第53話 満足さ!?
いや〜本当──大変だった……。
シャーリーさんが起きたら起きたで寝惚けていたようで「おっぱい吸いませんか?」とか言ってきたから焦った……。
「いや、赤ちゃんプレイはちょっと……」と返すとシャーリーさんは頬を赤らめて「す、すいません。どうやらやらしい夢を見ていたようです。忘れて下さい」と言われた。
聖女であるシャーリーさんでもエッチな夢を見るのか……まぁ、人間だもんね! でも僕の理性が勝てて良かった。
さぁ、気分を入れ替えよう!
僕は今日──魔法使いになるッ!
別に前世を通して童貞をこじらせたからなれるわけじゃない!
約束通り教えてもらうのだ!
って事で僕とフィア、レラは今、シャーリーさんとユラさんの講義を受けている。
シャーリーさん達はもうすぐ帰ると聞いている。
僕達の訓練や
とりあえず、今は実技はよッ! と魔法を使えるかもしれないとわくわくしている!
基本的な事は前の講義や今の説明でわかった!
後はやるだけだッ!
ここから僕の覇道が始まるんだッ!
剣が使えなくても魔法が使えるなら戦術の幅が広がるからね!
そんな事を考えていると、シャーリーさんが桶に入った水を出して話し出す。
「──ではまず、この水に手を当てて下さい。中の水は特殊な魔力水です。これで属性を見極めます。判断方法は──」
火は水の温度が上がる。
風は波紋が起こる。
土は不純物が発生する。
水は水量が増える。
光は輝き、闇は黒く染まる。
──が基本属性らしい。氷や雷などの珍しい属性は今回割合された。他にも固有魔法とかあるらしいよ!
ただ、この説明を聞いた時思った……なんかこれ前世の漫画で似たようなのがあったぞ? と。
まぁ、この際そんな事はどうでもいい!
今は魔法の属性を調べるのが先だッ!
「フィアはやった事があるのでレラちゃんかロイド君のどちらからやりますか?」
「私がするわッ!」
レラに先越されたか!?
レラは水鏡に手をそっと当てる──
すると波紋が広がり眩しく光出す──
「レラちゃんは光と風ですね。それと──火の素質もありますね……3属性は珍しいですよ? 魔術師にもなれそうですね」
「やったぁぁっ!」
喜ぶレラ。フィアも喜んでいるが──少し悲しそうな顔だ。
3属性以上は中々いないと聞いている。これは凄い事だろう。
確かフィアは光のみだったはずだ……『回復魔法』や『結界魔法』は特殊スキル扱いのはず。フィアも実質3属性みたいなものだけど、やはり基本属性が複数というのは羨ましいのかもしれない。
「さぁ、ロイド君どうぞ」
おっと、僕の番だな。
「あっ、はい」
僕は手を当てる──
こ、これは!?
……何も起こらない?
つまり──
才能無し?
ユラさんを見ると首を横に振っていた。
他の3人は──
「「「…………」」」
無言やめてよね!
この結果に1番ショック受けてるの僕はなんだからね!
「ちなみにこれって……」
僕はシャーリーさんに念の為に聞いてみる。もしかしたら全属性だったら何も起こらないかもしれないじゃない?!
「……ロイド君には盾があるじゃないですか!」
シャーリーさんの無慈悲な言葉が僕に突き刺さる。
……やはり魔法の才能は無いのか……。
「……ははっ」
僕は乾いた笑いが出る。
正直──
僕は前世の記憶のある転生者だ。きっと心のどこかで全属性の適性があると思ってたんだ。
周りも凄い人しかいない──だからこそ僕も凄いんだ!
──そう思い込んでいた。なんせ転生者なんだから……。
でも、蓋を開けてみたら『開花の儀』では戦闘系スキルは授けられず、母さん譲りの才能はなかった。
でも父さん譲りの才能はあった。
でも、盾使いとしての才能はアイギスがなかったら敵も倒せないし、平凡だっただろう……。
だからこそ自分自身の力を磨きたい──そう思っていたからこそ母さんや師匠の訓練も耐えれた……。
けどさ……いくら何でもこれはないだろ?
適正無しとかどこの追放系ラノベの主人公だよ!?
この使い放題な魔力をどうしてくれんのさ!?
やはり、僕には新人の『アイギス』と──マブダチの『感度操作』しかないのか……。
いや、2人に失礼だな。
僕は前に決めたじゃないか!
この二つで最強を目指すって!
……でも、やっぱり凹むぜ……。
魔法──使ってみたかったな……。
「……魔法って……これで適正が無くても覚える事は出来るんですか?」
「ロイド君……」
今までかつてここまで凹んだ姿を見せた事がないせいか、シャーリーさんは言い淀む。
「シャーリー様、私から言います。ロイド君、これは一般的な方法ですが、実はこれに反応が無かった人でも過去に魔法を使えている人はいます」
「──本当ですかッ!?」
一条の希望が見えた気がした。
僕はユラさんを見詰める。
「は、はい……ですが、方法はわかっていません……」
僕の目力に後退りするユラさん。
「そうですか……でも可能性があるならいいです……でも使ってみたかったな……魔法……」
ユラさんが近づいて耳元に顔を寄せる。
「ロイド君……大丈夫です──」
ユラさんが小声で秘策を教えてくれる──
「なるほどッ! やってみますッ!」
僕はユラさんからアドバイスを受けた。さすがは師匠の奥さんだッ! 今の僕には女神様のように見えるよッ!
◇◇◇
数日後──
僕は手の平に火を出していた。
「やりましたねッ!」
「ユラさんッ! ありがとうございますッ!」
「えぇ、こんなに早く使えるなんて思いませんでしたよ!」
「これも全てはユラさんのお陰です! お陰で『生活魔法』が使えるようになりましたッ!」
そう、これは『生活魔法』の『着火』だ。
一応魔法は使えたッ!
僕の夢は叶ったのだッ!
うん、そういう事にしておこうッ!
良いんだ……いつか『剣術』みたいに才能が無くても使える日がくるさッ! 可能性はゼロじゃないって言ってたもん!
だから今は『生活魔法』で満足さッ!
『着火』で喜ぶ僕の隣でレラは大きな『火球』飛ばしてるけど満足さッ!
全員の優しい眼差しなんか気にしないぜッ!
そう! 僕には盾と『感度操作』があるじゃないか! 大事な事だから何度でも言うよ!?
……はぁ……盾の練習しよ……。
僕に得意げに魔法撃ってくる奴が学園にいたら師匠みたいに反射させてやるッ!
練習だッ!
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