第7話 観測
一方、管理棟で観測機器のデータをスタッフに収集させているひよこの仕事はこれからだった。次々と設置された観測機器からのデータがひよこの端末に流れ込んでくる。
「観測機器のデータは?」
画像一杯のピンク色の光線が消えるとランは指揮席に腰を下ろしてオペレータ達に指示を出す。
「各ポイントのセンサーのアストラルダメージ値、すべて想定威力を越えています」
オペレータの言葉にランは椅子に座りなおす。
「これで威力に関しては十分ってことか……」
そう言いながらランはモニターを眺める。彼の法術の指南でここまでのデータを出せて安心しているようにコックピットで首をひねっている誠を見つめていた。
「この結果に見合う予算は出しているんだから……。当然このくらいの成果は無いと困りますよ」
高梨はそんなシンを見ながら次射の準備の指示を出しているひよこを眺めていた。
「指揮官としてはこの兵器はどうなんですかね?クバルカ中佐」
そんな高梨の言葉に、ランは少しばかり表情を曇らせた。
「運用が難しい兵器だよな。確かに攻撃範囲やその効果を考えると、使い方によっては非常に有効な兵器であることは間違いねーが、チャージの時間が長すぎる上に使えるパイロットが限られてくるとなるとそうそう前線に出せる代物じゃねーし……それに菱川の最新機の07式じゃあ法術対策の鉛合金のシェルをコックピット外周に張り巡らした装置まで積んでるらしいじゃねーか。それなりの軍隊相手に一戦するときに使える兵器じゃねーな」
ランは高梨を見つめながらそう言って頭を掻いた。
「やはり厳しいですね、中佐は。ただうちはあくまで司法執行機関で戦争をする軍隊じゃないですから。テロリスト相手なら問題は無いでしょう。こなれてくればうちの出動が予想される大概のケースには対応可能だと思いますよ」
高梨の言葉にランは渋々うなづく。
「そうなると、余計あの馬鹿娘達の教育が必要になるわけだ」
そう言うランは手元の端末を操作して05式乙型の隣のテントの下で、まるで子供のように言い争いをしているかなめ達を映した。
「まあ、そこはクバルカ中佐の腕の見せ所じゃないですか?彼等だって素質的にはかなりなものがあるそうじゃないですか。問題のなのは、どういう方向で育てていくかですよ」
高梨の言葉にランはそのまま椅子の背もたれに華奢な体を預けた。
「鍛えがいが有るってことだな。まあそのほうがアタシとしては面白いけど」
大画面の中でかなめがアメリアにヘッドロックをかけている。隣のコックピットの中の映像では、誠が頭を下げながら二人をなだめていた。
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