第45話 嘘でしょ!?
僕は目を覚ますとそこは見慣れた部屋の天井だった。
「ここは──家? っていうか体めっちゃ痛い!? 動けない……」
傷は無い。でも体中が痛くて動けないからちゃんと確認は出来ないけど、ここは間違いなく僕の部屋だ。
窓を見ると暗い……月の位置から真夜中だろう。
僕がここで寝ているという事は──
既に
じゃなきゃ家どころか街が滅んでいるはずだ。こんな風に寝れるわけがない。
皆──無事だろうか?
まさか僕だけが生き残ってないよね?
急に不安が押し寄せて来る。
ダメだ、冷静になれ──そうだ! 『気配察知』を使えば──
その時、ふと目の前に人影が映る──
「大丈夫……皆……生きてる……」
1番知りたい事を教えてくれる。
その人は──エレノアさんだ。
「エレノアさん……本当ですか?」
「本当……これで貴方は辛い運命から……解放された……」
「辛い運命?」
「──見た方が早い……」
エレノアさんは人差し指を僕の額に当てると、テレビを見ているような感じで映像が流れていく──
レラとフィアは事件の後に別れる──いや、僕が2人を置いて旅立ったのか?
母さん達を失った僕は憎悪を糧に強くなる為に茨の道を進んでいく。
そして、成長した僕は今回仕組んだ奴らと国を滅ぼし──
世界を敵に回す──
そこに味方は誰もいない。僕1人だ。
時が経ち──
成長したレラとフィアは仲間を引き連れて僕の前に再び現れる。
僕を殺しにだ──
その後の映像は見るに耐えなかった。
見ているだけで吐きそうになるぐらい気持ち悪くなる映像だ。胸も痛い。
所々端折られているけど、流れを見るに間違っていないだろう。
おそらく夢の通りになっていたらこうなったであろう僕の未来の一つなのかもしれない。
きっと、エレノアさんはこうならないように僕に知らせてくれたんだろうと咄嗟に理解した。
「──僕の未来は変わりましたか?」
「えぇ、今はこれ──」
また映像が流れてきた。先程と違い音声つきで……。
映像は少し僕が成長し──ありとあらゆる女性を侍らせている姿から始まる──
うん、学園でハーレム作ってるなッ!
ひたすら艶っぽい声が聞こえてくる……決してエロい事はしていないんだが大先生の力のお陰だろう。
ここまでは良かった。将来の僕はモテるんだな! と軽く見ていた。
しかし次の映像を見た時固まった。
老若男女問わず言い寄ってきている映像だった。
特に老婆と男に関しては鬼気迫る感じで鳥肌が立った。
しかもこの人達はとても強く──束になって襲って来る。僕が1人の時に!
そして──泣き叫んだ僕が喰われた映像で終わりを迎える。
ナニがとはあえて言わない。
何より1番の問題はこの時の僕はまだ大人じゃなかった……つまり近い未来の映像だろうという事が予想される。
僕は顔面蒼白になっている。
「……嘘でしょ?」
「…………」
「黙らないでくれませんかねぇ!?」
「未来は──絶対じゃない……」
「これも回避出来ると?」
コクリと頷くエレノアさん。
うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ──
絶対回避してやるッ!
ちなみに何でこんな事になったんだよ!?
原因がわからないと回避も出来ないじゃないか!
「エレノアさん! これの原因は!?」
「……ユニークスキル……」
思い当たる節は一つしかない。
『感度操作』──大先生の『才能開花・促進』と『女性限定:若返り・魅力増進』が原因?!
つまり、この効果が公になってしまって屈強な男や昔強者だった老婆が襲って来たという事なのか!?
絶対、誰にも言わねぇからなッ!
これからはひっそりと生きていく事にするッ!
目立たないぞ! 僕は学園じゃ陰から助ける縁の下の力持ちになるぞッ!
そう固く誓った僕は『感度操作』をそっと『隠蔽』する。
なんかヤバいのが一瞬見えたけど、また今度しっかり見よう……。
とりあえず──今回の激闘で僕の力は使い果たされたのだ! うん、そういう事にしよう!
もし、使用したとしても信頼のおける人だけだッ!
これは絶対だッ!
「……とりあえず、未来は変えるように動きます……」
「うん……そうした方が良い……」
憐れみの視線だな……。
やっぱり今回の予知夢はエレノアさんが見せてくれたんだろう。
どっちの未来も見方によってはバッドエンドだけど……。
「そういえば、エレノアさんはどうして今回こうやって教えてくれたんですか?」
疑問に思ったので聞いてみる。
「……ん、私は元々微精霊として生まれて──そのまま消える運命だった。貴方が魔力を分けてくれたお陰で上位精霊にまで成長する事が出来た……だからその恩を返したかった……」
なるほど? つまり命の恩人なのね! 納得!
