第149話 ハマるレン

「メイ、ツバメお願い。【設置魔法】をもう少し練習させて欲しいの」

「りょうかいですっ!」

「はい」


 現れた五頭の狼と、それを率いるオーガというパーティ。

 ツバメは狼のもとに、メイはオーガのもとに駆ける。


「【加速】」


 囲んで敵を攻撃する習性を持つ狼。


「【跳躍】」


 ツバメはその隙間を抜けてから大きな跳躍。

 狼たちのターゲットを、見事に奪い取る。


「【バンビステップ】」


 北部森林の中ボスであるオーガに迫るメイ。

 鉄棍棒の降り下ろしに合わせて、その場でくるっと一回転。

 なんなく攻撃をかわし、軽く攻撃を入れておく。

 するとオーガは、メイに向けて手を突き出した。

 その手の平に、輝く炎。


「がおおおおーっ!」


 魔法は発生前に【雄たけび】で強制キャンセル。

 やっかいな中ボスを、見事手玉に取ってみせる。


「準備できたわ!」

「いきます!」


 ツバメは狼たちを引きつれ、レンの設置した魔法陣のもとへ。


「【加速】【跳躍】」


 直径2メートルになる魔法陣を跳び越えると、狼たちはそのまま追ってきた。

 直後、上方へ突き上がる強烈な氷塊弾。

 設置【フリーズストライク】によって、狼たちは粒子となって消えた。


「いい感じだわ! ありがとうツバメ!」


 うれしそうに笑うレンに、小さくうなずいて応えるツバメ。


「レンちゃん、次はわたしが行くよーっ!」


 続くのは、オーガの行動をすでに完全攻略したメイ。


「それなら最後は……っ! 【魔眼開放】【設置魔法】【フレアバースト】!」


 レンはここで、さらに一段階上のコンビネーションを試行。

 メイは余裕の足取りで魔法陣の前に来ると、そのまま【ラビットジャンプ】で空中へ。

 あとはオーガが魔法陣を踏むだけ。

 しかし走るオーガは意外にも、ここで大きく踏み込んだ。

 そしてそのまま大きく跳躍。


「……賢いわね。目前で狼たちがやられるところを目撃したからなのか、中ボスだからなのか。魔法陣を跳び越えて来るのね……でも」


 パチンと指を鳴らすレン。

 直後にすさまじい勢いで豪炎が燃え上がり、空を焼く。


「【設置魔法】は、任意の発動もできるのよ」


 上がる無情の爆炎に、オーガは焼かれて消えた。


「メイもありがとう! このスキル本当に楽しいわ!」


 レンは今回の戦火に、満足そうな息をつく。


「メイとツバメが前衛のパーティなら、この魔法はいい武器になるわね。それじゃあとは……」


 レンは【浮遊】で空中へ。


「大丈夫、まだすぐそばにいるはずだわ」


 その言葉に、メイもすぐさま走り出す。

 霧が晴れてしまえばもう、見つけることも追いつくことも難しくない。

 大きな荷物を抱え、杖を手にした中年男性のもとに三人は急行する。


「あなたが地図製作者の『イノー』でいいのかしら?」

「いかにも、私がイノーだ」

「私たちも、冒険の地図を作りたいと思っているの」

「ほう……ならば我が技術を使うといい。より良い地図で世界を把握し、全てを踏破するのだ」



【地図の知識】:マップを見た際に、現在の自分の位置や向きが即座に分かる。また見つけた物、行った場所、罠等がマップ帳に記される。



「あっさりもらえましたね」


 予想以上にすんなりとスキルブックをもらえて、少し驚くツバメ。


「あくまで、世界のどこかにいるNPCを見つけるっていうクエストだからね。そういう意味では北部森林地帯っていうのはタイミングが悪かったんだけど……」

「結構楽しめてしまいました」


 先頭のメイは、行き先に迷わない。

 そのうえ新しいスキルも練習できてしまい、流れはむしろ良い感じだった。


「ありがとうございましたっ!」


 メイは去って行くイノーに、ブンブンと手を振る。


「これで、欲しかったスキルは一通りそろったわ」

「マッピング、確かに便利そうですね」

「いよいよ、ダンジョンに向かうのっ?」

「そうなるわね。でもその前に、マーちゃんのところにも寄っていきましょう」

「マーちゃん!」


 メイの尻尾がピンと張る。

 それは先日のヤマト天地争乱で、地軍として一緒に戦った仲間の商人だ。

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