第54話 挑めドラゴン! 突撃おしゃれチーム

 テーブルマウンテンにも湖があるらしい。

 ドラゴンがそこに入って、まったりしている。


 さっき遺跡ごと俺たちを焼き払おうとした的な感じだったのが、自分だけバカンス気分とはな。

 でもなんでいきなりブレスを放ったんだ?

 

「あそこの穴、ドラゴンがちょこちょこ覗いてたのかもね。それで私たちがいたから、イラッとしたのかも」


「ありうる」


 お気に入りのおもちゃ箱に、ゴッキーがたくさんいてわちゃわちゃしてた気分なんだろう。

 それで一気にぶっ壊してしまったと。


 気持ちは分からないでもない。

 だが、俺たちが死にかかったわけで、これはいかん。いかんなぁ~。


 もともと穏便に捕獲できればいいかなーという感じだったが、完全にやる気に火が付いてしまったのだ。

 スローライフに危険な怪物はいらぬ。

 なんとしても捕獲してやるしかない。


 そのためのドリームチームだ。

 何がドリームって、俺たちの服装を並べると悪夢以外の何物でもないからドリームチームなのだ。


 主に俺とフランクリンがバランスを崩しているな?


『!?』


 ドラゴンが俺たちに勘付いたようだ。

 さすがは強大な怪物。

 俺の忍び足もろくに通じはするまい。


 つまりそれは……。


「俺の忍び足がちょっと通じるということだ」


『タマル様ポジティブですなー』


『それでこそタマルさんでーす!』


「タマルがんばれー!」


『カタカタ!』


『ピピー!』


 仲間たちの声援を受け、俺はドラゴンの横合いに回った。

 その間、仲間たちがドラゴンの注意を引き付けるのだ。


 おっ、こっちに気を配ろうとしたドラゴンが、正面に釘付けになったな。


 奴の目の前には、俺たちが好き勝手に彩色したど派手な石の壁がずらりと9つくらい並んでいるのだ。

 そこには……俺たちの手書きでドラゴンが書いてある。

 その画力は小学校低学年に匹敵する……!!


 色使いはこの辺りで取れる限りの素材を塗料にDIYしたので、極彩色と言ってよかろう。

 どうだ、目が離せまい!!


 これほどガチャガチャとうるさい色彩が一箇所にまとまることなど、自然環境ではあまりありないのだ。

 さらに、これみよがしにオリハルコンを上に乗せて、後ろからスポットライトでギラギラ照らしている。


 時折、紙吹雪マシーンが猛烈に紙吹雪を放つ。

 壁から下がったモビールが、カラカラ言いながら回る。


 ははははは!

 目を離せまい!!


『ゴオオオオオオオッ!!』


 ドラゴンが咆哮をあげた。

 あれは威嚇の叫びである。

 めっちゃ動揺してる。


 何せ、この派手なのが後ろから押されてじりじりと近づいてくるのだ。

 目を離せまい。

 あっ、ついにブレスを吐いた。


 バカめーっ!

 それに必死で、俺がじゃぶじゃぶ走りながら接近してきても対応できまい!


 慌ててドラゴンがこっちを向こうとする。

 ブレスを吐きながらだと薙ぎ払うことになるのだが、あれだけの火力のブレスだ。

 ドラゴンも態勢が崩れつつある。


 そこで俺は、ピタッと動きを止めた。


『!?』


 ドラゴンが俺を見失う。

 やはりか……。

 虫取り網を構えながら忍び足をしていると、動きを止めた瞬間相手からは完全に認識できなくなるのだ。


 その隙に、壁でブレスを防ぎきった仲間たちが接近してくる。

 ポタルがごきげんなサンバを大音量で掛け始めたから、もう堪らんだろう。


 ドラゴンが目を血走らせながら、もう一発ブレスを吐いた。

 俺が忍び足で動き始める。

 ドラゴンがビクッとする。


 こっちを向いても、俺の動きは止まっている。

 このギリースーツ、特に意味はないな。

 いいんだ。雰囲気だから。


 そして既にここは、ドラゴンに密着するほどの距離だった。

 そこに俺がいても、ドラゴンは止まった俺を認識できないのである。


 さらばドラゴン!

 こんにちは、平和で安全なスローライフ!!


 ピョインッ!

 無慈悲な音が鳴り響いた。


 一瞬前までそこにいた、テーブルマウンテンの支配者の姿は既にない。

 俺のアイテムボックスに、可愛いアイコンになって鎮座しているのだ。


 ちなみに連発されたドラゴンブレスで、湖の水は完全に蒸発していた。

 このあたりの地形も隕石でも落ちた跡みたいにボッコボコになっているぞ。


 だが、俺たちは彩色洋品店の服を纏っていたのでノーダメージだ。

 骨たちも頭に旗を立てていたから無事である。


「取ったどー!!」


 俺が叫ぶと、仲間たちがワーッと沸いた。


『ウグワーッ! エルダードラゴンを捕獲しました! 4000ptゲット!』


「ポイントすげえ!!」


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYレシピ

 ※ドラゴン装備

 素材:ドラゴンの鱗+ドラゴンの爪+ドラゴンの尻尾

 ※ドラゴンの鍋

 素材:ドラゴンの鱗+ドラゴンの骨

 ※ドラゴンベッド

 素材:ドラゴンの骨+ドラゴンの角

 ※ドラゴンのじゅうたん

 素材:ドラゴンの皮


 DIYお料理レシピ

 ※ドラゴン強壮剤

 素材:ドラゴンの血


「たくさん生まれたなあ!」


 しかもこれは、博物館に寄付する前である。

 どれもこれも、伝説的なアイテムっぽい。

 これは作るのが楽しみだ。


 気がつくと、周囲の森からオウルベアたちが姿を表していた。

 彼らは俺たち囲むと、ゆっくりと跪いた。


 俺を拝んでいる……!?


『ドラゴンをも下したタマル様は、このデッドランドマウンテンにおいて最強だと認められたのでしょうなあ』


『オー! 獣にさえ崇められるゴッドな存在……! タマルさんブラボーでーす!』


「やったねタマル! ねえねえ、どんなレシピが思いついたの?」


「うむ、将来的に使えそうな強壮剤とか……いや、なんでもない」


 とにかく、これでミッションを一つ達成である!



▶DIYレシピ

 ドラゴン装備

 ドラゴンの鍋

 ドラゴンベッド

 ドラゴンのじゅうたん


 DIYお料理レシピ

 ドラゴン強壮剤

 

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