第6話 美少女生徒会
「先程から聞いていれば貴方達があのクイズキングダムに出場? まして優勝ですって?
少しは身の程を弁えて発言したらどうかしら?」
「まったくですねお嬢様、このような者達が出場など我が校の恥を晒すだけかと」
最初の声の主は綺麗な黒髪を腰まで伸ばした和風美人で切れ長の瞳は吸いこまれそうなほど美しく、一歩進むその動作にすら高い品格が感じられた。
彼女は生徒会の副会長で俺のクラスメイトでもあり俺のもう一人の幼馴染、名前は……
「お前誰?」
ヒデオの一言に全員の顔が引きつる。
副会長同様一言で静寂を作り出すなんて、バカと天才紙一重とはよく言ったものだ。
「あの人は大和(やまと)撫子(なでしこ)! あんたのクラスメイトでしょうが!!」
「ヒデオ君だって毎日見てるはずだよ」
「そーかー? でもオレとイヨリとヤマトは同じクラスだけどなんで隣のクラスのアリスが知ってるんだぜ?」
「そ、それは」
副会長は全校朝会の度に壇上に上がるし隣のクラスに副会長がいれば有名になるから当たり前なのだが、ヒデオはアリスの答えを待たずに、
「あっ、そういえばアリスって自分のクラスに友達いないから休み時間の度にうちのクラス来てるもんな、そりゃ知ってて当然だぜ、あっはっはっ」
「ヒデオォオオオオオオ!!!!」
気にしている事を指摘され、アリスは赤面しながらヒデオに襲い掛かるが、そこへ横薙ぎの一撃が振るわれてアリスは咄嗟のバックステップで回避、ヒデオは首をへし折られて床に倒れ伏した。
「貴様ら、お嬢様の前でいつまで戯れている気だ」
落ち着いた、それでいて鋭い声の持ち主はナデシコのすぐに隣につき従う眼鏡女子で、手の木刀とチョンマゲを思わせる長いポニーテールのせいで彼女を見た人は誰もが侍を思い浮かべてしまう。
名前は近衛(このえ)守理(まもり)、子供の頃からナデシコのボディガードを務める女の子で名家の生まれであるナデシコを本物のお嬢様たらしめている重要な存在である。
マモリも結構な美人でちょっと気の強そうな釣り目が魅力的だと思うがナデシコの隣に立っているとやや霞(かす)む、逆にナデシコは高校一年生にしてそれほどの美貌を持つわけなのだが、俺はどうも昔からナデシコが苦手だ、いや、マモリもだけどさ。
しかしイヨリ、ナデシコ、マモリと幼い頃からこれだけの美少女に囲まれながら一向にフラグが立たないなんて神様はシナリオを書き間違っているんじゃないだろうか?
「先程から見ていればお嬢様を無視し、くだらぬ寸劇を見せおって」
相変わらず時代劇のお侍さんみたいな話方だなぁ、マモリは肌も白くて綺麗だけどハーフのアリスほどじゃないしプロポーションも大人っぽいけどイヨリには劣るし、この喋り方直してマモリ一人だけを見ればかなりポイント高いのに残念だ。
「お嬢様が校長殿に書類を届けに来てみれば貴様の声がして、お嬢様と二人ドアに耳を当て出るタイミングを見図り、すると結局タイミングが分からないまま話がどんどん進み、それで慌てて登場を決意したお嬢様の苦労を少しはぶはぁっ!!」
隣に立つナデシコの肘鉄を喰らい倒れ伏すマモリ、うん、本当に残念な子だな……
「そんな事よりも千石大和、貴方の想い通りにはならないわよ」
「なんでだよ? 俺らが大会で優勝すればそれでOKだろ?」
「理由は単純、次のクイズキングダムでは私達生徒会が優勝するからよ」
『えっ!!!!?』
俺とイヨリ、それにアリスと校長の声が重なる。
人数が足りないのは両陣営とも床で悶える奴がいるからだ。
「次回のクイズキングダムには私達生徒会も出場するわ、そこで私達が優勝すれば貴方達の京都旅行は白紙、部への昇格もなくなるわ」
「まあ先生としましてはどちらが優勝してもこの学校の宣伝になるので構いませんよ」
「ちょっ、校長先生まで何言ってるですか急に!? 同好会を部にしようとする向上心に溢れる俺達よりこの人の努力を踏みにじる世界三大悪女にも負けない腹黒女を庇護(ひご)するんですか!?」
「へぇー、ヤマト、貴方私の事をそんなふうに思っていたの?」
なんという殺気! 反射的に三歩下がってしまった。
「別に先生はナデシコちゃん達を庇護するつもりはありませんよ。
ですが生徒の自主性を重んじ個性を伸ばすのが我が校の校訓である以上例え生徒が校長先生にギロチン刑を予告しようが目の前で男子生徒が女子生徒に木刀で殴打されようと認めなくてはならないのですよ」
いや、そのおかげで俺ら助かってるけどそれただの無法地帯ですよね?
自主性を重んじるの意味分かってます?
聖徳太子が十七条の憲法制定する前の日本だってそこまで無秩序じゃないですよ。
「だけどクイズキングダムってそもそも同じ学校から二チームも参加できんのかよ?」
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