家政科高校の男子が女番長に料理を教えます
鏡銀鉢
第1話 クラス唯一の男子
クラスに男子は俺一人。
これだけ聞くとなんというハーレムだと大半の男がうらやむだろう。
でも真剣に考えてみて欲しい。
女子が多い。
ではなく。
全員女子である。
気まずい。
居心地が悪い。
視線が痛い。
浮いてる。
俺、今超がつくほど浮いている。
いや、のっけから語った俺の現状は厳密には違うな、男子(・・)が俺一人というのはある意味間違っていない。
だが、女子じゃないのがもう一人。
「もう、ダーリンてば顔が暗いぞ♪ こんな時に性的ご奉仕でさりげなく彼氏を元気づけるのが内助の功だよね♪」
エロ展開のどこがさりげなくだバカ野郎、と罵りたいのは目の前のクラスメイト。
名前は白石(しらいし)泉美(いずみ)、腰まで伸びたウエーブヘアーに大きな瞳と弾ける笑顔。
クラスの女子よりも高めの身長にすらっとした細い手足は白くきめ細かい肌が窓から差し込む日の光を反射して雪のように輝く。
男のみならず女ですらこいつを見るとツバを飲み込む。
均整の取れたスレンダーなボディラインを持つ泉美はミスコンでも開こうものなら満場一致の優勝確実だが……
白石泉美 性別/♂
俺はこいつの存在について神様にクレームをつけたい。
一週間前、この叶(かな)恵(え)学園の入学式の朝にいきなり玄関で俺に抱き突いて、
「入学試験の時からずっと気になってたの、クラスも同じみたいだし、よろしくね♪」
なんて言ってきた。
流石の俺も言葉を失ったね、周りの目なんて気にしてる余裕も無くただどうすればいいんだって、そしたら上目づかいに、
「あたしじゃダメ?」
断言する。
あの目で言われたらホストでも落ちる。
確かに少々、というより極端に胸が薄過ぎる気はしたけれど、女の魅力はおっぱいだけじゃない。
これほどの美少女に告られれば彼女持ちだって泉美に跳び付くだろう。
ましてフリーの俺なんて瞬殺だ。
入学初日にテレビのアイドルより可愛い美少女ゲット。
これであの面倒な幼馴染ともオサラバだぜと世界を祝福した俺は、入学式が終わると地獄に落ちた。
担任の高砂(たかさご)花美(はなび)は言った。
「じゃあ出席を取るわよ、えーっと男子二名、新川(しんかわ)春人(はると)と白石泉美」
「ハーイ」
「はい」
小学校からの習慣で意志とは無関係に返事してから心臓が止まった。
明るいラブリーボイスで答える美少女(のはずの)泉美。
「続いて女子」
という言葉に続いて読み上げられる女子の名前。
俺は抱きつかれても胸の感触が無かったのを思い出しながら振り返り、背後に座る泉美の薄過ぎる胸を確認すると世界に呪いを振りまくサタンを全力で信仰した。
悪魔崇拝者(サタニスト)の出来上がりである。
泉美に抱きつかれて心臓が高鳴った。
そのあと泉美と食事したり、
泉美と映画に行ったり、
泉美と公園に行ったり、
まして泉美とキスをする妄想どころか、思春期故の、もっと過激な妄想をした黒歴史を消せるなら俺は親兄弟を生け贄にする事は当然、魔王だろうが邪神だろうが魂を売りとばす覚悟がある。
ついでにあの日の夜はあまりの恐怖と絶望で、普段は避けている姉と同じベッドで寝てしまい貞操の危機にさらされたのも黒歴史だ。
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●第6回カクヨムWebコンテスト 現代ファンタジー部門特別賞受賞作●
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