第37話 遺跡探索で素材を集めるのだ
そこは神の仔の神殿だったという遺跡。
早速馬車を止めて、もこもこな俺たち三人とフランクリンで外に出てきた。
「ははあ、雰囲気があるなあ」
ここだけは不思議な力に守られているのか、あの殺意に満ちた雪の結晶が飛び込んでこない。
安全っぽいところだな。
パルテノン神殿が半分壊れたようなものがあって、周りにはへし折れた柱が林立している。
で、どういうわけだか異常にアップダウンが多くて、谷があったり朽ちかけた橋があったりする。
「これはなんかTPS的なアクションゲームのステージなのでは?」
「またタマルが不思議なことを言ってるよ」
『案外説明を求めると教えてくれますぞ』
俺への理解度が深まってきている。
TPSというのは主役キャラの背中を見つつ操作して、いろいろなステージで武器を使って戦うゲームな。
やり込んでいた時期もあったが、俺はもっぱらスローライフゲームばかり遊んでいたな。癒やされるんだもの。
『さあ、この遺跡の試練を抜けて貴重なアイテムと名誉にレッツトライ!』
「やらないよ!?」
『ワッツ!? ホワーイ!?』
フランクリンが理解できない、と言うジェスチャーをした。
「いいかフランクリン。何か勘違いしているようだが、俺たちは魔人候に抗う正義の戦士などではない……」
『な、なんですって!』
「俺たちは、ゆったり豊かなスローライフができればそれでいいんだ。たまたまそれに挑戦する舞台が魔人候領なだけだ」
『こんな世界でスローライフに挑戦するんですか……!? アンビリーバボー……頭おかしい』
「そんなことはない。なせばなる」
ということで、手近な辺りから素材集めだ。
退廃帝の情報を集める意味もあるしな。
『タマル様、こっちの壁に文字が刻まれてますぞ。退廃帝への恨みみたいなものが綴られております!』
「ほうほう、おお、相変わらず長い!」
『三行にまとめますかな?』
「やってみるとするか」
まとめた。
・神殿は神の意志を広める場所として存在していたが、退廃帝に滅ぼされた。
・退廃帝はこの地の王が狂い、兄弟神に魂を売り渡した存在である。
・退廃帝は死した妃に捧げるため、各地から財宝を集めて捧げている。そんなことのために我らを滅ぼしたのか。
「みたいな」
『割りと普通な感じですな』
「奥さん死んでるの?」
「死んでるらしい」
「へえー。その人にあげるためにあちこちで暴れてるってこと? 不思議ねえ」
ハーピーの価値観だと、死んだらそのまま終わりらしい。
輪廻転生みたいな考えがあって、死んだ姉妹は卵に宿って帰ってくるんだと。
『我ら魔人は死ねば全て魔人候の力に戻っていくという考えですな』
「魔人候に作られた命だもんな」
『そうですなあ。我はタマル様に忠誠を誓って自由の身になれましたが。本当に自由っぽい辺りがタマル様が魔人候ではない証ですな。一体なんなのですかな?』
「俺も分からん……」
お喋りしながら、神殿の中を散策する。
奥側に広がっている冒険用のフィールドみたいなところには、とりあえず今は繰り出さないぞ。
「中庭にいい匂いのする葉っぱが生えてるよ。雪が入ってこないから育ったんだねえ」
「ほう、葉っぱが……。どれどれ」
試しにちょっと摘んでみた。
『茶葉を手に入れた!』
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYお料理レシピ
※紅茶
素材:茶葉
「お茶が生まれた! これは、この間入手したお洒落なティーセットの出番なようだな。お茶飲む?」
『いただきますぞ』
「飲むー」
『オー、なんというマイペースな方々!』
フランクリンが器用に肩をすくめながら戻ってきた。
そして、茶を淹れている間に神殿で見つけた素材などを並べてもらうのである。
青い石材が幾つか。
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYレシピ
※大理石のお風呂
素材:青い石×5
「お風呂が増えるね。今度は横にかなり広いぞこれ」
「みんなで入れるねえ」
「みんなで!?」
『タマル様、手元が震えてますぞ!』
あとは乾いた木材に、ボロ布。
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYレシピ
※たいまつ
素材:乾いた木材+布
「今になってたいまつかあ。使うシーンが無さそう」
『そうでもありませんよ。たいまつは明かりを取った上で直接暖もとれますからね。ミーは溶けますが』
「なーるほど!」
念のため、たいまつはアイテムボックスに入れておくことにしよう。
こういうところで見つかるアイテムは、後々の伏線になってることが多いのだ。
「それにしても、退屈なところだねえ。雪とか風がひどくて空も飛べないし……。空を飛んでる怪物はお陰でほとんどいないみたいだけど」
「そうだなあ。寒いし曇ってるしで、テンション低くなるよな」
『我らはまだ馬車の中で暖を取れますからなあ』
神殿で一休みした後、動き出すことにする。
後で見つけた神殿内の書き込みが、『退廃帝の軍勢は北からやって来た』とあったので、北に行く。
『ダジャレですな』
「ダジャレだな」
「なんで二人とも嬉しそうなの」
ダジャレを指摘しても否定されないからですぞ。
こうして、北へ向かってのんびりと進んでいく。
ちなみに紅茶は好評だった。
「いい香りだけど味がしないねえ。タマルと一緒にいると、美味しいものに慣れちゃうからなあ」
確かに。
お料理レシピは美味いものしか完成しないからな。
『我はこのままでもいいですな。大人の味というやつですぞ。ポタルはまだまだお子様ですな』
「何よー」
「ラムザーがポタルにぽかぽかされてる。羨ましい……!」
『溶けるう』
「フランクリン、お前は飲むな!」
山間を抜け、毛皮を纏った賊の襲撃を、マタギを呼んで追っ払い。
深い谷を見つけたので見晴らしを楽しみ、夜になったら周りに石柱とか大理石の風呂とかを作って囲み、安全を確保した。
やがて、遠くに見えてくるものがある。
巨大な尖塔だ。
それが、俺たちの接近に気づいたのか、ぐらぐらと動き出した。
「なんだなんだ」
尖塔が震えながら、ついには立ち上がる。
尖塔には四本の足が生えていたのだ。
『ピーガガガガーッ』
「なんだあれー!」
『オー、退廃帝の機動城塞ですね。自ら動いて近づくものを迎撃します。魔力の砲弾が撃ち込まれてきますよ』
フランクリンの言葉通り、機動城塞は空に向けて輝く魔力の弾みたいなものを無数に放った。
それが雨になって降り注いでくる。
「おいおいおい、これは洒落にならん!」
馬車の近くに着弾して、ホネノサンダーとホネノライジングがびっくりした。
うちの大切な馬になんてことを!
「タマル! エーテルバスターキャノンが満タンだよー!」
ポタルからナイスな報告だ。
よしよし、周囲はもう雪とかに覆われて何もないのだ。
一面の荒れ地になっても問題なかろう!
▶DIYレシピ
大理石のお風呂
たいまつ
▶DIYお料理レシピ
紅茶
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