第8話 「決着」
「そこが人類の醜いところなんだ……安易に何かを滅ぼそうとするその考えが許せないんだよ! だから人類には嫌気が刺した! 陛下は僕を認めてくれた! お前には黒魔術の才能がある! その潜在能力を覚醒させれば万人を救うことができる! 比べて人間はどうだ? 不要と定めた物を壊し、排除することでしかその平穏を享受できない! どうして救いたいと思うか! 魔族の救済を陛下の御前で誓った! 僕に存在意義を与えてくれたんだ!!」
広間を震わせるほどの声量、私の心臓に棘を刺してくるような言葉たち。
勇者という大義名分を正論にも汚名と彼は言った。
魔王を倒すことで魔族が滅びる、そのために生きてきた。
よくよく考えてみれば、確かに残酷だ。
だけど私は、皆の期待に応えるためだけに生きたいと思った。
それが私の存在意義。
ジークの姿が私と重なる。
何もなかった存在に意義をつけるのなら、それに応えたくなる気持ちを私が一番理解している。
だから彼は先ほど「君が一番分かっているはずだ」と言った。
私は勇者として認められ期待に応えたい。
ジークは魔王に認められ期待に応えたい。
相対しているかのようにも見えるが実際、道理は一緒だ。
まるっきり同じなのだ。
「いいじゃないか、君らしい判断だよ……!!」
私はジークの肩を腹部まで切り裂いていた。
致命傷だ、人間ならば。
「けど、それじゃ足りないよ!」
傷が勝手に治癒していく。
皮膚が元通りに治ると、砕いた鎧までもが修復していた。
それは明らかに常人を凌駕した生命力。
ジークの表情はあまりにも余裕で満ちていた。
「がはっ」
腹を蹴られた。
強烈過ぎて骨が何本も持っていかれたかもしれない。
歪んだ顔でジークを瞳にとらえる。
剣が振り下ろされていた。
聖剣で受け止める。
鍔迫り合いの形に持ち込むのは危険だ。
こちらの不利になることは重々だ。
「はああああああ!!!」
ジークの剣に黒い魔力が集まってくるのを感じた。
まただ、また拡散する。
一撃で瀕死に追い込んでくるほど強力だ。
ならば、こちらも押し返すまでだ。
勇者の聖剣は所有者の覚悟で覚醒する。
眩い光に包まれ、黒い魔力をものともしない膨大な力でジークに力勝ちしてみせた。
構え方を変え、突きの態勢へと入る。
狙うはジークの心臓。
例え、生命力が高かろうと心臓を付けばトドメをさせる。
「ジークッ!!!!」
私の聖剣がジークの心臓を貫いた。
愛する者を、この手で……
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