第38話 実はこんな事があったんだ!?
「さぁ、早く行かないと──」
直ぐに向かおうとした時に
ただ、呪われてるらしいから触りたくない。さっさと『アイテムボックス』スキル取っておけば良かったな……。
誰かが触って同じような状態にならないとも限らない。
そこで僕はたまたま落ちている紐を発見したので結んで運ぼうと思いついた!
そして、触らないように結んでいると──
『力が欲しいか?』
と、どこぞの悪魔の囁きが聞こえてきたので──
「いや、入りません」
と即答した。こういうのってろくな事が無いのがお約束だと思うんだよね。
紐で結び終わったので歩き出そうと引きずると──
『痛いッ!』
悪魔の声って女性なんだなーって思いながらスルーした。
「…………」
そして僕は無視して走り出す──
『痛いと言っておろうがッ!』
……頭に直接聞こえてくるからとても煩い……。
刃をへし折るか……そうだな、こんな危険な魔剣放っておけないし。
「【
盾を回転させていく──
とっとへし折って進もう──
『ちょ、ちょっと待てぇいッ! 妾をへし折るのか?! 乙女の妾を!?』
「……いや、お前剣じゃん……どこに乙女の要素があるのさ?」
『声ッ!』
確かに女性の声だけど……。
「いや、お前魂とか食う魔剣だし──へし折るよ」
『待てぇいッ! 妾は魂なんぞ食っておらんわ!』
……確かに食ってたら魂が解放されるなんて事はないよな……なら、こいつって何なんだ?
意志を持つ魔剣とかタチが悪い気がするんだけど……。
「……でも持ち主を呪うんでしょ?」
『呪われておるからのう……』
ならやっぱり廃棄処分だろ……。
「…………」
無言で回転させている盾を近づけていく。
『待てと言っておろうがッ! 壊さずともお主の腕輪に妾を入れる事が可能だぞ? それあれじゃろ? 同期の『アイギス』じゃろ?』
「えっ、マジで?! ってか、これ名前あったのか!?」
今まで魔力で盾を出せるぐらいの認識だったから全く調べてなかった……。
同期って何だよ!?
『鑑定』スキルを使用する。
【アイギス】:古代に異世界人のオタクにより作られた盾の魔道具。魔力の量により、数、盾の形状、強度の調整が可能。『アイテムボックス』スキルが付与されており、更にその中にあるスキル効果のある物のスキルをスキルスロットに付ける事が可能。スキルスロットは5個まで装着可能。同じ作者である『田中太郎』により
……マジか……何だこのとんでもチートな盾は……。
もっと早くに調べておけば良かった……でも、これ前世の記憶がなかったら調べてもほとんどの人がわからないだろ……。
同じ作者で同時期に作られてるから同期なのね……太郎さん凄いね……きっと日本人だろうな……。
ついでにこれも調べておくか……。
【
おっふ……やっぱヤバい奴だわ……。
「えっと、凄い助かるわ! ありがとね! って事でこの中にお入り──『ちょっと待たんかぁぁッ!』──」
とりあえずお礼を言いながら収納する事にした。叫び声は聞かなかった事にして腕輪を近付けると
うん、凄く便利だ! 危ない魔剣も処理出来て一石二鳥だな!
さてさて、アイギスとやらはどうなったのかな〜っと!
【アイギス】
[スキルスロット]
①『暴食』(
②無し
③無し
④無し
⑤無し
スキルを魂ごと持ち主に移してたしな……ただ、このまま使うの怖いな……。
でも僕が魔剣を使うわけじゃないし、大丈夫かな?
一応調べておこう──
『暴食』:殺した者のスキルを自分の物に出来る。アイギスで『暴食』を使用するとスキルはアイギスの中に保存され、スキルスロットに装着可能。
……やっぱり物騒な能力だな……ただ凄くありがたい情報も記載されている。
本来は収納したアイテムのスキルを装着するんだろうけど、無限にスキルを集め放題な仕様に変わったな!
僕より、この腕輪の性能がチートだった件についてッ!
とりあえず、今はこの性能は置いておいて──
皆の所へ行かないと!
思ったより時間経ってるし!
◇◇◇
外に到着すると、冒険者や兵士が街の周りで魔物と戦っていた。
「君ッ! 街の中に入りたまえッ!」
一人の兵士が僕にそう声を張り上げて言ってくれるが、僕はそのまま走り去って行く──
あの人達は夢では既にいなかった記憶がある。
というか……よく見ればエレノアさんと精霊さんっぽい人達が魔物を次々と屠っていた。
戦線を維持出来ているのは彼女達のお陰だと思う。
まだ手遅れじゃないはず──
しばらく走り抜けるとシャーリーさんの前で仁王立ちし、ブレスを防いでいる師匠が見えた。
あのドラゴンに乗ってる人は夢の人だな……なんか人族っぽくないぞ?
とりあえずまだ誰も死んでない──
「間に合った──!?」
師匠の方をよく見ると動けない状態で手甲をはめた赤く染まった髪をなびかせる犬獣人の女性が『雷魔法』を込めたであろう拳を振り抜こうとしていた。
ユラさんは師匠の後ろで抱きしめる──
ヤバいッ! 今の師匠は目の前まで手が回らない──
「──【
気がつくと無意識に僕は高密度に魔力を込めた一枚の盾を師匠の前に出していた──
盾と拳は衝突すると盾がひび割れる。
「まだまだぁぁッ! ──【
遠距離に出した盾5枚を操作し、【
「ちっ、この盾は──そういう事か──」
獣人の女性は舌打ちをしながら勝手に動く盾を一瞥し、バックステップで捌きながら一度下がる。
「──師匠ッ! 無事ですか!?」
僕は師匠達の前に到着すると盾を展開させて振り向き声をかける。
「あぁ、お前のお陰でな」
師匠は酷い傷で盾はぼろぼろだけど、僕に笑顔で応えてくれる。
とりあえず、何が何だかわからないけど獣人の女性がドラゴンに向けて飛ぶ拳打を放って「邪魔が入ったな」と言いながらドラゴンに乗ってる人はどっか行った!
この人達敵同士なのだろうか?
ちなみに目の前にいる獣人の女性はドラゴンが去った後は僕をずっと見据えている……戦っても勝ち目がないのは【直感】先生が告げているから、まずやる事は──
「シャーリーさんッ! 今のうちに回復をッ!」
──守って、戦力の回復だ!
「【
「──『
僕はシャーリーさんが回復に集中出来るように魔力をかなり込めた大量の盾を目の前に出現させる。目の前の人は母さん並だろうけど、これなら少しぐらい時間稼ぎは出来るはずだ。
「ふむ、試させてもらおう──」
ガンガンッと拳打の嵐で盾が攻撃され壊され始めるが──
こっちまで攻撃が到達すると思った瞬間──
母さんが目の前に現れて渾身の攻撃を放つと獣人の女性はガードするものの吹き飛ばされる。
「──ステラ──覚悟なさいッ! 【
「──ちっ、【
母さんがその後、初めて見る必殺技が発動するが、ステラと呼ばれた相手の女性も負けじと必殺技を放つ──
どう考えても被害が凄い事になる未来しか見えないッ!
案の定──
離れた場所で2人が激突すると大爆発が起こる──
その状況を見て──
……なんなのこの人外のような戦鬪は?!
ドラゴンなんかよりこっちの方がヤバいんですけど!?
あんなの撃たれたら僕じゃ防ぐ自信ないんですけど!?
と思った──
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