第72話 ホラゲーやります...やりたくないけど

今回ゆい達がやるホラゲは20年以上昔から続くシリーズで、待望のVRがつい三か月ほど前に発売された。最新作が出るたびに驚かせてくれたストーリー性とグラフィック。今作はVRということもあって3時間ほどでクリアできる短い物になっているが、その中身とグラフィックは歴代シリーズの中でも指折りの作品に仕上がっているという前情報がある。


要するに、敵がメチャクチャリアルに作られているのだ。


<ゆ い>『別に、他のホラゲなら...大丈夫なんだよ?』


<ラムネ>『あ~リアルでありそうなヤツはだめなんですかね?』


<ゆ い>『本物見たいで...怖い...』


【コメント】


 :何このカワイイ生物

 :最近のはやたらビジュアルがリアルになってるから怖いのわかる

 :怖かったらお兄さんの所においでよ....グへへ

 :↑通報。お姉さんの所の方が怖くないわよ~

 :草


ゆいの抵抗虚しくゲームは開始されるのだった。



◇◇◇


今作は、近未来の時代設定となっており、主人公は宇宙軍特別部隊所属の副隊長となっている。

ストーリーは連絡が取れなくなった宇宙ステーションを調査するというもの。ステーションに乗り込んだ所からゲームは始まる。


<隊長>『よし、ステーションに入った。各員状況報告』


<ゆ い>『えっと...“全員居ます。装備異常なし”』


<ラムネ>『へぇ〜ここも選択筋が出るんですね』


流石に1人プレイのゲームなので、ゆいが操作してラムネが横に着いて見ているといった状況。実はラムネ、ゆいが怖がる様子...プレイを実況しやすいように事前にクリア済みだったりする。


<隊長>『よし、ここからは二手に分かれる。副隊長、二班はお前が指揮を取れ一班は俺が』


その後案の定、一班と連絡が取れなくなる。合流の為ステーション中央に向かっているさなか、ヤツは現れた。


<ラムネ>『ゆいちゃん左上の方になにか見えないかな?』


<ゆ い>『ら、ラムネ先輩!?怖いこと言わないでくださいよぉ』


震えた声を出しながらラムネの言う通りに左上に注目してみる。


<ゆ い>『な、何も居ないじゃないですかぁ』


力が抜けたような声でそう返しながら視点を元に戻す。それを聞きラムネはニヤリと笑った。


 :悪い顔だw

 :あーwww

 :俺この先の展開分からないんだけど!

 :まあ見とけって


次の瞬間ゆいの悲鳴が視聴者の耳を貫いた。


<ゆ い>『なんで!なんで後ろにいるの!?やだぁやだぁ』


 :耳がぁ

 :悲鳴助かる

 :なお、ゆいちゃんが助かってない模様

 :↑草


何かが滴る音を耳にしたゆいは、音のする右側に視点を動かした。そして、視界に映ったのは手を肩におけるぐらい近くに立つゾンビ。


実は本来、少しでも右に視点がふれた時に目が赤く光り、蜘蛛のような動きでプレイヤーに近づいてくる。


隠し演出の一つで、右に視点が一切動かなかった場合、すぐ右横にゾンビが立っているという演出に変化するのだ。


勿論ラムネは知っていた。


これほどまでにタイミングが合うという事は...


ラムネが一体何回プレイしたかはわからないが、数回程度では無理なことは誰の目にも明らかである。


もう既に泣きそうになっているみたいだけど、まだまだゲームは始まったばかり。勿論ゆいの悲鳴もまだまだ続く。

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