第37話 クイズ番組サードステージ


『第二問』


 ジャジャン!


 第一次世界大戦後、フランスがドイツに請求した賠償金額は何マルク?


「一三二〇億マルク!」

『またしても歩御高校歴史研究会チーム正解です』


 『アタシの実力を見た?』と言わんばかりの表情でカメラに向かって笑顔を振りまくアリス、最初の先制攻撃といい今日のアリスは冴えてるぞ、これでナデシコ達のすべり台の傾きは驚きの六〇度、他のチームが次々にすべり落ちる中なんとか持ちこたえいるけど時間の問題だろう。


『第三問』


 ジャジャン


 有名な牛若丸と弁慶の戦いですが、実際は五条大橋で戦わなかったと言われています。

 その理由を一つ答えてください。


「当時五条大橋はまだ無かったから」

『歩御高校生徒会チーム正解』


 くっ、俺より速い、さすがタケルさんだ。


 俺達のすべり台が一段階上がる。でもまだ生徒会チームのほうが傾いているし時間的にもそろそろ握力が無くなる頃だろう。


「マモリ、落ちるんじゃないわよ」

「ご安心をお嬢様、私はイテキのような粗忽者(そこつもの)ではございません、この程度の傾き――」


 その時、マモリの腰の木刀が傾斜のせいでスルリと抜け落ちた。


「私の木刀が!」


 飛び付いたマモリも一緒に落下、こうして生徒会チームは半分になった。


「おじょーさまぁー!」

「ハッハッハッー、これでもう私達の勝利は確定ね!」


 勝ち誇るアリス、いつものナデシコなら歯ぎしりをしながら反論の一つも返すところだ

 が冷静な表情を崩さず口を開いた。


「アリス、あのメインカメラ貴方を映してない?」

「マジで!」カメラの方を向くアリス。

「はいポーズ」


 ナデシコの言葉で反射的に手を頭と体に当ててポーズを取るアリスが俺の視界から消えた。


「ひきょうものー!」


 アリス、お前も結構馬鹿だよな……でもまだこっちには地上最強の生物イヨリが、


「イヨリ、頭の上に蛾(が)が止まってるわよ」

「うそ!? ってわあああああああああああ!」頭を触ろうと手を離し滑り落ちる。

「イヨリィイイイイイイイイイイ!!」


 なんという事だ、まさかこんな子供だましの技でうちの美少女二人組を倒すとは、この策士っぷりには山本管助(やまもとかんすけ)もびっくりだ。


『カメラさん! 今のちゃんと撮りましたか!? アップで撮りましたか!?』


 番組そっちのけでカメラマンに詰め寄るアサミさん、アンタ最高だよ。

 でもうちの主力がいなくなったのはキツイ、せめてアリスだけでもいれば、


「安心するんだぜヤマト、まだ本命のオレ様が残ってるんだぜ」


 俺一人で勝てるだろうか。


『第四問』


 ジャジャン


 新撰組の四番隊組長は?


「ペリーなんだぜ!」

『不正解です、では第五問』

 ジャジャン


 インダス文明が興(おこ)ったのは現在のどこ? 国名を答えよ。


「種子島なんだぜ!」

『不正解です』


 現在のヒデオのすべり台、一二五度、俺の目先でブラ下がりながらヒデオは語る。


「ひっかけ問題なんてさすがはクイズキングダムだぜ」


 さてと俺一人でどうやってクリアしようかなっと。


「にぎゃああああああああああああ」


 雑魚キャラみたいな声と共に誰かが落下、と同時にファンファーレが鳴る。


『おめでとうみんなー、一組目クリアは歩御高校生徒会チームと歴史研究会チームだよー、美少女率が高い君達が勝ち進んでお姉さんうれしいよー』


 そういえば正解チーム以外は全員一五度上がるって事は他の二チームはすでに七五度、ほぼロッククライム状態、逆に最後の一人よく持ったな。


「何あの落ち方」

「歩御高校馬鹿まるだしだね」

「勝ったのは運だねきっと」

「スパッツさえ……スパッツさえ履いていなければ……」


 ガリCがガリ三人にボコられる。

 ごめんみんな、今回はガリ達に賛同するよ。





『サードステージは今大会初種目』

『あたしが考えたコスプレレースだよー』

『何故こんなのが採用されたのか未だに謎です』


 果たして、その言葉はこのステージ案と案を出したアサミのどちらに向けられたのやら。


『ほらほらタクミ、そんな怖い顔しないしない』


 舌打ちをするタクミの肩を叩くアサミ、コスプレレース、なんだろう凄く素敵な予感がする。


 気を取り直し、同じグラウンドの別セットの前でタクミはマイクを取る。


『こちらもルールは単純、まずスタートラインから三〇メートル先に更衣室を用意しているので、途中にある箱から取ったクジの番号の更衣室に入り、中の衣装に着替えてください』