というか、あの時【好感度】使って魔力を譲渡してなかったら最初の夢通りになったかもしれないのか……どこでどうなるかわからないものだな……。
上位精霊って魔力貰っただけでなれるものなのか……。
「そうなんですね! エレノアさんがいなかったら全滅してたかもしれないので助かりました! 本当にありがとうございます!」
「良い……今日は報酬を貰いに来た……」
って事は──魔力ですよね! わかってた!
「手──握ってもらえます? 動けないんで……」
僕は『魔素還元』を使う──
そして『魔力譲渡』をしようと魔力を流し始めると激痛が全身を襲う。
な、んだこれ……痛すぎて……上手く魔力を操作出来ない? 傷は治療されているはずなのに……。
魔力がこのままじゃ渡せないな……。
「魔力は動かしちゃダメ……今の貴方は魔力回路がずたずたになっている……私が吸い取る──」
もしかして『アイギス』さんの使いすぎかな? ……今後は気をつけよう。
魔力回路が損傷してると激痛が走るのか……吸われるのは大丈夫なのかな?
優しく手を握ってくれるエレノアさんから魔力が移動していく──
痛くないな……。
って──吸いすぎじゃね!?
これ──微精霊の時と同じじゃ──
意識が朦朧とする中、エレノアさんは艶っぽい声を出し、我慢しながら魔力を吸い取る姿が目に入る──
僕の状態を察して抱きつかないでくれているのかもしれない。
今は触れられるだけで激痛が襲うからありがたい。
ただ、我慢する顔が色っぽすぎて見てるだけというのは色々と辛い……。
相棒が『呼んだ?』と僕に語りかけてくるが、ひたすら「呼んでない!」と言い聞かして我慢している!
「……んん、あぁ、うぅん──これだけあれば精霊王をぶっ飛ばせる……また来る……」
「え?」
しばらくして上手く魔力が還元されなくなっていくと──エレノアさんは魔力を吸い取るのを止めて、そんな言葉を呟く。
エレノアさんは今まで見た誰よりも魔力を保有しているのがわかるぐらい満ち溢れていた。とても肌がツヤツヤして見える。
「これで──足手まといにならない……またね──私の主──」
キスを額にして消えるエレノアさん。
ポカンとしながら言われた言葉を思い出す──
なんか精霊王ぶっ飛ばすとか聞こえてきたんですけど!?
……まぁ、いいか……エレノアさんにも何か目的があるのかもしれないし。
会った事ないけど、精霊王さんごめんね?
僕は心の中で合掌する。
そういえば──微精霊の時みたいに空気中の魔素が消えたな……まぁ、今はどうでもいいや……。
さぁて、寝るか──
そう思っていると扉が勢いよく開かれた。
というか破壊されたんですけど!?
「ロイッ! 無事!? 魔素が無くなったから何かあったかと──無事ならいいわ! 3日も寝てたから心配したわよ!」
おそらく僕の部屋を中心に魔素がなくなったから心配してくれたのだろう。
って──
「……え? 3日も寝てたの? ……というか夜中だよ? 静かに──!?」
静かにしないとダメだよ? そう言おうとする前に母さんから強烈なハグが僕を襲う。
嗚咽を堪えている事から、大分心配させてしまったようだ。そりゃー3日も起きなかったから心配するよな……。
ただ、僕は全身の激痛で耐えるのに必死だ!
よく見ればフィア、レラ、姉さん、シャーリーさん、師匠、ユラさん、リリアさんが安心したようにこちらを涙ぐみながら見ていた。
母さんが離れると次々にハグの嵐になって、僕は激痛に耐えれなくなり──シャーリーさんとフィアの2人がかりで回復してもらった。
魔力回路の回復は時間がかかるそうだ。しばらくは安静で治療していくと言われた。
まぁ、皆が無事で本当良かった──
今回はチートのアイギスさんがなかったり、エレノアさんがいなかったら最悪な結果になったかもしれない。もっと地力を鍛えて、盾が上手く使えるようにならないとダメだな……。
じゃないと老婆や男共に襲われたら対処が出来ないからね……仲間だけじゃなくて自分も守らないとね!
絶対──回避してやる。
感度──
そして盾──
これらを駆使して
◇◇◇
数日後──
僕の治療が終了すると──
母さん、シャーリーさん、姉さん、レラ、フィア、リリアさんから『もう、耐えれない』と言われてマッサージを所望される。
そして、ひたすら『艶っぽい声』が家の中に響き渡った──
艶っぽい声も十人十色だとよくわかった日になった……。
皆どれだけ我慢してたんだよ!?
でも──たくさん心配かけたからサービスしちゃったよ!
皆満足そうにしていたし良かった良かった!
その時にちゃんと──「マッサージはこのメンバーにしかしないから誰にも教えたらダメだよ? 教えたら二度としないからね!」──と言っておいた!
皆強く頷いていた事から約束は守ってくれるはず!
あの未来を回避するには、こういう事から始めないとね!
さぁ──
今日も頑張るぞッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます