第503話:犯人はオ……




「はいよ!辛口の熱燗ね!」

 作務衣みたいな服を着た人が二合徳利を持って来た。

 席には既に、ビールグラスと猪口ちょこと取り皿と箸が置いてある。

 所謂いわゆる宴会仕様だな。


 別に開会の挨拶など無いだろうと手酌で日本酒を注ぐと、目の前に猪口が差し出された。4つなのは、オーべ以外だからだ。

 皆に注いでいる間に、オーべのレモンスカッシュも届いた。

「乾杯」

 猪口なので軽く目線に持ち上げるだけにする。


 おぉ、五臓六腑に染み渡る。……気がする。

 やはり日本人は日本酒だな。

 ビールを飲んでる時には「とりあえず日本人ならビールだよな」と言うのはご愛嬌。


 瓶ビールは黒い星のが好きだ。

 生ビールはスーパーでドライなビールが有名なメーカーだな。

 缶ビールは1番に搾ったらしいのが好きだったりする。

 まぁ、これが掲示板や配信とかだと、個人の感想ですって入れなきゃいけないのだろう。



「新種の微炭酸な日本酒も有りますよ」

 お通しを持って来た店員が飲み物もメニューも持って来た。

「あら、じゃあ私はそれで」

「とりあえず生」

「この生搾り魔物檸檬サワーを」

 チャレンジャーだな、レイ。

「ウイスキーロックと炭酸を」

 ジルドが変な注文をしてる。それ、ハイボールで良いだろう?


「炭酸をチェイサー代わりにするんだよ」

 俺の視線に気付いたジルドが笑う。

「ヴィンが日本酒で酔っ払ってきた時に、レモンサワー頼むだろ?そんな感じだよ」

 あぁ、なるほど……?

 俺の場合は、柑橘のアルコール分解を期待しているだけなのだがな。



 お通しは、クラーケン(蛸)と大根の煮物だ。日本酒に合う!

 そしてクラーケンの唐揚げバジル風味に生姜醤油焼き。

 次に黄金豚の角煮。これは前もって食材を渡してたのか?

 俺が判ったのはここまで。

 後は何か美味いものが出てきた……としか。


 基本的に大皿に山盛り出て来て、それぞれが好きな物を取るスタイルだった。

 歌ってるスープとかあったが気にしたら負けだ。

 調理場からカウントダウンが聞こえてくるが、茄子か?焼き茄子か揚げ茄子か。


「これ美味いな。何の肉だろう?」

 違う席から聞こえたのは、おそらくシアラの声。

「そちらはポーンラビット歩兵兎のシチューですね」

 店員の説明が聞こえる。

 このテーブルにシチューは無い。

 これからくるのだろうか?




「え?タコ焼き屋さん達は、お店側からの招待だったの?」

 突然聞こえてきた声は、驚いた紫蘭だ。

「そうやで。きちんとクラン責任者クラマスには許可もらったって聞いとるで」

「【sechs(ゼクス)】から予約入ってるから、美味しい食材持って来てって言われたら~」

 タコ焼き屋さんとはれひめは、【sechs(ゼクス)】経由では無く、お店経由の来店だったよ。


 俺を含め、メンバーの視線がオーべクラマスへと向く。

「言われた……気がする~」

 テヘッと笑うオーべは、おそらく全然覚えて無いのだろう。

「そういうとこ、あるわよね」

 咲樹が苦笑している。



 お店の仕入れ業者で、【sechs(ゼクス)】と関係有ると言っている異界人プレイヤーに声を掛けたらしい店主。

 他にも何人か居たはずなのに、今日は来てないらしい。

 情報漏洩も、その自称【sechs(ゼクス)】関係者なのかもな。


 余談だが、はれひめは店経由ではなく、知人として招かれたかったらしい。

 今回は冒険メインだったから職種的に声を掛け無かったのだが、次回は誘ってやろう。



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