第6話 プロポーズ記念日の夜
「今日は早く帰りたい」
と夫からメッセージが届く。特別に何かする訳でなくてもそれだけで私は嬉しかった。
それから数時間後
「今から帰るよ」
とメッセージ。
「お疲れ様。気をつけてね」
と返す。
しばらくして夫が帰ってきた。手にはケーキ屋の紙袋。
(やられた)
と思った。手紙を書いたからケーキを買ってきたんだ。昨日丁度節約しようという話をしたばかりなのに。しかし記念日を祝おうとしてくれる姿勢に嬉しさを感じた。
夕飯の後、ケーキを出す。中身はザッハトルテ。ANNIVERSARYと描かれたプレートが中央にあった。
2人でホールケーキを食べる時は切り分けない。皿も出さない。両端から直接フォークで取っていく。行儀は悪いが家の中、大人2人なのでいいのだ。
真ん中あたりにそっと線を引き、陣地を決める。そしてその付近にたどり着くと
「あと食べていいよ」
と言った。
「ありがとう」
と夫は残りを綺麗にすくって、こぼしながら食べた。私は夫の食べカスを拾いながらケーキの味を思い返した。
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