第349話 動き出す古代都市です!
「それにしても、厳しい仕掛けだったわね……」
メイのパーティだったからこそ、異常な強敵を生み出してしまった『コピー』という仕掛け。
「この中ボス……ほかの場所でも出てこないことを祈るのみよ」
「ほ、本当ですね……」
銀色の雫という、古代文明の遺跡だからこそ出てきた中ボス。
使い回してくる可能性があるのではないかと、震えるレンとツバメ。
【氷塊落とし】:中サイズの氷塊を落とす。敵の攻撃を防ぐ盾や、道を塞ぐために使うことも可能だが10秒ほどで砕けて消える。
「すごくありがたいけど……ニセメイと戦った報酬が、見たことのある中級魔法って考えると微妙な感じねぇ」
ボスを倒して薬草が出てきたくらいの感覚に、レンは思わず苦笑い。
「今回は最強の敵になってしまいましたが、基本的には普通の中ボスですからね……」
「しかも門番ではあるけど、勝てば道を開いてくれるってわけでもないのね」
あらためてホールの円のラインや壁を確認するも、変化はない。
やはり遺跡都市は、その外縁しか開かれていないようだ。
「戻りましょうか。一度考古学者のところに行って、その後また中央部分に進むクエストを探すかどうか決めていく感じでどうかしら」
「はい、それでいいと思います」
「あのロボットちゃんに、また会いに来たいねぇ」
どこか不器用な動きの植物園ロボットを思い出して、ほほ笑むメイ。
ツバメもこくこくとうなずく。
こうして三人は下層フロアの中央ホールを出ることにした。すると。
「あれ……?」
異変に気付いたメイが、足を止める。
「……どうしたのかしら」
青い光が、壁や足元に幾重にも刻まれた円形ラインに滲んでいく。
「遺跡が起動した?」
「でも、道は開いてないよ」
「これってもしかして……中央層のホールの方に変化が起きてる?」
メイたちは表に出て、中央層のホールに駆け付ける。
すると、そこにあったポータルにも光が灯っていた。
「古代都市が……動き出しました」
「すごーい……なんだか不思議な感じだね」
無人の遊園地のアトラクションだけが動きだしたかのような異質さに、メイたちは辺りを見回してみる。
しかし、それでも人の姿はない。
「やはり一度、考古学者さんのところに戻ってみましょうか」
「それがいいわね。何が起きてるのか知りたいし、このまま中央内部に進めるってわけでもなさそうだから」
さっそく三人は、動き出したポータルからの移動を図る。
行き先はなぜか、王都のみ。
しかもたどり着いたのは中央ではなく、王都北部にある過疎ポータルだった。
メイたちは考古学者に、遺跡について確認しに向かう。
「こんにちふぁ! 遺跡が突然うごき出しまふぃた!」
またも猫まみれになったメイが考古学者のもとに戻ると、考古学者は興奮に震えていた。
「まさか、あの街を再び目覚めさせることができるとは……っ」
「目覚めた……ですか?」
「どういうことかしら、なんか情報というか段階が一つ飛んでる感じがするんだけど」
「考古学者さんは、目覚めさせることができたと言っていました」
「私たちには勝手に動き出したように見えたけど、セリフを聞く限りは『ついに動かすことに成功した』って感じなのよね」
レンは首を傾げる。
浮上の装置と、起動の装置は別だったはず。
そしてニセメイは驚異的なボスだったが、あの銀の雫を倒したことで装置が起動したとは思えない。
そして『世界のどこかにある』と言っていた起動装置の発見は、もっと発見の難易度が高そうだった。
「『ラプラタ』……そこはかつてロマリアへと移ってきた者たちが王都を建立する前に住んでいたと言われる、古代都市」
一方、考古学者の方は興奮が止まらない。
「果たして何が待っているのか……さっそく研究に出かけなくては! 中央部の道を開くカギはすでに入手してある! 僕は先に行っているぞ!」
そう言い残して、荷物をまとめた考古学者は飛び出して行った。
「そういうことなら、私たちもラプラタに戻りましょうか」
「そうですね。なんであれ、中央部から先に進めるというのであれば、ぜひ行ってみたいです」
「むぐぐ」
いつの間にか、猫たちの親分みたいになっていたメイ。
ツバメはメイの身体中に張り付き、頬をこすり付けている猫たちを降ろしながらうなずく。
レンは降ろした猫がまたメイに飛びつかないようガードする。
「なんだか、一段と動物たちに好かれてるわねぇ」
「とても和やかな光景です……」
そして無事、全ての猫をはがし終えたメイたちは、再び遺跡都市ラプラタへと舞い戻ることにしたのだった。
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