第676話 星屑無双を駆け抜けます!
「それでは――――よろしくお願い申し上げますっ!」
「……あれが、メイちゃんの召喚獣!」
「久しぶりに生で見られたーっ!」
「すげー迫力だなおいっ!」
宙を舞う巨大なクジラが、敵陣のど真ん中に飛び込み炸裂。
巻き起こる大波が、生き残った魔物たちを押し流して転倒を奪う。
「今だ! いけいけー!」
「掲示板組の力を見せてやるっ!」
駆け出すプレイヤーたちがそのまま、メイの作った隙間に駆け込んでいく。
星屑無双はすでに、驚異的な盛り上がりを見せていた。
「はいそこっ! 解放っ!」
二面待ちの【設置魔法】に、モンスターたちが踏み込んだ瞬間噴き上がる【フレアバースト】
大きな敵の一団が散り散りになれば、そこに駆け込んで行くのは近接プレイヤーたち。
「【ブーステッドブレード】!」
「【エクスプロードナックル】!」
「闇に還れ――――【プチ・ダークフレア】!」
続く連携の締めは、黒装備の少女が放つ『カフェくじ』のレプリカ魔法。
見事に敵を打倒する。
「「「ッ!!」」」
「【ライトニングスラスト】!」
ここでわずかに遅れてやって来た中ボス級に驚いたところで、飛び込んできた白夜の一撃が決まる。
「……あら、お見事ですわね」
見事な攻撃を決めた白夜の隙を突く形で接近してきていた、金属質の大蛇が牙をむく。
「ですが――」
白夜は慌てず、決めポーズと共にレイピアで大蛇を『指し示す』
「【裂空一矢】【バーストアロー】!」
すると飛んできたローランの矢が直撃して炸裂。
大蛇を一撃のもとに消し飛ばした。
「ちょ、ちょっと! わたくしをかすめましたわよ!?」
「あはは、ごめんね。思ったよりポーズが豪快だったから」
それでもきっちり、金属質の鱗を持つ大蛇を打倒。
「いかがでしたかしら、使徒長さん?」
「なんで私に聞くのよ。あと勝手に昇進させないで」
苦笑いのレンだが、この三人は白夜が先頭に出ることで素晴らしい速度で敵打倒を進めていく。
「オラぁぁぁぁーっ! 【ギガントハンマー】!!」
叩きつける強烈な一撃が、ゾンビたちを天高く突き上げ消滅させる。
「……【霊鳥鳳火】」
背後から現れたレイスに向けて放つ、まばゆい閃光。
霊鳥たちが集結して一羽の輝く巨鳥となり、空中で一回転して突撃。
「【加速】【リブースト】!」
魔力光の飛沫と共に、9割のHPを持っていかれたレイス。
その背後に引き連れてきたゾンビ剣士たち目がけて、ツバメが駆け込んでいく。
「【スライディング】【瞬剣殺】!」
手前のレイスの足元を、すり抜け放つ空刃。
単体戦を得意とするツバメが活きにくいクエストも、【瞬剣殺】を使える状況を作ることで見事に対応。
敵の一団を片付けてみせた。
「やるじゃねーか、アサシンちゃん!」
「……さらに戦い上手になっている」
「光栄です」
親指を上げてみせる二人に、ちょっと照れるツバメ。
「こ、この生成速度でも押されてるのか!」
一方運営陣は、その凄まじい快進撃を前に驚きの声を上げていた。
「よし……生成スピード最大でいこう!」
「その場合、モンスターたちの生成位置もさらに大きくばらつきます。それによってプレイヤーの戦線が崩れてしまう可能性もありますよ」
「分かってる。だが『止まってしまう』のはなしだ! 相手はメイちゃんたちなんだから、『無理』なくらいでちょうどいい!」
「はいっ!」
そして、星屑無双の敵生成速度は最大値へ。
「敵の増え方がさらに激しくなったわ! 【魔砲術】【フレアバースト】!」
しかしすぐさまこれに気づいたレンが、危うい箇所に先んじて攻撃を開始。
「ラグナリオン!」
白夜も従魔を呼び出し、せん滅能力を底上げする。
「いくぜ! 【金剛武装】!」
さらに金糸雀が『どんな攻撃を受けてもノックバックなしで進む』スキルを発動。
敵陣を割り込み、ど真ん中に【ギガントハンマー】で風穴を開ける。
急激に上昇した敵生成の速度に対し、メイたちも火力を上げることで対応していく。
「「「ッ!?」」」
しかしこれまである程度絞られていた生成場所が『戦場全て』になって事で、メイたちに付いてきたプレイヤーたちの背後に突然、真紅のドラゴンが生成された。
その口内に輝くまばゆい炎。
気づいたメイたちはすぐさま走り出すが、さすがに被害ゼロとはいかない状況だ。しかし。
「【砲弾跳躍】からの【材質変化:鋼】ぽよーっ!!」
ここで先頭に立ったのはスライム。
自らの素材を【鋼鉄】に変え突撃し、その凄まじい威力でドラゴンを弾き飛ばした。
「スライムちゃんっ! ないすーっ!」
「な、なんだこいつは……?」
「やるではないか!」
グラムはその意外性ある姿と見事な攻撃に驚き、アルトリッテは大きくうなずいた。
