ワレブタのトジナベ
友利日香梨
第1話 ゴミ
午前0時。寝る準備を始める頃。こたつの上に夫のペットボトル。飲みかけかと思い手に取ってみる。中身は空。
(こいつまた置きっぱなしにしたな)
そんなことを思いつつも私は愛おしさを感じながらペットボトルの包みを剥がし中身を濯いで流しの横にボトルを置いた。
夫はよくゴミをそのままにする。こたつや机の上に丸まったティッシュがあるのはいつものこと。他にもお菓子の包み紙や封筒のちぎった部分が頻繁に置きっぱなしにされている。
だから私の家事はそれらを捨てることから始まる。終わりもそうだ。たまに嫌になる時はある。しかし基本的にはその作業をするのが嫌ではない。
(私のおかげでお前は綺麗な生活が送れるんだぞ)
と思いながら私は夫に代わってゴミを捨てている。なけなしの自己肯定感が高まる瞬間である。
もしも夫がゴミをすぐゴミ箱に捨てられる人間だったら私達夫婦は上手くいかないかもしれない。私だけができる家事が減ってしまうからだ。
私は家事が大嫌いだが、「私が」家事をするということに物凄くこだわっている。一種の強迫観念だ。そんな人間のため、ゴミをゴミ箱に捨てるという簡単な家事を与えてくれる夫には感謝している。ゴミを捨てられない夫を可愛いとすら思う。本人に言うと今まで以上にゴミを捨てなくなるので絶対に言わないが。
という訳で今日もテーブルの上のティッシュをゴミ箱に入れ、私の家事は終わるのである。
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