第45話牛乳料理2

私が与一君にパンを渡すと渋々パンをちぎってくれた。


「何でせっかく手間暇かけて作ったのをちぎるんだよ。」


「それは後のお楽しみ!」


きっと与一君驚くだろうな。

さてと、スープの続きをやっていこうかな。

鍋に牛乳を入れ、沸騰する前に味噌を溶かせば完成。

小皿に一口分をのせて飲んでみる。


「うん、美味しい!」


パンをちぎりながらこちらをじっと見ている子が一人…。

いや…嫌がってたしな…一応本人の意見を聞いてみる。


「味見してみる?」


「…ちょっとだけ。」


少し悩んでいたみたいだけど飲んでみるみたい。

小皿に一口分をのせて与一君に渡す。

私は飲むところを静かに見守った。


ふーっ、ふーっと息を吹きかけ小皿に口を付けゴクリと喉が鳴る。


「……美味しい…。」


与一君は悔しそうに牛乳の美味しさを認めた。

伝わったか!牛乳の美味しさが!

味見を終わらせて二品目の牛乳料理を作る。


「次はクリームコロッケを作ります!」


「く、くりーむ、こ、ころっけ?」


与一君にとってクリームコロッケが言いにくいらしくつっかえながら名前を言う。


「うんそう。外はサクっで中はとろ~りだよ。与一君も気に入ると思う。」


「っ早く作るぞ。」


「では、最初にホワイトソースっていう中の部分を作ります。鍋に牛乳と塩を入れ沸騰しそうになったら饂飩粉を入れてよく混ぜます。」


パンをちぎり終わった与一君に混ぜて貰う事にした。

真剣な表情で混ぜている。


「鍋の底が見えるぐらいになったら冷やします。井戸水で鍋ごと冷やそうか。」


「温めたのに冷やすのか?」


「この後、油で揚げるからね。固めないといけいないんだよ。」


大きい鍋を持って行きそこに水を入れ、ホワイトソースが入った小鍋ごと大きな鍋に入れる。

今の時期の井戸水は手がキーンとなるぐらい冷たいので直ぐに固まるだろう。


「冷やしている間に、それぞれの皿に卵、饂飩粉、そして与一君が一生懸命ちぎってくれたパン粉を入れます。あっ、卵はしっかり混ぜてね。」


「わかった。」


与一君が用意してくれている間に私はホワイトソースの固まり具合を見て来る。

鍋を斜めにして固まっている事を確認して、今度はクリームコロッケの形にしていく。


「ホワイトソースが固まったのでこれを俵型にしていきます。溶けやすいから早めに作ります。」


「うわっ、変な感触。」


二人で悪戦苦闘しながら何とか溶ける前に形にすることが出来た。

でもちょっと溶けかかっていたので井戸水でまた冷やし固める。

揚げるようの油を準備し終わった頃にはしっかり固まっていた。


「上げる前に饂飩粉を全体にまぶして、溶き卵、パン粉の順番でつけるんだけど、パン粉はいっぱい付くようにして欲しいな。」


「何で?」


えっと…確か…。


「爆発するから?」


だったような気がする。


「ばっ爆発?!この料理爆発すんのかよ。」


ちょっとオーバーリアクションでは。


「ヘタすればね。でも、パン粉をしっかり付ければ大丈夫。」


「パン粉…凄いなぁ。」


与一君はパン粉をまじまじ見て感心している。

爆発とかに反応する所とか男の子なんだなぁと感じてしまった。


「私が油に入れるから、与一君はパン粉とかを付けるのをお願い。」


「うん。パン粉ってこのぐらい?」


「もう少し多目で。……そう、そのぐらい。」


油にそっと入れ、きつね色になるまで揚げる。

この時のポイントはあまり箸で触らない事!わかっているけど触りたくなってしまう。


「あっ、爆発しちゃった。ごめん与一君。」


「えっ!爆発っ!!…これが……ばくはつ。なんか違う…。」


クリームが衣から漏れてしまうのを見て何だかショックを受けたような、呆れたような顔をして黙々と作業を進める与一君であった。






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