第850話 怒涛の攻勢
「こいつは、厳しくなったぞ……っ!」
飛び立った大量の小型ガーゴイルによって、戦況は一変。
数で押すガーゴイルに、プレイヤー側が押され出す。
さらに剣の大型が暴れ回っている中、同様のタイプが二体も増えたことに追従プレイヤーは愕然。
見上げるほどの大型ガーゴイルは、滑空から空中で一回転。
大きな両刃斧を、叩きつけにくる。
「ぼ、防御! 防御――っ!」
その猛烈な一撃は、最悪なことに後衛プレイヤーたちのもとに迫っていた。
「【かばう】! 【不動】【地壁の盾】!」
これを受けたのはまもり。
「高速【連続魔法】【フレアアロー】!」
すぐさまレンの放つ、ビームのような炎矢で追撃。すると。
「い、今だ! 【フレイムバレット】!」
「【アクアストライク】!」
「【双焔】!」
レンが大型ガーゴイルの体勢を崩したところに、追従プレイヤーたちも続く。
「まもりも十二分に良い前衛ね」
気が付けば自然と、まもりが敵の攻撃を止め周りの後衛たちが続くという流れが作られた。
まもりの見事な防御は後衛プレイヤーたちを魅了し、一瞬で信頼を集めたようだ。
「うおおおおおっ!?」
槍を持った大型ガーゴイルは、怒涛の突きを繰り出す。
その勢いに、思わず上がる悲鳴。
しかしこれをツバメは、慌てることなくかわす。
その威力は高く、勢いもすさまじい。
しかしツバメはすでに、『点』の攻撃を安易に受けるほど遅くない。
「【跳躍】」
八連続の高速突きを全てかわし、続く振り払いに前方への跳躍で対応。
豪快な振り払いが風を巻き起こし、付近のプレイヤーたちは足をフラつかせた。
「【回天】」
ツバメはそのまま前方宙返り斬りで、肩口を斬りつけ着地。
「【スライディング】【反転】【投擲】」
足元のツバメを踏みつけようと上げた足を見て、裏側へ回り投じる【雷ブレード】
駆ける雷光が、槍型ガーゴイルを硬直させる。
「お願いします」
ツバメのそんな一言に、前衛組が駆け出す。
「任せろぉぉぉぉ! 【ターンエッジ】!」
「【飛炎剣】!」
「【大剣落下斬】!」
こうして言葉少ないツバメも見事な翻弄ぶりで、槍型と戦うプレイヤーたちの中心になった。
そして数に圧倒されていた戦況に、変化が始まる。
「回避ーっ!」
聞こえた準トップ級プレイヤーの指示。
剣のガーゴイルが振り下ろす一撃は、衝撃波を巻き起こすため速い回避が必要になる。
吹き荒れる風に皆、慌てて身を守る。
「【エーテルストライク】!」
直後に放つ後衛の魔法を、ガーゴイルは当然のようにかわす。
すると反撃に放った剣の振り上げが、地面に黒炎を走らせる。
「よ、避けろぉぉぉぉ――っ!!」
剣のガーゴイルの周辺は、一番の激戦区となっていた。
新たに現れた小型ガーゴイルたちも、浮き島へ続く道を守るように布陣。
その前に立つ大型の剣ガーゴイルの大立ち回りは、まるで将軍のようだ。
「【飛び猿】」
そんな中、駆けつけてきた一人の短剣使いが華麗な跳躍で剣のガーゴイルに一撃を見舞った。
黒炎剣の直後の隙を、見事に打つ形だ。
「【ローリングアックス】!」
続けて戦士が両刃斧を脚に叩き込んでのけ反らせたところに、武闘家が駆け込んでいく。
「【破龍爆掌】!」
掌底から放たれる気の爆発は、竜の鳴き声を響かせ炸裂。
大きくガーゴイルの体勢を崩した。
ここには準トップと言えるメンバーたちが集まっているだけあり、見事な戦いを展開する。
「今だ! 頼む!」
「【サンダーストリーム】!」
