下っ端トカゲ顔奴隷は理想のオヤビンに買われたい!

しゃけ弁当

第1話

「おらッ!大人しくしやがれボケ共が!!」


ドアを蹴破って入るなり、武装した集団の先頭の男が叫んだ。目の前で酒盛りをしていた仲間たちは、反応する暇もなく武装集団に切り捨てられていく。

ここは貧民街を拠点とした詐欺集団の一味のアジトであるが、どうやら冒険者組合の連中に見つかったらしい。


「詐欺師は皆殺しだァ!!!」


ああ、何が悪かったのだろうか。先日冒険者組合の副会長のお気に入りの女にうっかり声を掛けたヤツがいたのがマズかったのだろうか。

あっという間に自称力自慢の仲間たちは帰らぬ人となり、気付けばアッシとオヤビンの二人しかいなくなってしまった。


「クソがァ!!こうなりゃヤケだ!やってやらァ!!」


オヤビンが自慢のサーベルを振り回して応戦するが、相手は戦闘のプロだ。目の前にオヤビンの首が転がって来るまでに、そう時間は掛からなかった。


「…ヒィッ!!」

「後はお前だけだなァ…!」


血の滴る両刃の剣をぶら下げた男が怯え切ったアッシの元へにじり寄って来る。命の危機を感じたそのタイミングで冒険者の仲間であろう一人が声を掛ける。


「おい!全員殺しちまったら稼ぎにならねえだろうが!!昨日の酒のツケはどうやって払うつもりだこのロクデナシがァ!!」

「何だとコラァ!!…チッ、しょうがねえ。コイツだけでも捕まえてカネにするか。」


トントン拍子に話は進み、気が付けばアッシは奴隷商人に売られることになってしまった。




「お前の名前は?」

「へ、へい!アッシはマルコでございやす!文字は書けやすし、料理に掃除に洗濯、動物や魔物の解体もできやす!剣もそれなりに使えるんで何でも使ってくだせえ!!」

「許可されたこと以外喋るな!…まあ良い、契約で嘘はつけないハズだ。それにしても随分多芸じゃないか。」

「ありがとうごぜぇやす!」

「…ったく、しかしコイツを銀貨1枚で売り払ったあの冒険者どもはどうやら上客らしいな。」


オヤビンの役に立とうと身につけた技術がこんな形で役に立つとは思ってもみなかった。どうにも言えない気分を味わいながら、奴隷商人の言葉を待った。


「剣が得意ならコロシアムの戦闘奴隷、料理やら文字の代筆が出来るなら冒険者用の奴隷、解体ができるんなら冒険者組合に売っても良いな…」

「ア、アッシに良い考えがありやす!聞いて頂いても良いでしょうか!?」

「…何だ、言ってみろ」


死亡率が高い戦闘奴隷として売られては堪らないと、思わず手を上げた。勝手に発言するアッシを睨みながらも、商人も聞くつもりはあるらしい。


「へい!"貸し奴隷"ってのはどうでしょうか!?前金を払って頂いてアッシを貸し出すんでさぁ!奴隷は契約で縛られてるんで主人の考えに反する事はできやせん!貸し出し期間中にもし、お客サマがアッシを気に入って下さったらそん時は追加料金を払って正式に買ってもらうんでさぁ!!」

「ふむ…前金の時点で、ある程度利益を取れば例えお前が死んだとしてもデメリットはない、か。」

「その通りでございやす!流石はこの都市一番の奴隷商人の旦那!話が分かっていらっしゃる!!」

「ふ、ふん!当然だとも。私はあの父を超える商人となるのだからな!まあ良い、お前はその"貸し奴隷"として販売する、良いな!?」

「へい!分かりやした!」


…こうしてマルコの"貸し奴隷"としての人生が始まることとなった。

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下っ端トカゲ顔奴隷は理想のオヤビンに買われたい! しゃけ弁当 @SalmonDaisuki

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