正解なんて

シヨゥ

第1話

「良し悪しなんてものはそれぞれが決めるもんだ」

 酒で顔を赤くした友人が息巻く。

「だから正解なんてものは判断する人間の数だけある。そんな不明確なものを気にして生きるのがそもそも間違いなんだ」

「なるほどなるほと」

 彼女に振られた彼は今日は語りたい日のようだ。

「俺はこうするのが正しいと思った。だからこうした。それが正解なんだ。そんなのは間違っている、なんて言うケツの穴の小さい奴は黙ってろ」

 価値観の相違。それが別れの原因らしい。

「俺はグレーゾーンを広く取って、なす事全てにそういう考えもあるなって無理やり納得してきたというのに。なんでなんで」

 まだ未練はあるようで語っては泣くを繰り返している。

「今日は飲んで。飲んで吐き出して、そして次に進もう。酒に溺れる。それもまた良しだと思う」

「ありがとう。ありがとう」

 そんな不安定な彼を今日は受け止めようと思う。コロコロと表情が変わる彼はかわいい。もしかしたらこれは話を聞くうちに好きになっていくというありふれた出来事のはじまりなのかもしれない。

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正解なんて シヨゥ @Shiyoxu

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