第6話 〈ボク〉が始まる前の話
「社長!私を殺したいんですか!?」
いつの間にか戻ってきていた草薙さんが割って入ってきた。
「草薙ならできるだろ~」
「無理です!」
笑う父さんに一喝する草薙さん。ボクもさすがに無理だと思うよ。
「ていうか、ゆうき君は何でそんなに冷静なんですか!?」
「えっと、、自分より慌ててる人を見ると逆に落ち着くッ!ごめんなさい!失礼なことを、、」
「ふふ、大丈夫ですよ」
「そうだぞー」
草薙さんが笑みを浮かべながらそう言ってくれる。
...その後ろでなぜか自信ありげに頷く父さん。
「...社長」
「どうした?」
この時、草薙さんの顔に影がおりているように感じた。その声にボクは背筋がゾクりとする感覚があった。
「一旦隣の部屋まで来てください」
「ど、どうした?か、顔が怖いぞ..」
「いいから!」
「...はい」
父さんは渋々部屋を出ていった。
「ごめんね、少しお父さん借りるねすぐ戻るから」
「あ、えっと、大丈夫、です」
そう言い残し草薙さんも部屋を出ていった。
(”独り”か...)
この部屋に一人残されたボクは暇を持て余したのでスマホを弄っていようと取り出す
「あ」
そこには2%と表示されていてあと少しでこの
スマホをしまうとやっぱり暇になってしまうので、浮いていた足を少しプラプラさせて遊んでみる。
『なんで社長はいつも....』
『それは信頼しているからだな』
『限度があるんです!』
『ゴメンナサイ』
隣の部屋にいる二人の声が少し耳を澄ましてみると聞こえてくる
「ふふ」
「なにか面白いことでもあったかい?」
「六条さん」
おかわりをカップに注ぎながら話してくれる。
「隣から聞こえてくる父さんたちとの会話がすこし」
六条さんと話しているとすごく落ち着いて言葉を紡げる。これも多分六条さんのトークスキル?が高いからなんだろうね。
「隣?...ああそういうことか」
少し考える仕草をしながらそう答える六条さん。
「あ、あの少し気になったんですけど、父さんっていつもあんな感じなんですか?」
父さんは家ではあまり口を開かなかった。
「ああ、まあ今日は少し羽目を外しているようだけどね」
今日少し話して分かったことだけど、多分この会社にいるときの父さんが本当の父さんだ。
(じゃあ、どうして...)
そんなことを考えていると父さんたちが戻ってきた。
「ゆうき!お前の初配信はだな少し伸びたんだ、明日になったんだ」
「違います」
ぴしゃりと否定してくる草薙さん。
「ゆうき君の初配信日は2週間後です」
「ず、随分と早いんですね、、、」
「もともと準備してあった物に少し手を加える程度だったので本当は3日くらいでいけるんですけど」
「あれだ、ゆうきお前家がないだろ」
「あ」
ここまで色々なことがあり過ぎて忘れてたけど、家を追い出されたんだった。
「それでだ」
押し入る様にズイッと前に出てきた父さん。
「だが安心しろ!お父さんちゃーんと家、用意してあるから」
「え?」
ボクが唖然としていると父さんが得意げに続ける。
「ん?スペックが気になるのか?それはだな~」
「それより実際に見たほうがいいと思いますよ!楽しみも増えますし!」
「それもそうだな!」
「え?え?」
すっかりと二人のペースに飲まれてしまったボクは流されるがままになっていった。
◇
なんだかんだで今、父さんと草薙さんと六条さんの三人でボクの新居(らしい)の前にいます。
その場所を前にボクは自然と口が開いてしまっていた。
「ねえ、父さん」
「どうした?」
「その新しいボクの家ってさ....この凄そうなマンション、、、なの?」
そこには新築とも思えるほどにきれいなマンションが建っていた。しかも駐車場に止まっている車はボクでも知ってるような高級車が何台も止まっていた。
「そうだぞ~」
そのまま父さんに後ろから押されるような形でエントランスに入っていった。
◇
凄すぎるよここ!!カードロックだよ!!そしてここほんとに新築なんだね、、いくらするんだろう...怖いなあ
「今日からここがゆうきの家だぞ!」
父さんがそういいながらドアを開ける
「お、おじゃましまーす」
そういいながら入ると三人に笑われた。
「ふふ、ゆうきくん、ここは君の家なんだよ?」
「自分の家に入るのにお邪魔しますなんて言うのはおかしいだろう?」
「えっと、じゃあ、、た、ただいま?」
ボクがそう聞くと
「「「おかえり」」」
三人ともそう答えてくれた。
◇
ボクの新しい家を一通り案内してもらったけど、一つ言いたいことがあるの。
「えっと、いろいろ言いたいことはあるけど...なんでもう家具とかも全部そろってるの!!!」
「ああ、そのことか。それは六条と蒼が見繕ってるぞ」
「なんで姉さんが!?」
「それともう少し先になるが蒼もここに住むからよろしくな」
「え?」
「その辺はおいおい説明するから」
それから色々と説明を受けて、気が付いたら時計の針が3周していたことをここに残しておくよ...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます