第36話 そこに待つ者
思わず一歩下がってカイが驚く巨神は六本足のワニのようなデザインをしていた。
尾を振り乱し、巨大な口を開けて突進してくる巨神の背中からはあまりに聞き慣れた声が聞こえる。
「誰か止めてぇええええええ!」
「リアッ!?」
カイは大きく跳躍して巨神の牙を避けて背中に飛び乗った。
「あっ、カイちゃん」
「大丈夫かリア? こいつはなんなんだ?」
「わかんないけどいきなり襲い掛かってきたんだよー、ボク一人じゃどうしようもできないし助けてよー」
一瞬、本当のことを言おうとしたが、リアは叱られると悟ってわざと立ち入り禁止の門を壊したことは伏せた。
カイとリアが背中に乗っても特に行動を起こさずただ走っているだけの様子を見る限りどうやら制御が利かず、未だ調整中、もしくは開発途中のシロモノなのだろう。
「任せろリア、このような奴はこうして」
先端のドリルを回転させ、カイは思い切りワニ型巨神の背中に突き立てた。
バチバチと火花を吹き上げながらドリル付きの槍は深く、どこまでも深くめり込み、巨神の内部パーツを破壊して行く。
そうやって何箇所にも穴を空けていくと、丁度五箇所目でカイのドリルは今までに無い手応えを感じ、同時に最初から暴走していた巨神がロデオの馬のように暴れながら一気に加速した。
部屋の扉を突き破り、廊下を暴れながら爆進する巨神、リアとカイはその背中にしがみつき、やがて、また別の巨大な門に突っ込み、それも突き破り中へと飛び込む。
そこは、巨大な空間だった……そして二人は落下した。
「「!?」」
下を見て分かったが、どうやらカイ達は数階分の高さを誇る巨大な部屋の上部の壁に取り付けられた門から入ってしまったらしい。
搬送用のリフトを飛び越えそのまま自由落下する巨神とリアとカイ、着地点には、三体の巨神とそれに対峙するロイとライナがいた。
「んっ?」
「おっ?」
門を突き破った時の破砕音に見上げたロイとライナは慌てて飛び退き、ワニ型巨神はそのまま騎士型、馬型、戦車型の巨神に直撃、重さ一〇〇トンを超える物体の落下エネルギーは凄まじく、三体の巨神は体をひしゃげて絡み合い、潰れたジェネレーターが爆発、その衝撃でついに四体の巨神全てが完全に機能を停止した。
空中で飛び降りたカイとリアがロイの後ろに着地し、大きく息を吐き出した。
「まったく、ヒドイ目に合っちゃったよ」
「やれやれだな」
「おー、二人とも無事だったんだな」
「二人にケガが無くて……まあカイちゃんは鎧が少し壊れているかな?」
「ええ、まあ色々ありまして、それより、二人も無事で何よりです」
安堵するカイにロイは胸を張って応える。
「ハッ、俺が負けるわけねえだろ? まあ楽勝だったな」
自慢げに言うロイの言葉にカイが周囲を見渡すと、辺りには七体もの巨神の残骸が散乱していた、これをライナと二人だけで倒したなら、それこそ驚嘆すべてき戦闘力である。
「それじゃあ、みんな合流したところで先を急ぐよ、目指すはこの要塞の動力炉だ!」
言って、元気良く歩き出すライナにロイ達はだまって従った。
部屋の奥の扉を空けるとそこは長い階段になっており、上にはさらに別の扉があった。
四人が階段を上り、扉を開けると、長い廊下の果てに、また巨大な門があった。
『エネルギー反応 エネルギー反応 正面 正面』
コートからひょっこりと顔を出し、録音したライナの声でチビ神兵が喋るとライナは笑みを浮かべる。
「どうやらあそこがそうらしいね、それじゃ、ラストステージへ行きますか」
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