第106話 突然の来訪者たち【改稿しました】

あの後ボクはみんなと雑談しながら車に揺られた。

いくら遠回りをしたと言っても少ししたらボクの家に着いてしまい、みんな名残惜しそうに通話から去っていった。


「大丈夫か?」


玄関まで送ってくれた六条さんが心配そうな表情で聞いてきてくれる。


「大丈夫です、ここまで送ってくれてありがとうございます」


「...まあ何かあったら連絡してくれ。それじゃあ」


少し考えるような素振りを見せるもそう言って六条さんも家に帰っていった。


ボクも家の中に入ると、部屋の電気がついていた。そういえば今日は姉さんが来る日だっけ。


「おかえり」


「ただいま」


帰宅の挨拶をしたボクたちはいつもなら簡単に出てくるはずの続く会話が出てこなかった。


しばらくの沈黙の後、お姉ちゃんが口を開いた。


「ゆーくんが帰ってくる前に六条さんから連絡があったわ」


「そっか」


「お母さんと会ったみたいね」


「うん」


「正直に言ってお母さんが何の目的でゆーくんに接触してきたかはわからないけど...ごめん、やっぱりなんでもないや、忘れて?」


「え?う、うん...わかった」


気になるラインで話を止められたので自分なりに考えていると、いつの間に移動したのかキッチンの方からお姉ちゃんの声がした。


「それよりさ、ごはん食べよ~今日はお姉ちゃんがつくったの!」


お姉ちゃんが何を言いかけていたか結局わからなかったけど、作ってくれたご飯を食べながら雑談をして、気が付いたらボクはベットで瞼を閉じていた。



◇◇◇


夜が明けて次の日、今日は勉強配信をお休みにしているので朝はのんびりできると思っていた矢先に家のインターホンが鳴った。


「はーい」


まだ朝の9時前だというのに訪ねてくる人は一体誰なんだろう。そんなことを思いながらモニターを確認すると見知った顔が三人並んでいた。


「ゆーうーきくん!あーそーぼー」


「おい、リー!近所迷惑だぞ!」


「そういう六条さんも近所迷惑です」


そこには莉奈さんと六条さん、そして草薙さんが立っていた。今日うちに来るって言ってたっけ?


「えっと...どうしたんですか?」


「詳しいことは後!とりあえず中にいーれーてー」


小学生が突然家に来たようなテンションで話す莉奈さん。


いくら夏休みとは言え朝から玄関にこの人数を詰めておくのはアレなので、とりあえず三人を家に入れる。



「昨日の今日で押しかけて本当にすまない」


家の中に入ったらまず六条さんが謝罪の言葉を口にした。


「えっと、全然気にしないでいいですよ?」


ボクがそういうとなぜか莉奈さんが得意げに話す。


「そーだよ気にしない、気にしない!」


「お前は気にしろよ!」


「朝から暴力は反対!...六ちゃんってもしかしてDV彼氏?」


「断じて違う!」


またいつも事務所でよく見る光景になり安心感を覚える....ここ事務所じゃないけど


実を言うと昨日起きたことを引きずって朝もいつもより気分が曇ってしまっていたのだ。

もう何度目かのこの光景から友達同士のそれとは違う暖かさを感じる。それがとても居心地が良くて止めるべきなのについついそのままにしてしまいそうだ。


そんなことを考えながらボクは二人の様子を笑いながら眺めていたのだった。

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