第22話 スパイの烙印
「ウッ、アッ……」
棒の先端が触れただけでもミエルの口から苦悶の声が漏れる。その様子を見ていた
「初めまして、
なるほど、ここでは
「は、初めまして……ハァ、ハァ、お兄さんのお名前も教えてくだ……さい」
尻の痛みに耐えながらミエルなりに精一杯の余裕を見せたつもりだったが、さすがにその声は弱々しかった。そんなミエルにもう一発お見舞いしようと身を乗り出す
「俺は
海斗は余裕の
「さて、俺たちも暇じゃないんでね、夜の夜中にこんな面倒なことはさっさと片付けたいんだよ。だから単刀直入に聞かせてもらう。お前は誰に頼まれてウチを探ってたんだ?」
「わ、私は……メ、メイドさんが好きで、そ、それで憧れてて、一度でいいからやってみたかったんです。ほ、ほんとにそれだけなんです」
「ダメダメそんなシナリオじゃ、詰めが甘いぜ。大体こっちはお前が発信機を持ってることだって知ってるんだ。なあ、年頃のJKがそんなもん持ってるわけねぇだろ、普通は」
そして海斗はミエルの全身をぐるりと舐めるように見ながらボディーチェックを始めた。まずはホコリだらけになっているエプロンドレスのリボンを解いてそれを脱がせる。そのポケットを探ると小さなカッターナイフが出て来た。
「ほら見ろ、おい、なんだこれは? こんなもん忍ばせやがって」
海斗はエプロンにはこれ以上何もないことを確認すると続いてメイド服を調べ始めた。しかしそこから何かが出てくることはなかった。それもそのはず、ミエルは自分も警戒されていることを悟ったあの日から発信機は電源を切って制服のバックルに収めたままにしていたのだった。ミエルはこれこそまさに不幸中の幸いだったと心の中で胸をなで下ろすのだった。
「なんだよ、これだけかよ。ほんとにもう何もないんだな?」
「ワカマツ、ちょっと手ぬるいよ。こうすれば早いね」
海斗のやり方に業を煮やして前に出た
殴られるたびに押し殺した声を上げるミエルを前にして
「ボディー殴ればみんな素直になるね。いろいろ垂れ流すから掃除が大変だけど、でもオマエはよく頑張るね」
「ハァ、ハァ……き、今日は晩ご飯がまだだから、は、吐くものがないんです」
ミエルの精一杯の強がりに
「
「アア――ッ、ハァ、ハァ……」
床に足が付いてはいるものの、それでもミエルは吊るされた腕を支点にして自重にまかせて揺れるばかりだった。
「さて、そろそろしゃべる気になったかな?」
「……」
「なあ、
「わ、私は何も知らない。でも、あんまり遅くなると、ママが、警察に……」
「プッ、アッハハハハ、おいおい、この期に及んで親頼みかよ。こりゃほんとにただのJKかも知れねぇな。よし、
海斗は美緒のすぐ隣まで下がると二人揃って傍観を決め込んだ。
さて、ここからは
「ワカマツ、さっきのをウチに寄こすね」
「これ以上は時間の無駄、だからもういい。その代わりオマエの
今、ミエルの足元にはメイド服の残骸がボロ切れのように転がっていた。
恥ずかしさのあまり目を閉じて顔を背けるミエルだったが、その姿を目にした
「アイヤー! オ、オマエ、それは」
「マジで、マジでピンチ!」
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