第66話 遭遇、廻天将軍!

 飛空艇ゴッドタマル号が展開し、再び大空へと漕ぎ出した。

 甲板でトンカントンカンDIYをする俺である。

 あっという間に、先ほど手に入れた砲台からオブジェクトが完成した。


 そう、これは手持ちアイテムではない。

 破壊不能オブジェクトなのだ。


 飛空艇に飾る家具、という扱いで、ジャイアントクラッカーが設置される。

 骨四郎と骨五郎を呼び出して、左右に設置したクラッカーの紐係に任命した。


「二人とも、責任は重大だぞ」


『カタカタ!』


「ここが一番盛り上がるかなーと言うタイミングで紐を引くんだ! その判断は任せる。俺は仲間を信じるタイプなんだ」


『カタカタ!』


 骨四郎と骨五郎が、なんか心臓を捧げるポーズみたいなのをして俺への忠誠を誓っている。

 この骨たちは俺が生み出した仲間でもあり、アイテムみたいなものでもあり、タマル一味の中では例外的に上下関係っぽいのがある。


 俺だって彼らを便利な道具扱いしてはいない。

 未だ、骨三郎のベルを持ち歩き、同じ悲劇を繰り返さない教訓としているのだ。


 スローライフで仲間の失意の死があってはならんのだ。


『新しいレシピが生まれた!』


「なにっ」


▶DIYレシピ

 ※スーパー骨のベル

 素材:壊れた骨のベル+壊れた砲台


「これはまさか!!」


 俺、猛烈な勢いでDIYするのである。

 骨次郎が駆け寄ってくる。


『カタカタ!』


「ああ、どうやらこいつはひょっとするぞ! いでよ!」


 DIYされた骨三郎のベルは、無骨な金属に覆われたものになっている。

 これを鳴らすと、そこから懐かしいシルエットが出現した。


「骨三郎なのか……!」


『カタカタ!』


 それは間違いなく、あの日パリィされて一撃のもとにフェイタリティされた骨三郎だった。

 背中に金属製のバックパックを背負って、肩からキャノン砲が覗いているが。


『ウグワーッ! アイテムをリサイクルしました! 200ptゲット!』


 リサイクル!

 この世界はそんなことができるのか。


 骨のパワーと砲台の力を得た骨三郎は、言うなれば骨三郎キャノンとして蘇ったのである。


 骨たちがわーっと集まってきて、骨三郎キャノンを胴上げする。

 俺も輪に加わって胴上げだ!


「おかえり骨三郎!! 失ったものを取り返してやったぜ!!」


『死者の再生とは……。タマル様、まさしく神の所業ですぞ。まあ骨三郎は既に死んでますが』


「スケルトンだもんな」


『カタカタ』


 これに骨次郎も加わって、みんなでわっはっはと笑う。


『うるさいわねー。起きちゃったじゃない』


「この状況で寝てられるキャロルもかなり肝が据わってるよねー」


 ポタルが笑った。

 そしてすぐ真顔になる。


「あ、なんか来る。魔人と、それとなんだすごく大きい魔人がいる」


「大きい魔人だと? ついに魔人侯本人がお出ましなんだろう」


 ゴッドタマル号目掛けて突き進んでくるのは、黒い巨大な翼と、ローブを纏った男だった。

 顔は鳥っぽい。


『貴様が侵入者カアーッ! この我輩、廻天将軍の領土と知っての狼藉カアーッ!! 地上へと叩き落としてくれようカアーッ!!』


「分かりやすい語尾がついてる! カラスの魔人だぞあれは!」


『ほう、我輩のルーツがカラスだと見抜くとは、やるな! 貴様がこの一味の首魁か! 何者だ!』


『控えおろう!』


 ラムザーが嬉しそうに前に出てきた。

 俺のことを紹介するつもりだな?


『こちらにおわすお方をどなたと心得る! 流血男爵、退廃帝を下し、逢魔卿と同盟を結び、ついにはデッドランドマウンテンのドラゴンすら平らげた……』


『長いわ! カアーッ!!』


 廻天将軍、口上の途中に攻撃!

 何という失礼な男だ。


 廻天将軍が投げた槍は、ラムザーのドラゴン装備に炸裂……するところだったのだが、あの装備はDIYした破壊不能衣装なので表面でぼいーんと弾けた。


『いたた! 喋ってる途中で攻撃してきましたぞー!』


「こいつら、儀礼とか形から入るとかそういうのが無い連中だな」


『ほう……我輩の槍を防ぐとは大したものカアーッ。だが、こいつはどうカアーッ!? 者共、槍を降らせ……』


「骨四郎、骨五郎、ジャイアントクラッカーてーっ!!」


『カタカタ!』


 こっちも話の途中で攻撃である。

 いや、攻撃ではない!

 クラッカーの紐を引っ張っただけだ。


 空中に響き渡る、パーンッ!と威勢のいい音。

 そして紙吹雪と、くるくるしたリボンがびょいーんと伸びる。


 それが槍を放とうとしていた魔人の一団に絡み、あるいはパーンッした勢いでふっ飛ばし、廻天将軍の軍勢が一気に減る。


『なん……だと……カアーッ』


「もったいぶって物を言っても語尾のカアーッで台無しになるな君は」


 俺はパチンコを構えて、廻天将軍にペーンっと撃った。

 廻天将軍、俺のパチンコを見てふん、と鼻を鳴らしたが、すぐに真顔になって大きく上昇する。

 パチンコを回避だとーっ!?


『ただならぬ気配を感じたカアーッ! あのままあそこに留まっていたら、我輩は危なかったカアーッ!?』


『将軍、こいつらは油断なりません! 一気に方を付けないと……』


 会話している間に、手すきの俺はジャイアントクラッカーをもう一丁作っているのである。

 そしてこちら戻ってきた廻天将軍目掛けて、パーンっと紐を引いた。


『カアーッ!?』


 クラッカーの勢いと紙吹雪とくるくるリボンを喰らい、廻天将軍はくるくる回りながら吹っ飛んでいった。


『廻天将軍だけに回転してますな』


「ベタなダジャレ!」


『初級編と言ったところですかな。ところでタマル様、これは倒したことに入るので?』


 ラムザーの問いに、俺はいつもの告知の音声を待つ。

 だが、それは聞こえてこなかった。


「こりゃどうやら、勝負はついてないな。なんか油断ならない相手っぽいから、もっともっと備えをしておきたいところだ。よし、素材を集めながら次の入り口を探すぞ!」


 廻天将軍との第一ラウンドは終了なのである。




▶DIYレシピ

 スーパー骨のベル

 ※骨三郎キャノンのキャノンは強そうに見えるからついているだけで、水鉄砲である。

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