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命が助かったと思ったのも束の間、やっぱり僕はここで死ぬ運命だったんだ。
話が通じる相手じゃないし、戦って勝てるわけがない。逃げられるスピードも体力もない。
何もしない――というより、何も出来ない。
僕はこれからあの鋭い爪で体を切り裂かれてしまうのだろうか? それとも牙で頭を噛み砕かれるのか? どっちにしても……痛いのは嫌だ……嫌だよ……。
「あ……あぁ……」
頭の中が真っ白になって、世界がグルグルと渦を巻いていく。視界が真っ黒になっていって全身から力が抜ける。呼吸が苦しい……。
あぁ……い……しき……が……。
◆
「……あれ?」
気が付くと僕は山道の真ん中で仰向けに倒れ込んでいた。上半身を起こして周囲を見回すと、そこにドラゴンの姿はない。
広がっているのは変わらぬ穏やかな大自然の風景と匂い。もっとも、太陽が少し西へ傾いているから、あの時から時間はかなり経過しているみたいだけど。
――それにしても、僕はドラゴンと遭遇したのに襲われることもなく助かったのか?
夢か幻かとも思ったけど、周囲の木々の折れた枝や巨大な足跡を見る限り、そうではなさそうだ。それなら僕が失神したのを死んだと勘違いしたとか?
…………。
理由は分からないけど、また命が助かっちゃった。僕は運がいいのか悪いのか……。
「とにかくもう少しだけ足掻いてみよう。まずはシアの城下町を目指して歩いていってみるか」
僕はこの山道での出来事を経験し、ちょっとだけポジティブになったような気がした。
先のことは分からないけど、なんとかなるかも。
だって絶体絶命の危機をなんだかんだでいくつも乗り越えちゃったんだから。
NORMAL END 1
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