第1025話 騎士と魔導士
赤月の夜に舞う、巨大なクジラと海の王。
合計三体の同時突撃は、第五陣の大ボスである黒剛王鬼を打倒した。
「やったぽよー!」
「やったー!」
スライムは、メイをバインバインさせて勝利を喜ぶ。
「海の王や空の王への変身に加えて、オリハルコン製ゴーレム。豪快な戦いでした」
「掲示板組も、すっかり一大戦力ね」
「ほ、本当ですね……っ」
共闘となった掲示板組。
メイを追いかけるため身に付いた、早い判断はもちろん。
「使徒長と最高の連携を……決めてしまいました……!」
多彩な氷結魔法を使う樹氷の魔女を中心にした、後衛組も見事な戦いぶりだった。
「マウント氏、あの緊張感の中よく決めたな!」
「パリィは絶対タイミングに苦しむもんな! 見事だったぞ!」
「…………お、おう!」
とりあえず剣を掲げてみたものの、思った以上の功績に、うまく言葉が出ないマウント氏。
これには掲示板組も笑い出す。
それでもちゃんと皆で迷子ちゃんの裾をつかんでホールドしている辺りはもう、見事と言う他ない。
「いくぞ! このまま攻め切れぇぇぇぇ――っ!!」
そして最後の魔物がトップ勢の攻勢に倒れ、第五陣も全滅。
いよいよ消耗が激しくなってきた参戦者だが、メイたちの勝利を見て気合を入れ直す。
こうなったら、最後まで進みたい。
その一心で、突き進んでいる形だ。
「よーし、第五陣にも無事勝てたな!」
「消耗は激しいけど、今回も何とかなった……!」
安堵の息をつき、よろこびを語り合う参戦者たち。
「……あれ?」
そんな中メイの目に映ったのは、こちらに勢いよく向かってくる何か。
その姿には、見覚えがあった。
「ああっ! あの白馬は、アルトリッテちゃんの!」
メイの言葉に、皆が振り返る。
「ここで、頼れる味方の登場ですね」
「助かるわ」
「あ、あの可愛い聖騎士さんですねっ」
「おおっ! ついにアルトリッテたちが登場するのか!」
この困窮し始めた戦いに、駆けつけるトップの聖騎士と魔導士。
戦況を一気に優位にできるパーティの登場に、必然的に皆の意気が上がる。
白馬は華麗な走りで、メイたちのもとにやって来た。
「アルトリッテちゃん! ……いない!」
だがそこに、アルトリッテたちの姿はなかった。
「馬だけだ……」
この場にたどり着いた一頭の白馬。
奇妙な事態に、首を傾げるメイたち。
「あっ!」
メイが再び指を差す。
そこに見えたのは、長い金髪の小柄な聖騎士。
白の鎧に、鮮やかな青のマント。
そして6年の長きに渡って探し続けた【エクスカリバー】が目印。
その隣にいるのは、高い身長と目が死んでいるところが特徴の魔導士。
白く長いふわふわの髪に魔女帽を乗せ、深紅のコートを羽織っている。
「ま、待てええええ――――っ!」
大慌てで走って来たのは、アルトリッテとマリーカだった。
メイのところにやってきた白馬に追いついた二人は、大きく息をつく。
「……気合十分で走り出したら、道に迷った。そしてようやく戦場に着いたと思ったら、今度は馬に振り落とされた」
マリーカはいつも通り、淡々と事実を告げる。
「意外と『乗馬』って、操作にクセがあるものね」
「……調子に乗って前足をあげさせてから一気に加速させようとして、二人して落馬した」
それは車ならウィリー状態からの全開走行を狙って、ウィリーの時点で背中から落ちたような形だ。
「ぷっ」
「くすくす」
「「「あははははははは!」」」
その際に「ぬはあああああ!」と言いながら振り落とされるアルトリッテと、無表情のまま巻き込まれるマリーカがあまりに簡単に想像できて、皆笑ってしまう。
「……いつものこと」
「いつもではない!」
アルトリッテはそう言って、白馬を指輪に戻す。
「とにかく、ついにここまで来たのだな! 超大型クエストの報を聞いて、駆けつけたぞ!」
「ありがとーっ!」
メイは喜んで、アルトリッテに飛びつく。
「こ、この瞬間は癒されますね……!」
「まったくです」
さっそく楽しそうに抱き合う二人を見て、うんうんとうなずく参戦勢。
「ピラミッドで共になってから、これで何度目か。ブリテンではすっかり世話になったな」
「……今度はこちらが、助けになれればと思った」
「ありがとうございますっ!」
「せっかく来たのだ、もちろん大物との戦いを所望するぞ! さあ、聖剣の騎士アルトリッテは何と戦えばいい!?」
「……遅れたから、HPもMPもあり余ってる」
「そういうことなら、私たちと一緒にどう?」
「それがいいと思いますっ!」
レンの言葉に、大きくうなずくメイ。
「ほほう、それは楽しみだな!」
「……熱い戦いになりそう」
先ほどの黒剛王鬼の強さを考えると、アルトリッテたちと連携が取れるのは助かる。
二人が全快の状態なのであれば、最大の強敵を共に叩きに行くという形で間違いないだろう。
「それでしたら【超可変】や【ゴーレム】も使ったばかりですし、掲示板組はフォロー部隊に回るのが良さそうですね」
「それがいいぽよっ」
頼れる新たな仲間の登場。
自然と楽しい時間が流れ、新たな陣容が決まる。
「レ、レンさんっ」
そしてまもりの声が、皆に何が起きたのかを伝える。
「来たみたいですね」
ツバメが振り返ると、そこにはゼティアの門を通ってやって来た、新たな敵の行列。
「敵はやつらだな! 腕が鳴るぞ!」
「……なるほど、これは一筋縄ではいかなそう」
第五陣が片付いたことで、やって来た第六陣。
当然、戦いは激しさを増すだろう。
「期待してるわ。マリーカ、アルトリッテ」
「……全力でいく」
「任せるがいい! 我が完全なる【エクスカリバー】に、敗北はないっ!」
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