「「「ッ!?」」」
しかし魔法を放つ瞬間、小型ガーゴイルたちの放った魔力弾が肩を弾き、【サンダーストリーム】の軌道がそれた。
連携の締めとなる魔法が外れたことで、流れは逆転。
剣のガーゴイルが、地面を強く踏みしめ放つ回転撃。
これを【耐久】型の前衛は防御で受けるが弾かれ、巻き起こった衝撃に低【耐久】のプレイヤーは転倒、パーティの陣形が崩れてしまう。
すると剣のガーゴイルは、足をもつれさせて倒れた女性魔導士プレイヤーを目標に捕らえた。
容赦なく振り下ろされる剣には、黒炎。
これまで見せなかった大技が今、魔導士を切り裂く。しかし。
「【装備変更】! とっつげきーっ!」
振り下ろされた剣は、【鹿角】によるパリィに弾かれた。
メイはここからシンプルな剣撃を三つ入れて、振り返る。
「お願いしますっ!」
「は、はいっ! 【サンダーストリーム】!」
メイの満面の笑みに誘われるように放った雷の魔法が炸裂し、剣型ガーゴイルを転がすことに成功。
「ないすーっ!」
そして、剣のガーゴイルが転倒したことで再び流れが変わる。
メイは大型ガーゴイルの足をつかむと、そのままハンマー投げのように回転。
「いっきます! 【大旋風】だあああーっ!!」
集まる大量の小型ガーゴイルに、そのまま突っ込んでいく。
一回転ごとに弾かれ、消し飛んでいくガーゴイルたち。
「な、なんだこれ……」
驚きの声を上げる、追従プレイヤー達。
メイはそれでも止まらず突き進む。
するとやがて風が渦巻き出し、ガーゴイルたちを引き込む嵐となった。
「まだまだ、ここから――っ!」
それでもメイは止まらない。
大型のガーゴイルを容赦なく振り回すメイを中心に、生み出す風は竜巻となり、空を飛ぶ小型ガーゴイルまで巻き込み消滅させていく。
数で大きく差を付けていたガーゴイルたちは、一転その物量がアダとなってしまう。
「ガーゴイルがたちが、吹き飛んでくぞ!」
「すげえ……! なんだよこれっ!!」
「せーのっ! それええええええ――――っ!」
吹き荒れる竜巻の中、投じられた剣のガーゴイルは近くの神殿の柱に直撃。
12本の石柱を破壊し、神殿を崩壊させた。
「こ、これが……!」
「野生の王か!」
目前で見る、戦局を変えうる少女。
付近のプレイヤーたちは、その圧倒的な姿に思わず息を飲む。しかし。
「わあー! 野生ではございませーん! ちょっとだけ腕力強めなだけなんですーっ!」
大型ガーゴイルの相手は余裕だったのに、そこだけは必死になって否定するメイにいよいよ唖然。
「……あっ、次が来るっ!」
「「「っ!」」」
しかしそんなメイの言葉に、慌ててその視線の先に向き直る。
神殿の屋根から降り、言葉もなく迫るのは四体のアサシンたち。
メイに投じられた大型ガーゴイルも、瓦礫となった神殿から身体を起こした。
「おいおい、さらにあのアサシンたちも来るのかよ……っ!」
「ヤバくないかこれ!?」
「大型ガーゴイルに加えてアサシンまでか……!」
ここに来るまでに倒されたパーティの目撃も多く、アサシンたちの登場を恐れるプレイヤーたち。
「敵を崩す度に、次のフェーズへ進んでいくタイプのクエストみたいね」
「そ、そういうことですか……っ」
「敵数も多いし、一気に攻めちゃいましょうか」
「そうしましょう」
「りょうかいですっ!」
一方メイたちは、ここで一つギアを上げることにした。
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