『衣装はあたしが選んだから美少女だけがんばってねグボ!』


 タクミのボディブロウがクリーンヒット、アサミはダウンした。


『こちらも全八チームが四チームずつ二組に分かれて、一六人が一斉にスタート、一着と二着の人が所属するチームがフォースステージ進出となります。

ちなみに二着、三着が一着の人と同じチームだった場合は三着、四着の人のチームが次なるフォースステージ進出です。

ただしこれはあくまでクイズ対決、更衣室の中の衣装箱は更衣室の中のクイズに正解しないと開かないようになっています。

なお、選手が入った更衣室内の問題から順次巨大スクリーンに映し出されるようになっております。

それではサードステージを始めます』


 今度は俺ら二組目か、まあ一組目には可愛い四つ子姉妹のテールチームが出るからせいぜい目の保養をさせてもらおう、サードステージへ移動する前に渡された紙の番号に目を通すとソレをポケットにしまい、俺はデジカメを取り出した。




 一組目のレースが終わって俺ら二組目の番になる。


 なんの因果かそれともテレビ局の陰謀なのかまたしてもナデシコ達生徒会と同じ組だ。


 イテキ先輩の乳揺れを拝むには誰よりも早くゴールしてゴール地点から鑑賞するしかないな、そうと決まれば、


 パァン!


 俺の体が爆発した。


 風に、光になり心臓が破裂しようが構わず俺は走り超高速の世界で俺は筋肉を燃え上がらせた。


『カメラさん! あの二人を! 歩御高校の白髪とアホ毛の子の乳揺れをアップで!』


 くそぉ! イヨリとイテキ先輩の乳揺れを見られるアサミが羨ましい! 俺だって、俺だって、俺だってぇえええええええええええええ!!


『凄い! 歴史研究会チームのヤマト選手、なんと横走りです、なのになぜかスピードが落ちてません!』


 見よ! これぞ二人の乳揺れをガン見しつつ走る究極秘奥義、客席から妹ヒメコの殺気がビシバシ伝わってくるが俺の最優先事項には代えられない!


「っておめーら速過ぎだろ!」


 高速で走る俺に並ぶイヨリとタケルさんは分かるがアリスとヒデオ、それにナデシコとマモリまで横一列に並んで、イテキ先輩がマッハで小さくなっていく。


 揃(そろ)いも揃(そろ)って体育会系共が! 


 少しは爆乳のイテキ先輩に歩幅を合わせる余裕を持て!


 走りながら通りしなにクジを引いて走る俺達はイテキ先輩を除いてほぼ同時に更衣室に飛び込んだ。


 用意された衣装箱の上にアニメのイラストがある。

 これと同じに着替えろという事だろうが甘いな、


「この俺にツインテール妹モノとは笑わせる!」

 

 コスプレ好きの戦国大名は次のうち誰?

 織田信長

 伊達政宗

 長曾我部元親

 徳川家康


 壁のタッチパネルから織田信長を選ぶと俺は瞬間脱衣能力で裸になり、お兄ちゃん大好きと書かれたイラスト同様赤いリボンで髪の両端を縛ってセーラー服に着替え外に飛び出した。(この間三秒)


 俺は猫耳メイド姿になったイヨリと同時に更衣室から駆けだすとそのまま二人一緒に仲良くゴールのワンツーフィニッシュ、あまりの速さに会場がどよめきアサミがイヨリの猫耳メイド姿に悲鳴を上げて喜んでいる。


 ふっ、年間二〇〇回以上もイヨリにコスプレをさせる俺とイヨリの実力をナメるなよ。


 え、瞬間脱衣能力? そんなのルパンダイブの練習で身に付いたに決まってるじゃないか、人生どんな思わぬチャンスがあるか分からないからな。

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