第5話 寝落ち

 お風呂を入れてる間に夫がこたつで寝た。普段なら叩き起こすのだが、その日は私も眠かった。こたつですやすやと眠る夫が羨ましかった。だから私も寝ることにした。座椅子の位置をずらしてこたつにすっぽりと入る。

(どうせすぐ起きるだろう)

と高を括っていた。

 夢を見ては目が覚めてというのを繰り返した。覚醒には遠いぼんやりとした目覚め。何度目かで夫に起こされた。

 夫は自分が先に寝たくせに俊敏な動きで寝る準備を始めた。そして

「ちゃんと寝るよ」

とまるで私が先にこたつで寝たかのように言った。

(お前が寝るからだぞ)

と私は思いながら、カラカラの喉で今の時間を訪ねる。

「4時だよ」

 いつの間にそんなに寝てしまったのか。

 机の上にあった水を飲み、もぞもぞと動き始めた。

(せっかくお湯張ったのに)

た思いながらも夫同様、入る気分にはなれなかった。

(ヨーグルト昨日までだった)

 入浴後に食べようと思っていた存在を思い出し落ち込む。

「ヨーグルトごめん」

と夫に言う。今回買ってきたのは夫なので食品ロスを謝る。

「100円だしいいよ」

 その言葉に安心しつつ

(お前が勝手に買ってくるからだぞ)

と密かに思っていた。

 我が家のヨーグルトはファミリータイプのプレーン味のものだ。理由は安いから。味に文句はないが、皿に移してジャムを入れてという工程が必須だ。ヨーグルトの準備は基本私の仕事。面倒臭がりの私にはこの工程は苦痛だった。

 ヨーグルトはある日、調子の悪い私のために夫が買ってきてくれた。しかしいかんせん調子が悪いので

(誰がそれ用意するんだよ)

と思ったものだった。

 歯を磨き就寝前の薬を飲み、布団に入る。

(あ、これ眠れないやつだ)

と直観する。そんな時は夫に

「眠れない気がする」

と伝える。

「大丈夫、眠れるよ」

 夫はいつもそう言う。嘘だと思っても高確率で眠れるからすごい。

「おやすみ」

と言い、部屋が暗くなる。そしてすんなりと夢の中へ落ちていくのだった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る