第860話 天空遺跡を眺めながら
大きなクエストの完了。
その余韻もあり、天空遺跡にはまだ多くのプレイヤーが残っていた。
そんな中、神殿区画のフチに腰を下ろし、ゼティアの門を眺めるメイたち。
広がる空と古の遺跡。
その壮大な光景は、まさにこの世界ならではのものだ。
「天空遺跡の冒険も、おしまいかぁ」
メイは伸びをしながら、尻尾をビビビと揺らす。
「今回の旅も楽しかったですね」
「は、はひっ。今まで見たことのなかった風景がたくさん見られました……っ」
「8人で謎を追いかけるっていうのも、ドキドキしてよかったわね」
「最後にはメイちゃんたちと合流できてよかったね」
「ほーんと、この瞬間を死に戻りで逃すなんて最悪だもんねーっ」
アーリィの言葉に、こくこくとうなずくバニー。
「メインルートの話も聞けたし、本当にワクワクしっぱなしだったよ」
「アーリィの遠吠えには、少し驚いたけどね」
「それは忘れてえーっ! あのスキルは本当に恥ずかしんだよっ。バーサーカーちゃんとか呼ぶ人もいるんだからっ」
「わーかーりーますっ!!」
メイ、アーリィに特大の肯定を送る。
首が取れるんじゃないかくらいのうなずき方だ。
「わたしも野生児ちゃんが呼び名となってしまっておりますっ!」
「……メイちゃんは、野生を推してるわけじゃないの?」
「素敵な大人の女性を目指しております!」
「そ、そうなんだね! メイちゃんナラナレるよ!」
アーリィ、若干棒読みになりかけるも全力の肯定で返す。
「えへへ」
それでもメイはうれしそうだ。
「そういえば、アサシンのプレイヤー疑惑はどうなったの?」
二人の話を、他人事ではない表情で聞いていたレンが問う。
「確定できたと言っていいと思う。あのスキルの使い方と組み合わせ、私たちのスキルにだけ対応が上手にできてたのは、元攻略組だからで間違いないよ」
「行方不明の理由は、カウンタークエストではないだろうか」
遺跡のフチを歩きながら、一つの仮説を垂れる夜琉。
かつてメイたちが聖教都市アルティシアで受けたクエストには同時に、刹那たちが受けていた『反対の目的』で動くクエストがあった。
アーリィたちは、元攻略組がこれを受けていると予想。
「テラ・レックスとの戦いに部族による攻撃が混ざり、さらに通常の魔物とまでぶつかったところで別れた攻略組の生存者たち。逃げ延びた先か戦いの中で、アサシンとつながったと考えるのが順当なところではないだろうか……ッ!?」
そこまで言ったところで、足を滑らせ落下する夜琉を、メイが【ターザンロープ】で引き上げる。
「『組織』に追われる白ローブの青年の発見、もう一つあるって言ってたゼティアの門。ここからのルートはこの辺りかしら」
「帝国の黒づくめたちが船で向かった先も気になりますね。船ということは、海底にあるとされるゼティアの門が可能性が高そうです」
「その辺りはまた、後で考えましょうか」
こうして、新たな情報の共有も無事完了。
アーリィも攻略組遠征の時に残してしまった謎が知られて、満足そうだ。
「もういい時間だね。そろそろ本拠地に帰って、ログアウトしようか」
そう言うとバニーが、目を見開いた。
「わー! やだやだ! まだメイたちと遊びたい! 離れたくなーい!」
「子供か」
「ちゃんと両足をバタバタさせているのが、ポイント高いにゃん」
メイの脚にしがみついたまま、いやいやと首を振るバニー。
アーリィが足を引っ張っても、全然離れない。
「時間的にはまだそこまで深くはないし、もう少し遺跡を巡ってみてもいいかもね」
「いいですね。もう少し遊んでいきましょうか」
「いやっほーっ!」
そんなレンとツバメの言葉に、歓喜の声を上げるバニー。
「もう……私は一度ログアウトするね。お風呂にでも入りながら、一度メインの流れをまとめてみようかな」
「ああ、私も明日に備えよう」
「それがいいにゃん」
「メイちゃんたちと冒険できて良かったよ。最っ高に楽しかった! 攻略組での死に戻りも、メイちゃんたちと出会うきっかけになったんだから、最高だった」
「ああ、また共に戦える時を楽しみにしているぞ」
「ツバメとまもりには、似たものを感じる。また会おうにゃん」
「一緒に遊んでくれてありがとう」
そう言ってアーリィたちは、手を振ってログアウトしていく。
「こういうチームで攻略組を組むのなら、いくらでも……いや、ずっとでも続けられるわね」
「本当だねっ」
メイとレンは笑い合う。
8人での冒険は大所帯だったが、確かに楽しかった。
残ったメイたちは、半壊になった神殿区画を観光。
続けて居住区画を歩き、遅れて遊びにきたパーティの救援に入って「メイちゃん!?」と驚かれた。
さらにペンギンロボットとの追いかけっこまでして、たっぷり遊んだメイたち。
「さーて、次はどこに行こっか!」
「さすがにもう帰りなさいよ! 夜が明けそうなんだけど!」
すでに時刻は、深夜から明け方へと変わる頃。
バニーの粘りっぷりに、ついにレンがツッコミを入れたのだった。
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