第2話 秋雲の朝に響く啓示

空には秋の雲。

ひんやり爽やかで、鳥の声がさ、

澄んで響く。


早朝のジョギングは 仕事前のルーティンね。

シューズを履いて、黒髪をポニーテールに結い上げる。


下町でも 大きめな商店街のあるメゾネットの 近くには、大きな川が流れていて、


『おはようございます。』


河川敷をジョギングすれば、パピー犬のお散歩する人に出会ったりする。パピーは可愛い。でも、撫でさせてもらう勇気はないかな。


雨でないならさ、モーニングピクニック。河川敷のベンチで朝食も 取っちゃうのよ。

狭い部屋で食べるより、ずっと健全な、青空ダイニングってね。


水筒にお味噌汁。おにぎりを作ってジョギングポーチにポンと、セット。


少し上流にいけば、大きな公園もあるけど、ジョギングロードにある公園でも わたしは、十分 。


季節の花々がちゃんと咲くし、夏には花火も見れる場所。


だから、今の時期は 秋桜畑なんだよ。まだ、蕾だけどね、満開が楽しみ。


『タッタッタッタッ』


体力作りにも、趣味がてらにもジョギングは丁度いい。なんてったってタダだし。ここは外せない。


この土手とか、ドラマにでてくるけど、つくづく都心で数少ない水辺の癒しだなって、思ってる。


で、今朝なんだけど。


土手から 朝の川景色を眺めて ランしてたら、川際に引っかかるヨット?が見えた。


「何?あれ?」


たまに、いろいろ川をカヌーみたいなのとか、競艇より大きめのボートを見たりするけど、


「白っろっ!

そして、へんなヨット!」


思わず、声にしてしまった。独り言とか とうとう ヤバいって。

誰もいないからセーフだけどね。


で、

土手の上から 寄って覗きこんでみるけど、、、。


「ペットボトルの船?」


見間違いじゃなければ、ヨットの船体がさ、ペットボトルなんだけど?どーゆーこと?

なんかの撮影?芸人さんとかネットインフルエンサーとか?


朝早いからか、今なんか 全然人がいないのが気持ちを無防備にさせるのかも。普段しないようにしている事をしてしまう。


ついつい土手から降りて、川際のペットボトルシップを見に近づいたらね、


「人いる、って?!」


独り言とか言ってらんない。


だってね、中に人が 1人で うつ伏せに倒れてるんだけど、、

それとも、寝てるだけなの?


動かない人を、怪訝に思って背中をよく見る。死んでそうなら、警察に電話するしかないもの。


んーー。

目を凝らして、皿のように見つめて、よく見て、息してたら、上下に動くはず なんだけど、


『グルッ!!』


「ぎゃっ!!」


急に!?その人、仰向けになったって!わたし!へんな声でたの!

回りを見て。大丈夫誰もいない。良かった。変な声聞かれてない。凄く葛藤したよもう。


あ、この人は聞いてたか?そうだ、死んでなかったね。なら、大丈夫よね。


そう、思って また走りだそうと

した時、


「sorry、、something、 to eat

、、 フード、、ください、、」


男性の弱々しい 声が 聞こえた。


ボートで漂流してしまった人達?海辺なら 分かるけど、いや、海辺でも そうそう 見ないけど。

振り返って、、聞く。



「Are you hungry?」


さっき、英語だったよね。


「・・・・」


応答なし?!力尽きた!?勘弁して!、


「コレ あげるからさ!」


しゃーないよね。ウエストポーチを外して、それごと ボートの中に

ピッチャーよろしく 振りかぶる。


「 It's food!食べて!」


そう 相手に叫んで、放り込んだ。

もちろん頭に当たらないようにしたのね。こう見えて、わたし運動神経いいんで。


「食べなよ!」


わたしの 朝食ちゃんだけど。人命救助なのだから仕方ない。


ほうれん草とコーンの白味噌汁に

ごま油と自家製マヨネーズのおにぎりちゃんだよ。


ああ、朝食が。遠く カーブを描いて


『ガゴッ』


上ー手く 男を避けて、朝食入りのウエストポーチは、船内に 落ちた。ナイス!さすが、わたしね。


本当なら、まずは水なんだろうけどね。ないからゆるしてよね。


その人は、気力振り絞ってそうな感じで、上体を なんとか お越して、モゾモゾとポーチに手を掛けたのよ。


良かった。水筒と ポーチポケットのおにぎりをね、なんとか食べ物って認識したみたい。


一応、心配だから見ておくとね。

上手く水筒を開けて、味噌汁を 脇にさしておいたスプーンで食べ始めたから、もう 大丈夫だろうね。


「日焼けしてるなあ。」


ついね、出たのよね。だって、ボッサボサの髪は黒いけど、なんとなく日本人じゃないみたいに感じる。食文化とか大丈夫かな?


まあ空腹ならさ、とにかく食べるよね。人間は切羽詰まれば何でも食べるって、経験から解ってる。なら、


「じゃ、バーイ!!」って


手を振って、わたしはジョギングの続きを 再開と走り去ろうとしたの。

あれ??なんでペットボトルの船?まあ、いっか。じゃ、


「sorry!!」


え、止めるの?この人?


こうして よく 見てもさ、髪とか髭とか伸びて、顔の半分は よくわからないわけ。要するに不審者なのね。


浅黒いっていうのかな?その男性が、おにぎりを日焼けした手に

持ってさ引き留めるわけ。だから


「No worries! いいからさ、」


って、変に巻き込まれも嫌だからね、手を振って そのまま

「食べて行ってよっ」てしたのよ。


違うって?何?まだある?

変な人なら 一目散に 逃げるべしよね!


「シー、ポリス。Tell me、

教えて、、、ください。」


「へ?」



何?シー・ポリス?

捕鯨のなんか団体?違うか。わ、ペットボトルの船って、どっか抗議とか?よくわかんない

何それっ。警戒しつつもさ気になっちゃうじゃない?身を滅ぼす好奇心だよね。


とりあえず検索したら 水上交番だって。

そっか、湾岸警察署ってね、水上警察なんだ。てっきり湾岸にある『警察署』なだけって思ってたよ。


なるほどね。

この川の向かいちょい上流にね、

確かにあるよ水上交番。初めて、知った。


「I will call。わたし電話します」


耳に電話あてて、自分を指差すジェスチャーをする。


不審な船が 遭難してますってね。説明しますよ。はい。

そんな不埒を事を考えて、へんてこ真っ白い、ペットボトルの船に

向かって叫ぶ。


『 キューーーイキュィーーーーー 』


ああ、鳥が 飛んだ。


秋の早朝は、空気が澄んで思いの外、 わたしの声が響いたらしい。


その人も、なんかビックリしたように肩を一瞬揺らした。


それでも、わたしの言った言葉が 理解できたんだろうね。


凄く綺麗な白い歯をニカッて見せながら、


「ありがとう、God bless you。」


って 笑った。

そうか、褐色の肌ってさいうんだ。


それが今朝の話で、これがね、

自称 『魔術師ケイ』との初めての出会い。ファーストコンタクトだったって話。この時は、そう思っていたんだよね、わたしは。



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