第7話 出来る事をする!?

 僕はレラが帰った後、しばらくして嫌な予感がした。


 やたら【直感】先生が追いかけろと警鐘を鳴らす。


 今まではこんな事はなかった。


 何かレラに起こる可能性がある──


 そう思うと足が勝手に動いていた。


 裏路地に入ると──


 レラの服が引きちぎられ、下品そうな男に馬乗りにされていた。


 相手はレラでも勝てないぐらいの相手──


 だけど、そんな事より僕は考えるより先に体が動く。


「てめぇ──ぶっ殺すっ!」


 僕は目の前の下品そうな男を殴り飛ばす。


 それはもう全力で走りながら殴ったから吹っ飛んだ!


「ロ、ロイぃぃぃぃ──」


 レラが泣いた所を見るのは昔虐められていた頃以来だ。


 それに背中の火傷が酷い──


 許さない──


 こいつら絶対に許さないっ!


 レラに僕の上着を被せて──


「レラ──僕がよ」


 ──そう言う。


 僕は振り向くと、男は立ち上がり近付いて来る。


 僕は──木盾、木剣を構える。


 相手は真剣を握っている。


 直接受ける事は不可能。


 今、僕が出来るのは回避盾だけだろう。


 時間さえ稼げば、僕がいない事に気付いた母さんが探しに来てくれるはずだ……たぶん。


 僕の目の前まで来た男が言葉を発する。


「──お前がロイか?」


「? そうだけど? それが何か?」


「くっくっく、そうか──お前がそいつの恋人のロイか……こりゃあ笑いが止まらなぇな。お前をさっさと地面に転がして、続きを楽しむか──はっはっは──」


 こいつは何を言っているんだ?


「──お前が僕に勝てたらな」


「お前──俺に勝てると思っているのか? 俺はBランク冒険者だ。お前みたいなガキなんかが勝てるわけねぇだろうが!」


 再度構える──


 中々の『威圧』だな……これがBランク冒険者か。


 だけど──この程度なら問題無い。母さんの威圧の方が立っているのが難しいぐらいだし。


「『威圧』スキルか……それぐらいで怖気付くわけないだろ? さっさとかかってこい」


「ふん、お前耐性スキル持ちか……。まぁ、どうせ直ぐに終わる。お前は年的にまだあそこが勃たないだろう? この半端者は処女確定だな。お前らの泣き叫ぶ姿が楽しみだ──早く犯してぇな!」



 半端者?


 誰が?


 レラが?


 こんな奴が冒険者?


 僕が憧れていた冒険者?


 断じて違うっ!


 冒険者は人々の生活を守る為の職業だ!


 こんなカスみたいな奴が冒険者を語るなんて許さない!


 それに──


 こいつはレラを犯すと言った──


 僕の大切な友達を犯すと──


 許さない──


 僕の中で何かが切れる音がした。


「──お前らみたいな奴らの方が半端者だろうがっ! 弱い者を踏み躙るような奴らが──冒険者を語るなっ! レラは──お前らより強いんだよ! まぐれで勝った癖に粋がってんじゃねぇよっ!」


「せいぜい吠えてろ。後でたっぷりと、この半端者の喘ぎ声聞かせてやっからよ! さぁとっとと──寝てろっ!」


 袈裟懸けに斬りかかって来る──


 。母さんの方が断然速い。


 剣が木盾に当たる瞬間に面ではなく、剣筋に合わせて逸らして避ける──


 その瞬間に木剣を空いた脇腹目掛けて突く。


「──ぐぅ」


「Bランクって大した事ないね? やっぱりレラに勝ったのはまぐれだろ? レラは僕なんかより強いからね」


 俺は煽れるだけ煽る。逆上させれば剣筋もわかりやすい。


「てんめぇ──ぶっ殺してやるっ!」


 連撃が迫るが、荒い上に遅くて避けるのは簡単だ。盾も剣筋に合わせてやれば怖くない。


「それは──こっちの台詞だっ! この雑魚がっ!」


 男は先程よりも速く動く──


 おそらく何かしら移動系のスキルを使ったのだろう。


 それでも、攻撃が来る場所がわかる僕には無駄だ。


「──どうなってやがる!? てめぇら見てないでさっさと援護しろ!」


 僕の後ろで男達が一斉に動き出す。


 2人は剣を使い襲って来た。


 合計3人の攻撃を逸らしながら避けていく──


 盾で防げないのは辛いな。せめてこれが金属なら問題ないのに──


 急に3人は飛び退く──


 なんだ?


 ──後ろ!?


 急に背中に対して警鐘が鳴る


 振り向いて構えると『火魔法』の火球ファイヤーボールが襲って来ていた。


 僕は木盾を使い、防ぐ──


「あっつぅー。レラの背中の火傷はこれか……」


 木盾は消し炭になり、僕の右腕は火傷を負う。痛みは【痛覚】を1にしているから多少痛いぐらいだ。


 こいつらは連携は大した事ないけど、意識を逸らされて魔法攻撃されるのは厄介だ。……これを防ぐのは普通は難しいだろうな。【直感】がなかったらとっくに沈んでいるかもしれない。


 それに──もう、手元には木剣しかない。


 母さんもまだ来ない。


 ──いや、母さんに頼るな!


 僕がレラを守ると決めたんだ!


 人に頼ってどうする!


 何か手は無いか!? せめてレラだけは逃したい。


 4人は笑いながらゆっくりと再度近寄って来る。


 僕は視線を泳がせて何かないか探す──


 ──すると、壁沿いにあった!


 即座に木剣を相手目掛けて投げ捨て──


 起死回生になるであろうを手に取る。


 それは──


 ──だ。


 それを持って左手に持って構える。


「ぶはっ、お前正気か? 鍋の蓋なんかで戦うのか? 笑いが止まらねぇんだけど? がっはっはっ──」


 1人がそんな事を言いながら笑う。


 Bランクの男は厄介そうに顔をしかめている。こいつはどういう事かわかっているのだろう。


 なんせ、この世界の調理器具は鉄で出来ている。


 真剣の攻撃だって、これなら防げるはずだ。


「──お前らは鍋の蓋を持った子供にやられるんだよ。さっさと来い、雑魚」


 再度襲い迫る攻撃の嵐を今度は防ぎながら捌いていく。


 これなら魔法も問題無いだろう。


 避けるだけなら大丈夫。


 ただ──


 攻撃手段が全く無い。


 僕が使えるとわかっているスキルは『感度操作』のみ──


 これが戦闘に使えるかと言われれば使える事は既にわかっている。


【直感】【痛覚】は既に使っているし、今も効果を発揮している。


 残り僕が把握している『感度操作』は──


【性感度】のみ。


 これは肩揉みでしか使用した事がないが、に効果を与える事が出来る。


 これしかないだろう。


 僕は1人の攻撃を鍋の蓋により、絡め取り──


 右手で相手に触れる──


「なんのつもりだ?」


「さぁてね? 天国へご招待だ──果てろ──」


「◯△◇◆●▼──」


 攻撃して来た男は声にならない声を上げて、その場に崩れ落ちる──


 その時の顔は恍惚こうこつの表情を浮かべていた──

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