……! ああ、そうだ。後でこの侵略者たちのシステムに余もアジャストしてだな。タマル殿がやっているレシピなるシステムを、こちらからも提供しよう』


「なんだって!?」


『四つの迷宮核を集めているな。後々、四つの創造神レシピを授ける……』


 思わぬ報酬を得ることになってしまった。

 こうして、タマル村に創造神が居着くことになったのである。

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