第43話 ジャングルの王者
目前に立ちふさがった、裸足の猫耳少女。
キング・ゴールデンリザードは、その姿を確認すると猛烈な咆哮をあげた。
「わっ!」
飛び込みから叩きつけた前足が、地面を大きく跳ね上がる。
「うわわっ!」
続けざまに振り上げた爪が、風切り音を鳴らす。
「うわわわわーっ!」
特大トカゲはそのまま身体を半回転し、巨大な尾を振り上げた。
見たことのないモーションの連続と、その異常な威力に驚かされる。
しかしメイは、移動系スキルを向上させる【裸足の女神】によってその全てを無事回避。
びっくりしたーと、息をつく。
「え、まだっ!?」
しかしこれでは終わらない。
キング・ゴールデンリザードは、振り上げた尾をそのまま叩きつけにくる。
とっさの横っ飛び。
尾は深々と地面にめり込んだ。
「ッ!?」
さらに、割られた地盤が刃の様に突き上がる。
まさかの地変系スキルだ。
「【ラビットジャンプ】! 【アクロバット】!」
これを前方への大きなジャンプでかわしたメイは、空中で一回転。
そのまま攻勢に転じる。
「がおおおお!」
空中から始める反撃は【雄たけび】から。
その衝撃に硬直した特大トカゲの胸元に、落下の勢いにまかせて剣を叩き込む。
「【ソードバッシュ】!」
HPゲージの減少は1割弱。
「弱点がなくなってる……っ」
なんとキング・ゴールデンリザードからは、弱点が消されていた。
「ッ!!」
特大トカゲはわずかに首を下げると、口から砲弾のような勢いの毒液を吐き出す。
慌てて避けた毒液の砲弾が、木をへし折った。
「うわ……」
その威力に、さすがに驚くメイ。
直撃すれば大ダメージ、さらに毒によるHPの減少が始まる。
ジャングルの王にふさわしい、恐るべき攻撃だ。
そして始まる、毒砲弾の連射。
「【装備変更】!」
メイは【猫耳】を【鹿角】に変える。
「【バンビステップ】!」
怒涛の勢いで吐き出される毒の砲弾を、【鹿角】で強化された【バンビステップ】で右へ左へとかわしていく。
【裸足の女神】でさらに早くしなやかになった足運びなら、初見の攻撃でも問題なし。
メイが最後の毒砲弾をステップでかわすと、キング・ゴールデンリザードは走り出す。
巨体を使った体当たりだ。
「【ラビットジャンプ】!」
これを後方への跳躍でかわしたところに、振り下ろされる爪。
「きたっ!」
シンプルなこの攻撃に合わせて、メイは【鹿角】を光らせる。
「とつげきー!」
敵の攻撃に合わせて、【鹿角】による【突撃】を真正面からぶつけにいく。
この『衝突』のタイミングが合った際に【鹿角】装備が生み出す効果は、パリィやジャストガードに近い。
狙い通り、大きく弾かれ合う両者。
しかしそこからの復帰は当然、メイの方が早かった。
「とつげきー!」
動けずにいるキング・ゴールデンリザードに、再び雷光輝く【鹿角】で特攻を仕掛ける。
弾き飛ばされた特大トカゲは、そのまま木に激突した。
「【モンキークライム】!」
すぐさま隣の木を駆け上がって跳躍。
「【ソードバッシュ】! からの――――」
叩き込む一撃。そして着地と同時にもう一回転。
「【ソードバッシュ】!」
駆け抜けていく二発の衝撃が、2割強まで特大トカゲのゲージを削り取った。
するとキング・ゴールデンリザードは、再び毒の砲弾を吐き出す。
これをメイがかわすと、猛然と飛び掛かってきた。
放つ尾による攻撃は、右から左への振り上げ。
「【バンビステップ】!」
これをメイは早いステップで回避する。
しかし避けたところに来る返しの尻尾攻撃が、強く地を擦る。
立ち込めた土煙が、特大トカゲの身を隠してしまう。
「見えなくなっちゃった……」
注意深く、メイは視線を走らせる。
特に気を使うべきは、体当たりと毒液だ。
走る緊張感に、思わず息を飲む。
「え? ええええーっ!?」
だが土煙の中から突然飛び出して来たのはトカゲでも毒液でもなく、一本の樹木だった。
まさかの事態。
尾で弾かれた大木の飛来に、さすがのメイも虚を突かれる。
「バンビ――――うわあっ!!」
飛んで来た樹木の枝が、引っ掛かる。
弾き飛ばされたメイは、衝突ダメージを取られて倒れ込んだ。
「痛たたたぁ」
高い耐久値を誇るメイの高いHPが、3割近く持っていかれている。
他のプレイヤーなら一撃死でもおかしくない威力だ。
「やったなー!」
すぐさま起き上がったメイに追撃を仕掛けに来た特大トカゲは、その爪を大きく振り上げる。
これを後方へのステップでかわすと、上げた腕をそのまま振り下ろしにきた。
「それならもう一回だあっ! とつげきー!」
単純な爪の振り下ろしに、メイはとっさに【突撃】を合わせにいく。
これも見事、タイミングを合わせることに成功。
再び弾かれ合う両者。
ここでメイは、大きく手を突き上げる。
「よろしくおねがいしまぁぁぁぁーす!」
輝く【召喚の指輪】
体勢を立て直したキング・ゴールデンリザードは、猛然と飛び掛かって来る。
しかし特大トカゲの振り下ろしは、目前の魔法陣から出てきた巨グマに受け止められた。
そのまま始まる、巨体同士の力勝負。
「がんばれー!」
拳を振り上げて応援するメイ。
すると親グマは、そのままキング・ゴールデンリザードを豪快に投げ飛ばした。
地を転がったところに駆け込んで行く親グマが、大きく跳躍。
【グレイト・ベアクロー】を叩き込む。
剛腕による強烈な一撃が、特大トカゲを地面にめり込ませた。
「ありがとー!」
メイに背中を向けたまま、親指だけ立てて帰っていく親子グマに大きく手を振る。
キング・ゴールデンリザードのHPは、残り6割を切っている。
「す、すげえ……」
一方。半死半生でこの戦いを見守っていたプレイヤーたちは、その迫力に夢中になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます