青春捧げて30000戦!~村を守るために戦い続けた少女、モンスターはどれだけ倒しても絶滅しないと知った時には《最強の野生児》になってました~

りんた

第1話 初体験はVRMMOで!

 星屑のフロンティア。

 その最新フルダイブMMOは、五感の全てを『感動』させる奇跡のゲームとして誕生した。

 紹介動画の時点で圧倒的な話題性と人気を獲得し、発売前から大盛り上がり。

 今世紀最高の大型タイトルとして、本日ついに発売を迎えた。


「やったあ!」


 届いたばかりのフルダイブ用ヘッドギアを抱きしめ、歓喜の声をあげる少女。

 青山さつき。

 まだ10歳の彼女は、人生初めてのゲームにこの『星屑のフロンティア』を選んだ。

 ゲームにふれたことのなかった彼女がこのタイトルを選んだのは、その美麗すぎる世界を目の当たりにしたからだ。

 完璧な精度で再現された広大な世界は、もはや現実と変わらない。

 大型電気店で体験版として置かれていたVRゴーグルでその世界をのぞいた瞬間、完全に魅了されてしまった。


「きれいな海、大きな山、砂漠に遺跡に雪山。これで世界を冒険できちゃうんだーっ」


 即座に両親に頼み込んで予約、発売日を今や遅しと待ち焦がれていたのだ。

 冒険に思いをはせ続けてきたさつきは、もうワクワクが止まらない。


「本当に大丈夫なの? MMOって大人から子供まで大勢の人がいるんでしょう?」


 大喜びのさつきに心配の声をかけたのは、青山やよい。

 さつきの母親で、おっとりとした雰囲気をした女性だ。


「大丈夫だよ! 小学生プレイヤーだってたくさんいるんだからっ」

「さつきは素直で優しい良い子だけど、抜けてるところがあるから……」

「もうー、大丈夫だよぅ!」


 さつきはぷくっと頬をふくらませてみせる。

 怒っているはずなのに、なんか可愛く見えてしまうのは母親に似た結果。

 ただ、やよいが心配になるのも無理はない。

 実際さつきは、テストで満点を取りながら名前を書き忘れるなんていうベタなミスを、何度もしでかしているのだから。


「それじゃさっそく始めるね! お母さん、最高のプレゼントをありがとう!」


 満面の笑みでリビングを出ると、ぱたぱたと駆け足で部屋に戻る。

 さっそくヘッドギアをかぶって、さつきはギュッと目を閉じた。


「いよいよだ……」


 生まれて初めてのゲーム体験。

 電源を入れると、その視界が一変した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る