第282話 お次のご予定は

 雪原の冒険を終え、メイたちはラフテリアに戻ってきた。

 ポータル近くにある酒場に行くと、メイは店に置かれている広報誌に恐る恐る近づいていく。


「ど、どうなってるのかな……表紙は……っ」


 もしまた自分が写っているのなら、何かの間違いで素敵なお姉さんっぽく見えたりしてないだろうか。

 両手を組み、祈るような気持ちでそっと表紙を見る。


「……あ、かっこいい!」


 そこに写っていたのは、ヴァイキング船クエストへ挑もうとする四人が並んで進む姿。

 決戦におもむく勇者たちのような構図に、メイは「わあ!」と歓喜の声をあげる。しかし。


「……な、なによこれはぁぁぁぁ――――ッ!!」


 レンはその内容に悲鳴を上げた。

 そこには目を金色に輝かせながら、不敵な笑みを浮かべるレンの中二病モードがバッチリ写っている。

 しかも相対する黒騎士リズと共に、見開きで。

 そしてそこに描かれた文字は『闇の使徒vs闇の使徒。黒き者たちの戦いの行く末は――』という完全に世界観を出したもの。


「また……恥ずかしい姿をさらすことになってしまったわ……っ」


 レンは顔を真っ赤にしながら頭を抱える。


「見切れています」


 ゲスト参加の白夜よりモブっぽくなっているのは、その存在感の違いだろう。

 それでもしっかりパーティの一員として映っていることに、ツバメは少しうれしそうにうなずく。

 大勢のイベント参加者と共に海竜やヴァイキングに立ち向かう画は、とても見がいがある。


「あっ! 犬ぞりの写真もある! これもみんな一緒ですっごくいいよー!」


「見て見てー!」とレンやツバメに見せて、うれしそうに尻尾を振るメイ。

 読み進めていくと、そこには近々行われるイベントの情報なども載せられていた。


「王都ロマリアで毎年恒例のイベント開催だって。レンちゃん、王都ってどんなところなの?」

「ロマリアはきっちり舗装がされた整然とした街ね。とにかく広くて雰囲気も明るいし、ヨーロッパの大きな首都って感じで人気なのよ」

「そうなんだぁ」


 早くもその目を輝かせるメイは、思わずワクワクしてしまう。


「お店はもちろん、いくつかのジョブのギルドもあるから、いつでもプレイヤーたちであふれてるの」


 人が多ければ、情報や集まる物品も多い。

 また王都のポータルは全ての大陸につながっていることもあり、無数のパーティがこの王都ロマリアを本拠地としている。


「王都とされる街はいくつかあるけど、ロマリアが一番栄えて発展してるイメージね」

「イベントは毎年この時期の連休に行われていて、最大級の人数が集まります」

「おっきなイベントなんだねぇ」

「ここ最近はダンジョンに砂漠、雪原の街ときましたし、たまには大きな街というのもいいかもしれませんね」

「いいと思いますっ!」

「そうね、それじゃ今度は王都のイベントに参加してみましょうか。聞いてる感じだと、慌ただしく街を駆け回ってあれこれ忙しくするって内容みたいだけど」

「連休なら、皆でいっぱい遊べるね!」


 イベントづくめの連休を想像して、うれしそうにするメイ。

 レンも「やりましょう」と乗り気だ。


「あ、あのっ」


 するとツバメが突然、何かを思い切ったかのように声をあげた。


「どうしたのー?」


 どこか必死な様子のツバメに、メイが首と尻尾を傾げる。


「そ、そういうことでしたら、こ、今度は……」

「今度は?」

「私の家で合宿というのはいかがでしょうか……っ!」

「「…………」」


 突然の申し出に、思わずポカンとする二人。

 ぎゅっと強く目を閉じていたツバメは、恐る恐る目を開ける。


「いいのーっ!?」


 するとそこには、いよいよ目をキラキラ輝かせるメイの姿があった。


「いいじゃない。ツバメがいいんだったら、また皆で合宿したいわね」


 レンもすでに乗り気のようだ。

 二人の反応を見て、ツバメは大きく安堵の息をつく。


「今度はツバメちゃんのお家で、三人一緒にイベント!」

「王都のイベントは『星屑』最大級の参加人数が見込まれるし、楽しい連休になりそうね」

「ああーっ、もう今から楽しみだよーっ!」


 そう言ってメイは、ツバメの背に抱き着く。


「ねっ、ツバメちゃん!」


 そして向けられる、満面の笑み。


「はい、とても楽しみです……っ」


 ツバメも少し照れながら、ほほ笑み返してみせた。

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