「て、照れるぽよ……っ!」
しかし生成速度『最高』は、ここで一気に無理難題級の超生成を見せる。
「な、んだこれっ!?」
「いくらなんでも出しすぎだろ!!」
もはや『バグ』を疑うほどの密集。
冗談のような生成速度で現れた敵の超大隊。さらに。
「【プロテスシールド】」
その最後方にいた王冠乗せのグランレイスが、敵大隊の防御力を大幅アップ。
これにはさすがに、参加プレイヤーたちも呆然とする。
「ふん、この程度で慌てるなど情けない」
「やはりあのレイスを潰し、防御上げをカットするのが正解であろうな!」
しかし『トップ』たちに、慌てる様子は一切なし。
最後尾のグランレイスを打倒し、スキル効果をカットしたところにメイの一撃を叩き込むという戦法を選択する。
「それなら、スライムちゃんも一緒にいきましょうっ!」
「りょうかいぽよっ!」
あふれ出した大量の魔物たちはもはや、全てを飲み込み打ち壊す巨大な波。
一列に並ぶ、三人と一スライム。
前に出たのは、アルトリッテだった。
「驚くがいい! 我が聖剣の力を見せてやろう! 【サンクチュアリ】!」
広がる光の領域。
前進してくる敵をしっかり引き付けたところで、ゆっくりと【エクスカリバー】を取り出した。
「いくぞ! 【グランドクルス】!」
聖剣を地に差すと、足元から立ち昇る猛烈な黄金の輝き。
天を焼くほどの巨大な十字聖光が突き上がる。
その威力はすさまじく、範囲内の魔物たちを一瞬で蒸発させた。
「【ソニックドライブ】!」
神槍を手に、消えゆく輝きの中を駆けるグラム。
最後尾のグランレイス目がけて、白銀の長槍を掲げる。
「【神槍雷破】ァァァァ!!」
収束するエネルギーエフェクト。
それが弾けた瞬間、投じられた神槍は轟音を響かせる。
高速移動に乗せて神槍を放つ、超高速超威力の最終兵器。
凄まじい速度で敵を消し飛ばし、そのまま敵陣後方に突き刺さり爆発した。
「「ッ!?」」
倒れても一度はHP1で蘇る【リヴァイブ】によって、グランレイスはギリギリ生き残る。
そこに新たに生まれ出す新たな敵。
またも壁が作り始められる状況の中、すでにスライムは【飛び跳ね】で距離を詰めていた。
「【巨大化】【材質変化:鋼】【ボディプレス】ぽよーっ!」
もはや三階建てレベルのマンション大になったスライムが、グランレイスたちを押し潰す。
「メイさん! お願いするぽよっ!」
グランレイスが倒れ、解ける防御スキル。
「おまかせくださいっ! 大きくなーれ!」
そっと隠すように【蓄食】で【腕力】上げのバナナを使用。
さらに【密林の巫女】で【蒼樹の白剣】を巨大化し、高く掲げたメイは――。
「ソードバッシュだああああああ――――っ!!」
放つ一撃が草原一帯を駆け抜けるほどの衝撃波を放ち、左右に残った敵の超大隊を吹き飛ばした。
戦場が一掃され綺麗になったところで、ブザーが鳴り響く。
制限時間が過ぎたことで、敵モンスターの生成もストップした。
「お疲れさまでしたーっ!」
「ふん、準備運動くらいにはなったな」
「良い連携だったぞ!」
制限時間が終わり、各自の視界に『集計中』の文字が現れる。
「いやー、楽しかったな!」
「最後は完全に見惚れちまってた」
「最高でしたっ!」
レンやツバメを始めとした一団に続いて、掲示板組などのプレイヤーも続々とメイのもとに集まってくる。
「――――星屑無双。集計が終了いたしました!」
そして最後。
駆け込んできた運営が、空に向けて手を上げる。
するとそこに、1の位から順番に数字が映し出されていく。
「これまでの最高は92005匹だった討伐数。今回の討伐数はなんと――――231458匹!」
「これは星屑史上、最高記録達成です!」
「「「おおおお――っ!!」」」
「そしてこの記録は、過去の様々なVRMMOイベントで達成された討伐の……世界記録となりました!」
「「「おおおおおおおお――――――っ!!」」」
「やったー!」
「大忙しだったわね!」
「皆さんお見事でした」
「ふむ、この聖騎士も手を貸したのだ。こうでなくてはな!」
「当然だ。星屑の最終兵器がいて敗北など許されない! わっはっは!」
「やったぽよーっ!」
こうして三つの最強格トップパーティが参加した星屑無双は、見事VRMMO界の歴史に名を残した。
皆とハイタッチで喜ぶメイ。
イベント初日から、過去に類を見ないほどの大盛り上がり。
新記録達成の記事はエンタメ界のニュースとなって、メイたちを中心にした写真が各ウェブサイトを飾ることとなった。
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