倒れ
バブみ道日丿宮組
お題:うわ・・・私の年収、寒空
倒れ
「なんでこうなるまで放っておいたの!」
病室にかけこんで口に出たのは、まずそれだった。
「大丈夫って思ったんだけどね」
大体大丈夫じゃない人のセリフだ。
「過労って聞いたよ」
毎日残業を4、5時間。
他にも数人が倒れて、お役人が入ったとのこと。もしかすると、会社はなくなるかもしれない。
「終わらないのを終わらせないといけなかったから」
「それで倒れてたら、元もない」
ゆっくり休んでと、見舞いの品を置いて足早に病室を出る。
ここで彼女に倒れられたら、私まで終わってしまう。ルームシェアを一人で賄うことなんてできない。もっと低敷金のところにしとくべきだったかもしれない。
「……でもな」
居心地の良さがだいぶ違う。
やっぱりそれなりのものはそれなりの仕組みをもってる。
スーパーが近かったり、駅が近かったり、コンビニが近かったり、交番が近かったり……などなど。
年収が上がれば、一人でもなんとでもできるはずなのだが、芳しくない。
底辺の仕事なのはわかってる。上からきたものをひたすら作り上げる。これでその上にいけるのであれば、話は別だがそんなことは起こらない。
もしかしたら、こういう思考だから上がれないかもしれない。
彼女はその上の方の会社だった。
だというのに、中身がこれじゃ底辺のがまだマシだ。
残業は1、2時間。ないときのほうが多い。
心のゆとりがある、理想的な時間。
でも、その分給料は安い。
仕事を一つ一つ終わらせてくスタイルのため、あまり仕事量が多くない。オフィスなんてものはなく、ほとんど家で仕事を行う。
だからこそ、やっていける会社なのかもしれない。
そんな私が彼女の様子に気づかなかったなんて……ね?
「……ん」
隠すようなことでもないし、そういうのに気づかないのが私の現状を作り上げてるのかもしれない。
「はぁ……」
仕事戻らなきゃ。
時間を見つけてやってきたけど、暇というわけじゃない。
多くも少なくもない仕事はきっちりとある。
それはある意味で平和なのかも。忙しくなるということはないのだから。
彼女の入院費はどれくらいかかるのだろうか。足りなければ、私が出そう。少ないながらも貯金はしてる。それを彼女に使うことにためらいはない。
これからも一緒に住んでいきたいし。
倒れ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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