25歳から始める遺書作成

雨樋棒棒

0. はじめに

 諸君は生まれてきたことを後悔したことはあるだろうか? 恐らくあるだろう。誰しも一度くらいは思うことだろうと私は考える。その理由もきっと様々なものがあるに違いない。貧しさが――、肉親が――、自らの無能さが――、無意味な人生が――、社会が――、戦争が――、労働が――、環境が――、等々。


 かく言う私も生まれてきたことを後悔した人間のうちの一人だ。とは言っても自殺を考えているというわけではないので、そこは安心して欲しい。

 

 私のその後悔の理由は、単純明快だ。。この感情は最もプリミティブで重大かつ悲劇的であるのにも関わらず、誰にも降りかかるという点であまり顧みられることがない感情だ。そう、私は出来ることなら「必ず死ぬ」という自らの運命と向き合いたくないのだ。そんなものと向き合わざるを得ないなら生まれなかった方がマシだった。奪われるために生まれた命に、恐怖以上の歓びが果たしてあるだろうか? しかし生まれてきたものはもうどうしようもないし、かと言って死から目を逸らし逃げ続けてもいずれ追いつかれてしまう。それは50年後かもしれないが、明日かもしれない。そして最期の瞬間には否応なしに覚悟させられてしまう。


 この文章は、自らの生を振り返りつつ、恐怖を感じる理由を言葉にすることでその本質を見極めようという、そういう試みである。


 私の他にも死ぬのがどうしようもなく怖い人がいるだろう。そういう人は気持ちを一緒に分かち合おう。死ぬのなんて怖くない、もうとっくに覚悟が出来ている、そういう人もいるだろう。これはそういう人にこそ読んで欲しい。その上で「自分を騙す」以外の怖くなくなる方法があるのなら、是非ともその知恵を授けて欲しい。


 それから、私は何者でもないということも言っておく。社会において何の役割も果たさず、大きな影響力もない、ただ自分のためだけに生きているような怠惰な人間だ。私はその分相応の人生に満足している。ただ一つ、「いつか必ず死ぬ」という点を除けば。


 そのたった一点が私を発狂寸前まで追い詰めるのである。

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