第38話 あったかくなってきたな!

 エーテルバスターキャノンのエネルギー充填が満タンだ!

 一体何を撃ってるんだろうなーという疑問はあるが、そういうのは深く考えないのが俺である。

 気軽にスッと引き金を引いた。


 すると、またとんでもない反動でぶっ飛ぶ俺。

 銃口から迸るのは黒と金色の螺旋ビーム。


 それは機動城塞に命中するとジュッと蒸発させ『ピガガガガー!!』ついでに周りの丘もジュッと蒸発させ、空に向かって伸びていって……。

 その辺り一帯の雲を吹き飛ばして一面の青空に変えた。


「おー! 明るくなったな。それにあったかくなってきたな!」


「そうだねー! 馬車の周りの雪も全部溶けちゃった」


『相変わらずばかげた威力ですなあ。これ、スローライフなんですかな?』


「俺が思うに、開拓が難しい森とかをこいつで蒸発させて、やりやすくするのが本来の目的なのではないか。副次的に侵略者を撃退できるだけで」


『なるほど、言われてみれば……! 土壌はむき出しになっておりますが、作物などを植えられそうですな』


「だろ? なぜか地面を溶かしたりしないんだよ。つまりこいつはスローライフのために作られたキャノンなんだ」


 またエネルギーが空っぽになったから、しばらく放置だぞ。

 これを見ていたフランクリンが、雪だるまボディーをぶるんぶるん震わせている。


「どうしたフランクリン。溶けちゃいそうか」


『確かに溶けそうですが! お気付きでないのですか!? そのキャノンは周囲の魔力を吸い付くして攻撃に変えたのです! おー、テリブルウェポン!』


「あ、吸い尽くすからゲージが空っぽになって、また回復してきた頃合いに撃てるようになるのか。よくできてるなあ」


『あまり使いすぎると魔力の荒野になりますよ!』


「そうなると何が困るんだ?」


『魔人候や神々が力を発揮しなくなります。ミーは元神の仔ですが、雪だるまになったのでセーフ。ある程度力が強い存在が弱くなるのです』


「いいことではないだろうか……?」


『オー……言われてみれば……』


 フランクリンが首をひねった。

 頭がコロンと落ちそうだ。

 ポタルが走ってきて、それを支えた。


「きゃーつめたあい」


「ムッ」


 俺も頭を支えてもらおうと、大きく首をひねる。


『柔軟運動ですかな? エーテルバスターキャノンを戻しておきますぞー』


「おう」


「タマル首が凝っちゃった? 私もなんだよねえ」


 ポタルが横に並んで首をひねりだした。

 違う、そうじゃない。


『さて、ミーはここにいては溶けてしまうので……。氷の家具を出してくださーい。常冬の土地がスプリングカムになってしまいました』


「あ、そうか。氷のベッドなんかどう使おうと思ってたら、フランクリンの寝床にできるんだな」


 ふわふわベッド、二段ベッドの横に氷のベッドも設置した。

 フランクリンがそこに飛び込む。


『オー! ひんやり! 生き返ります! まあ、ミーの本体はもう死んでいるんですがね!』


 HAHAHAHAHA、と笑うフランクリンであった。


 道が開かれた退廃帝領。

 俺たちは無人の荒野を行くがごとしである。

 周辺にいたっぽい怪物は本当に一掃されたので、文字通り無人の荒野かもしれない。


「あ、機動城塞の欠片が落ちてる」


『カタカタ』


 気を利かせて、骨次郎が拾いに行ってくれた。

 回収してもらった欠片を手にすると……。


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYレシピ

 ※ミニミニ機動城塞

 素材:機動城塞の欠片


「面白そうなのができたぞ。どれどれ」


 トンカントンカン作り始める。

 すると、俺のヒザ下くらいの大きさをした機動城塞が完成した。


『ピピー』


 やつは馬車の中をトコトコ歩き始める。

 そして、頭から魔力の砲弾をポンポンぶっぱなす。


 魔力の砲弾に触れた馬車の中の汚れやゴミが、ピチューンという音ともに消滅する。


「お掃除ロボになってしまった」


「かわいいー! ちょうだい、これ!」


「よーし、ポタルにあげちゃうぞー」


「ありがとう! タマルって気前いいから大好き!」


 ポタルがギュッとハグしてきたのである。

 よし、報酬はいただいたぞ。


『タマル様はポタルに甘いですなあ』


「おう。俺は甘いぞ……」


『我とフランクリンにも甘いので、割りとそこは一貫してますな』


「仲間にはかなり甘いかも知れん」


 ポタルはミニ機動城塞を、ポルポルと名付けたようだ。

 ハハハ、ついに俺たちタマル一味にも可愛いペットが誕生したな。


『ウグワーッ! 住民が増えました! 500ptゲットです!』


「おおっ、ポルポルが住民認定された。だがフランクリンはまだか……」


 雪だるまを見ると、やつは氷のベッドの上に横たわり爆睡している。

 あいつはまだ、仲間にするイベントが終わってないとかそういうやつだろうなあ。


 向こうではポタルに突かれて、ポルポルが『ピピー』と鳴りながらよろけている。

 住民として認められたということは、俺の制作物なのに早速意思があるのか、ポルポルよ。


『カタカタ』


「あ、そうか。骨次郎も最初から意思みたいなものがあったもんな」


『カタカタ』


「えっ、自分の弟分みたいなものだって? そうかそうか! 可愛がってやってくれよ!」


 家族が増えた気分でワッハッハと笑っていたら、いつの間にか退廃帝の居城が見えてきた。

 そこはバカでかいクレーターになっていて、中心に歪な形の大きな城が存在していたのである。


 これより、退廃帝捕獲の開始なのである。

 なお、復讐者たるフランクリンはまだ熟睡していた。


▶DIYレシピ

 ミニミニ機動城塞


 UGWポイント

 500pt


 住人

 ミニミニ機動城塞のポルポル

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る